著者
野村 馨
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1085-1090, 1998-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

褐色細胞腫は二次性高血圧をおこす代表的疾患であり,しばしば著しい血圧の変動を呈することで有名である.高血圧は腫瘍からのカテコールアミン過剰分泌が第一の原因である.しかし腫瘍から放出されたカテコールアミンは交感神経終末に取り込まれ,神経インパルスによりそこから放出される機序がある.これが血圧変動の一因となつている.さらに腫瘍からは機械的圧迫,薬物などの誘因によりカテコールアミンが放出され血圧の変動を来たす.またカテコールアミン過剰により受容体数が減少し感受性の低下がおき起立時の低血圧がおきやすい.高血圧クリーゼは致命的なこともあり,速やかな診断と治療が必要である. α1受容体遮断薬であるレギチーンの静脈投与が基本となる.高血圧発作/高血圧クリーゼの病態,診断および治療について紹介する.
著者
永尾 麻紀 佐中 眞由実 手納 信一 野村 馨 肥塚 直美 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 = Journal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-278, 2006-04-30
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は26歳,女性.8歳発症の1型糖尿病患者で妊娠5週に当センターを紹介され初診.HbA<sub>1</sub>c 7.7%でありコントロールのため入院.糖尿病合併症は認められず,血糖コントロール改善したため退院.妊娠11週頃からHbA<sub>1</sub>c 5%台にもかかわらず,口渇,1日4~5<i>l</i>の多飲および多尿が出現.ADH-アルギニンバソプレシン(以下,AVP)0.15 pg/m<i>l</i>と低値であったため,尿崩症の合併が疑われ,妊娠15週に精査のため入院.DDAVP(デスモプレシン)10 &mu;gの試験的投与にて中枢性尿崩症と診断.DDAVP開始後,自覚症状は改善し尿量も約2<i>l</i>/日に減少した.妊娠38週2日,自然分娩にて3,440 gの女児を出産.児は新生児低血糖を認めたが,他の合併症は認めなかった.授乳終了後に行った頭部MRIでは,下垂体後葉のhigh intensity areaの消失が認められた.妊娠中に尿崩症を発症した1型糖尿病合併妊婦の稀有な症例を試験したので報告する.
著者
三好 直美 中村 真一 菅野 仁 齋藤 登 齋藤 洋 野村 馨
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.408-412, 2013-12-25

症例は66歳男性、倦怠感、色素沈着、爪甲分離などを主訴に当院総合診療科を受診。消化管内視鏡検査により上部、下部消化管にポリポーシスを認め、Cronkhite-Canada症候群(CCS)と診断した。受診時、Hb 15.6 g/dl、血清鉄248 μg/dl、総鉄結合能274 μg/dlであり、トランスフェリン鉄飽和率は90.5 %と高値を呈した。一方貯蔵鉄量を示す血清フェリチンは34 ng/mlと正常下限であった。CCSでは通常、鉄の吸収障害により血清鉄量、貯蔵鉄量は共に低値となりやすく、これらの結果は予期しないものであった。詳細な問診により患者は長期間に恵命我神散を服用し、そのほか鉄含有の多い食品を多量摂取していることが判明した。恵命我神散の成分にはウコンが含まれており、ウコンの成分であるクルクミンには鉄のキレート作用があることが報告されている。鉄分の過剰摂取および恵命我神散服用中止を指示し、10ヵ月後には貯蔵鉄、フェリチンともに減少を認めた。その後、CCSに対し、グルココルチコイド内服による治療を開始した。グルココルチコイド投与は患者の鉄分欠乏および他の症状を改善した。
著者
小田桐 恵美 出村 博 出村 黎子 野村 馨 肥塚 直美 成瀬 光栄 鎮目 和夫 田中 芳雄 大内 広子
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.1573-1580, 1981
被引用文献数
3

妊娠により臨床症状の著明な悪化をみ,妊娠中絶により臨床症状の改善をみたCushing症候群の1例を経験した.さらに本例について妊娠に伴うCushing症候群の増悪因子についても,若干の検討を加えたので合わせて報告する.症例は満月様顔貌,全身倦怠感を主訴として来院した28才,主婦.昭和47年尿路結石.昭和49年重症妊娠中毒症にて第1子妊娠中絶.昭和51年第2回妊娠中に主訴が増悪したため入院精査.血漿cortisoi (以下F),尿中遊離Fは共に高く日内変動が無く, dexamethasone大量にても抑制の認められない腺腫型の反応を示した.本例の臨床経過は妊娠2カ月頃より徐々に増悪したと考えられ,妊娠中毒症状も高度のため妊娠5カ月にて中絶術施行.中絶後は血漿,尿中遊離F共に急速に下降し,変動していた血圧も140/100mmHg前後に安定.中絶後cushing症候群の妊娠による増悪因子について検討した.まずHCGは血中hormone動態に変化をきたさなかつたが, estrogenでは血圧の上昇,血漿,尿中遊離Fの軽度上昇が認められた.さらに娩出時の胎盤をPayne法にて抽出したところACTH活性が証明された.本例はACTH反応型腺腫であつたが, estrogenとACTHの同時投与による血漿および尿中遊離Fの相乗的増加は明らかではなかつた.以上より本例の妊娠によるCushlng症候群の増悪因子の一つはestrogenであり,その他胎盤性ACTHや妊娠時の種々のfactorが本例の臨床症状をmodifyしたものと推測された.