著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.195-203, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
37

ロボトミーはどのようなプロセスを経て世界に広まったのか。ロボトミーには当初から批判的な意見が付き纏っていた。受け入れに当たっては国によって大きな温度差があった。ロボトミー伝播の過程で勃発した第2次世界大戦という人類史上最大の戦乱が,精神疾患治療の歴史にも大きな影を落とした。モニスやフリーマンの古典的ロボトミーの術式は,世界に拡散する過程で様々な「改良」が加えられ変容を遂げる。
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.205-213, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
17

ロボトミーはモニスのノーベル賞受賞で奇跡の治療として市民権を得る。しかし受賞からわずか3年後に,クロルプロマジンというロボトミーに対する最も強力なライバルが現れる。ロボトミーの負の側面,すなわち手術死亡率の高さや人格の変化などが問題点として顕在化しロボトミーに対する世間の風向きが変わる。ロボトミーに批判的な映画や様々な社会スキャンダルが登場し奇跡の治療が悪魔の手術に転落する。ロボトミーに対する社会の評価の変貌を読み解く。
著者
田中雄一郎 笹河良介 佐藤真平 吉瀬謙二
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.26, pp.1-6, 2013-03-06

近年では,ソフトプロセッサがFPGAを使用するシステムにおいて一般的なコンポーネントとなっており,制御やデータ処理などの幅広い機能を実現するために使用されている.小型デバイスにおいてハードウェア容量は限られており,多機能・高性能化においてその容量制限が障害となる.ゆえに,小さいソフトプロセッサの開発が重要である.このようなソフトプロセッサの既存研究に,Supersmall Soft Processorが存在する.本研究ではSupersmall Soft Processorを元に使用面積の削減,並びに性能向上を目指すUltrasmall Soft Processorを提案する.Supersmall Soft Processorに対し,主要データパスの2ビット化,状態遷移の最適化,マルチプレクサの入力ロジックを含む最適化を施す.その結果,Virtex-7においてハードウェア量の削減を達成し,1.88倍のIPCを実現した.また,Ultrasmall Soft Processorの応用としてメニーコア化を検討する.
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.9-14, 2023 (Released:2023-05-31)
参考文献数
27

日本のロボトミーの歴史を語る上で重要な人物を2人選ぶとすれば,中田瑞穂と広瀬貞雄が挙がる。脳外科医の中田は日本のロボトミーの先駆者で,広瀬は日本で最も多くのロボトミーを手掛けた精神科医である。中田は1939年に日本で初めての精神外科手術(ロベクトミー)に着手し,1941年にロボトミーを施行した。彼がどのような時代背景で精神外科を開始したのか,戦前の1900年代前半の精神疾患を取り巻く日本の状況を理解しておく必要がある。私宅監置,優生思想,身体療法などをキーワードに考察する。1920年代以降に新たな身体療法が欧州から導入された。1925年には睾丸有柄移植事件という奇想天外な手術が世間の耳目を集めた。日本ではエガス・モニス(Egas Moniz,ポルトガル)のノーベル賞受賞に対する社会的関心は薄く,朝日新聞は記事にせず読売新聞は受賞から5ヵ月経った1950年3月に初めて取り上げた。本稿では,ロボトミーに関連するエピソードを以下の年代に分けて俯瞰する。①1940年以前(太平洋戦争前),②1941~1945年(戦時中),③1946~1955年(戦後10年間)の3期におけるロボトミーおよびそれを取り巻く精神科医療,法制度,新聞に報じられた社会事象を中心に言及する。
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.97-109, 2022 (Released:2022-12-22)
参考文献数
19

