著者
古川 智樹 手塚 まゆ子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.126-141, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本稿では,大学・大学院進学を目的とする上級日本語学習者を対象に,日本語科目の文法教育においてTraditional Flip(2014年9月~1月:実践①)と実践①に練習問題等の課題を追加し,より学習者主体の授業に近づけた反転授業(2015年4月~7月:実践②)を行った実践結果を報告する。分析は,視聴(アクセス)ログ分析,学習成果分析,アンケート調査及び半構造化インタビュー調査の3つを行った。以上の調査及び分析を行った結果,視聴ログ分析,学習成果分析,いずれにおいても実践②において反転授業の効果が確認された。また,アンケート,インタビュー調査においても,学習者は講義動画を高く評価しており,それらによって文法の理解度が高まり,授業にも入りやすくなったという意見が多数を占め,本実践で行われた反転授業が有効に機能していたことがわかった。
著者
望月 通子 阪上 辰也 船城 道雄 田中 雄一郎 田中 舞 牛尾 佳子 手塚 まゆ子 萩野 里香 アックシュ ダリヤ 芦 媛媛 アン ジュンミン
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

(1) ICLEAJ(International Corpus of Learner Japanese「国際学習者日本語コーパス」)の構築・分析、(2)産出過程を分析対象に含めた認知的側面からの分析、(3)学習者コーパスに基づく作文技術教育のweb教材の開発について報告する。(1)はすでに構築してあった日本語作文コーパス「KCOLJ_NNS」「KCOLJ_NS」を大幅に拡充し「ICLEAJ」を構築、そのβ版をweb上で配布している。正式版を2013年8月に配布予定。モダリティ、「思う」、有対自他動詞、外来語などの研究に進展がみられた。(2)は、実験装置の事情で産出過程の記録採集は不可。 (3)教材開発の予備調査として作文の学習過程の質的研究・分析を行った。
著者
手塚 まゆ子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.179, pp.47-61, 2021-08-25 (Released:2023-08-26)
参考文献数
19

本稿は,日本語文法科目のグループワーク(以下,GW)において,学習者は話し合いをどのように進め,タスク達成にたどり着いているのかを,彼らの発話とふるまいの分析から考察したものである。今回対象とした反転授業クラスでは,従来のクラスよりも学習者主体で発話の機会が増えることはすでに指摘されているが,教室活動がどう学習成果に影響するのか,その相互行為の過程は明らかにされていない。そこで,特にGW 開始後に焦点を当て,学習者が話し合いをどう展開していくのか,どのようなやり方で,彼ら自身が直面する相互行為上の問題を解決していくのかを,会話分析の手法により分析した。その結果,解答を考える,ワークシートに書き込むといった個人的活動から,話し合うという共同的活動へどう移行するかが,GW を円滑に進めていくのに必要な要素だということが窺えた。この知見は,円滑なGW の指導の方法を検討する上で示唆を与えるものである。