著者
石田 武志 戸澤 幸大 藤原 修
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.8, pp.596-603, 2022-08-01

ESD試験器の火花を介した気中放電は放電電流が試験ごとに変動するため,IEC 61000-4-2では,気中モードでの校正波形を規定していない.Pommerenke氏らは,火花を介さない水銀接点リレーを用いた気中モードに対するステップ応答の測定法を提案し,これが気中モード試験器の校正法になりえることを示唆した.筆者らの先行研究では,接触・気中の両試験法とも結果の再現性を確保するには試験器の構造を反映するアドミタンスを規制すべきとの観点から,三機種の異なる気中モード試験器の理想スイッチを介したステップ応答を測定アドミタンスから導出し,試験器固有の属性をあきらかにした.本研究では,気中モード試験器に対する校正要件を根本から考察するために,IEC規格の基因となった人体気中放電に対する放電電流のステップ応答を,測定アドミタンスとIEC規格に基づく簡易等価回路からそれぞれ導出し,両者の計算波形とスペクトルを,三機種の現用ESD試験器の測定アドミタンスと簡易等価回路から求めたステップ応答のそれらと比較する.つぎに,人体気中放電と三機種の試験器の気中モードに対する放電電流の測定波形を,ステップ応答の計算波形と対比し,人体と試験器のIEC規格に基づく簡易等価回路から求めたステップ応答が校正要件を検討する際の草案の基礎になることを示す.