ロボトミー誕生以前の脳科学や精神病の治療について概説する。精神病の治療には精神療法と身体療法がある。身体療法のなかには,電気治療,水治療,持続睡眠療法の他,様々な臓器切除があった。臓器切除の中には女性器切除や,精神病治療を目的とする男性の断種もあった。これまで十分な分析がない領域であったがNgramで光を当てる。1800年代後半,ロボトミーが行われる50年前に,精神病治療のために脳の部分切除を試みたスイスの精神科医がいた。それは世界初の精神外科手術ではあったものの,精神医学の発展に貢献することなく人々から忘れ去られた。1900年代前半には人為的にマラリアを感染させることで,ある種の精神病(進行麻痺)が治療可能となり精神医学発展に大きく寄与する。
著者
望月 通子 阪上 辰也 船城 道雄 田中 雄一郎 田中 舞 牛尾 佳子 手塚 まゆ子 萩野 里香 アックシュ ダリヤ 芦 媛媛 アン ジュンミン
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

(1) ICLEAJ(International Corpus of Learner Japanese「国際学習者日本語コーパス」)の構築・分析、(2)産出過程を分析対象に含めた認知的側面からの分析、(3)学習者コーパスに基づく作文技術教育のweb教材の開発について報告する。(1)はすでに構築してあった日本語作文コーパス「KCOLJ_NNS」「KCOLJ_NS」を大幅に拡充し「ICLEAJ」を構築、そのβ版をweb上で配布している。正式版を2013年8月に配布予定。モダリティ、「思う」、有対自他動詞、外来語などの研究に進展がみられた。(2)は、実験装置の事情で産出過程の記録採集は不可。 (3)教材開発の予備調査として作文の学習過程の質的研究・分析を行った。
著者
田中 雄一郎 高橋 篤司
雑誌
DAシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.221-226, 2014-08-21

本稿では,平面基板上の集積回路設計における配線問題と親和性の高いペンシルパズルである,ナンバーリンクの特性について考察し,その解法について述べる.ナンバーリンクは,縦横斜めの周囲 8 マスで隣り合う数字を一塊にして島とすることで,空洞内島配線問題として解くことが可能である.外部配線問題において,CHORD-LAST 法は全ネットが配線可能である時,平面性を失わないネットの配線順序を与える.提案アルゴリズムでは,この順序を利用してナンバーリンクの解を生成する.また,対となる数字が共に外側のマスに位置する時,その数字を結ぶ配線で配線領域を分割することが可能であり,他の数字の組は共に片側の領域に位置する.領域の分割を用いた枝刈りを組み合わせることにより,計算量を削減したアルゴリズムを提案する.
著者
高砂 浩史 小野 元 伊藤 英道 大塩 恒太郎 田中 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.313-318, 2016 (Released:2016-09-23)
参考文献数
20
被引用文献数
6

【目的】水頭症を伴う脳室内血腫に対する治療として脳室ドレナージ(EVD)が一般的であるが,神経内視鏡を用いた脳室内血腫除去術の有用性と安全性をEVD 単独治療との比較により検討する.【方法】2010 年から2014 年までの水頭症を伴う脳室内出血28 例中,EVD 単独治療の9 例と神経内視鏡下血腫除去とEVD を行った9 例を対象とした.年齢,GCS,脳室内血腫量,EVD 留置期間,離床でのリハビリテーションまでの期間,在院日数,シャント術の必要性,合併症,退院時予後について検討した.【結果】EVD 留置期間と離床でのリハビリテーション導入までの期間は神経内視鏡治療群で有意に短かった.内視鏡治療はより重症例に適用されていたが,退院時の転帰に有意差がなかった.【結論】内視鏡下脳室内血腫除去術はEVD 留置期間を短縮もしくは不要にし,本格的なリハビリの導入期間も早まる.そこで神経学的予後の改善が期待される.
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.15-22, 2023 (Released:2023-05-31)
参考文献数
17

本稿では戦後10~30年の期間のロボトミーとそれを取り巻く日本の社会状況について解説する。日本のロボトミーの歴史で最も激動の時代であった。脳生検問題,国際学会騒動,ロボトミー訴訟といった,苛烈な社会的圧力がロボトミーを襲った。1973年東京の国際学会騒動に巻き込まれた会長の佐野圭司および学会理事として出席していたスコヴィルに触れる。そしてスコヴィルの術式を更に進化させた広瀬貞雄の後半生の業績を記す。最後にロボトミーを封印した1975年の日本精神神経学会による精神外科否定決議に至る顛末を解説する。
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.93-96, 2022 (Released:2022-12-22)
参考文献数
17

筆者は脳腫瘍や脳動脈瘤の開頭手術を専門とする脳外科医であるが,かつて精神病を手術で治そうとした時代があったと知り驚いた。自身が1981年に脳外科医になった時本邦では,その手術すなわちロボトミーはすでに1975年に否定された治療法になっていた1-3)。実は日本は世界でも最も激しくロボトミーが糾弾され,精神科医主導で精神外科を否定する決議がなされた経緯がある。もちろん私も脳の一部を破壊して精神病を治療することに賛成しない。ただし脳手術を生業にしている者として,ロボトミーの歴史を正しく知り後進に伝えることは大切な責務と考える。国内外のロボトミーの歴史を知ろうと筆者はこれまでに様々な出版物やネット情報,そして新聞や映画に至るまで折に触れ検証してきた。本稿を書く動機は,ネット上にロボトミーに関する誤認や歪んだ情報が溢れていること,医学生向けの教科書ではロボトミーの用語が消去されて久しく,教育すべき項目から除外されていることに違和感を覚えたことにある。欧米ではロボトミーの歴史について多くの書籍4, 5)や論文6-15)が出版されてきた。しかし日本におけるロボトミーの医学史ならびに社会史を詳述した書籍は少なく,橳島16)の『精神を切る手術』(2012年)と立岩17)の『造反有理』(2013年)以外ほとんど出版されていない。とくに医学者なかでも外科医による著作は皆無であった。本シリーズ(ロボトミーの歴史1~10)は現代の脳外科医の視点でロボトミーの歴史を俯瞰する特徴がある。現在,ロボトミーは史上最悪の手術,悪魔の手術などと揶揄され常に否定的なイメージで語られ,精神科領域では語ることすらタブーという風潮が続いている。どのような時代的要請があって,ロボトミーが登場したのか,なぜ奇跡の手術としてノーベル賞の栄誉に浴したのか,どのような経緯でそれが悪魔の手術に転落したのか,それぞれの時代の大衆はロボトミーをどの様に捉えたのか,新聞や映画がロボトミーをどのように扱ったか,これまでにない視点で切り込む。
著者
高砂 浩史 梶 友紘 松森 隆史 小野 元 後藤 哲哉 田中 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-6, 2022 (Released:2022-03-15)
参考文献数
11

最近10年間に経験した虐待が疑われる小児頭部外傷18例を検討し当院での取り組みを報告する.被虐待児の年齢や外傷種別などの臨床像は過去の報告と同様であった.一方当院での虐待防止委員会の取り組みとして,病院職員全体への啓蒙活動を充実させ報告の敷居を下げることで取り扱い件数が増え,児童相談所通告には至らずも育児支援を要するネグレクト事案などがあぶり出されることが増えた.小児専門以外の脳神経外科医も虐待を念頭に置いた診療と虐待に伴う社会対応を熟知する必要がある.
著者
田中 雄一郎 大塩 恒太郎 伊藤 英道 佐瀬 泰玄 池田 哲也 川口 公悠樹 梶 友紘 久代 裕一郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-6, 2020 (Released:2020-03-27)
参考文献数
12

For many years, neck clipping of large internal carotid artery paraclinoid aneurysms has been challenging. However, recent technical developments in coil embolization and flow diverters have been associated with great advancements. Indeed, reducing surgical complications related to neck clipping in the era of interventional radiology is essential. The basic techniques include 1) preparation of the cervical carotid artery, 2) cannulation of the carotid artery, 3) craniotomy, 4) sectioning of the falciform ligament, 5) removal of the anterior clinoid process, 6) preparation of the ophthalmic artery, 7) temporary arterial occlusion, and 8) intraoperative angiography or indocyanine green videoangiography. Key points of the surgical techniques include appropriate preparation of the parent artery and selection of the aneurysm clips. Here, some technical details, including the removal of the anterior clinoid process, the separation of the distal dural ring and the transposition of the sphenoparietal sinus, are described to both avoid surgical complications and improve the visual outcome.
著者
和久井 大輔 長島 梧郎 植田 敏浩 高田 達郎 田中 雄一郎 橋本 卓雄
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.138-142, 2012-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1 4

頭蓋骨固定用チタンプレートにより術後頭皮断裂および美容上の問題が生じた3例を報告する.1例目は68歳男性,開頭術2年後に頭皮にチタンプレートが露出し,これを除去し,bioabsorbable polymerによる頭蓋形成術を施行した.2例目は74歳女性,開頭術11年後に手術部位感染でチタンメッシュによる頭蓋形成術を施行した.その後メッシュは表皮より透見され,美容上の問題がある.3例目は65歳女性,開頭術6年後に頭皮にチタンプレートが露出した.骨削除・プレート除去術を施行した.頭皮断裂の主原因はチタンによる頭皮への刺激の他,皮膚切開に伴う皮膚脆弱化や骨欠損部への頭皮陥凹と思われ,チタンプレートによる頭蓋形成で頭皮断裂の可能性がある症例には,bioabsorbable polymerの使用も考慮するべきと考えられた.
著者
中里 佳央 臼井 朗 西 圭介 日野 ひかり 田中 雄一郎 安田 尚登 後藤 孝介 イアン J. グラハム
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2015年大会
巻号頁・発行日
2015-05-01

Hydrogenetic ferromanganese crusts (hereafter called crusts) on the Pacific seamounts are formed by precipitation of iron?manganese oxides from ambient seawater on volcanic and biogenic substrate rocks. Crusts have been used as potential as record of the Neogene paleoceanographic and paleoclimatic conditions, because of their very slow and continuous growth rates 1 to 10 mm/m.y. . In the paper, the crust has been observed as compressed sediment cores which have incorporated part of the weathered product of the substrate, biogenic, volcanogenic, terrestrial particles such as eolian dust during its growth.In this study, a selective leaching experiment were applied on the ferromanganese crust from Federated States of Micronesia at water depth of 2262 m. The leaching procedures used by Koschinsky and Halbach (1995) was modified and optimized a part of sequential leaching experiments. Their work, known selective dissolution procedures were adapted to the treatment of ferromanganese crusts and combined into a leaching sequence that allows for the effective separation of the major mineral phases of crusts from associated metallic components. This study concentrates to observe residual fraction after leaching experiments. As a result, the polygenetic particles was extracted and clearly observed from the crust. These particles are of different origins such as volcanogenic, biogenic, terrestrial and extraterrestrial materials. In addition, we could observe various morphologies of fossil bacterial magnetites (magnetofossils) in residual fraction. These particles seem to reflect regional and local oceanographic environment. This extraction method will improve mineral and structural description the growth history of Hydrogenetic crusts.
著者
松木 俊二 菅原 英世 坂本 真佐哉 田中 雄一郎 楢原 久司 宮川 勇生 中野 重行
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.62-68, 1999

不妊症経過中に発症したうつ病2症例の睡眠障害に対して,腕時計型活動性モニタリング(ACTIWATCH^<[○!R]>)と睡眠チェックリスト,睡眠日記を併用して評価を行った.症例1は27歳主婦.2度の卵管妊娠(両側卵管摘出)の既往あり.2度目の退院後にパニック障害とうつ病を発症した.ACTIWATCH^<[○!R]>は睡眠薬離脱期に2週間装着した.症例2は35歳主婦.両側卵管閉塞による続発性不妊症(体外受精-胚移植による1児あり).ACTIWATCH^<[○!R]>は睡眠薬導入期に4週間装着した.睡眠-覚醒の客観的評価(ACTIWATCH^<[○!R]>)と主観的評価(チェックリスト,日記)は必ずしも符合しなかった.即ち,患者自身が眠っていると感じた時間帯にACTIWATCH^<[○!R]>で評価した身体活動量は増加し,患者自身が眠れないと感じた時間帯にその活動量は低下していた.睡眠障害患者の睡眠の評価には自覚症状のみでなくACTIWATCH^<[○!R]>や睡眠チェックリスト,睡眠日記を用いた客観的指標の有用な場合があることが示唆された.