著者
藤 さやか 平井 美紗都 茂原 暁子 中井 貴世子 折田 頼尚
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.8, pp.1117-1126, 2016-08-20 (Released:2016-09-08)
参考文献数
17
被引用文献数
4

2006年から2013年までに鼻出血を主訴とし当科で加療した1,096件 (923人) を対象とした. 男性628件 (57.3%), 女性468件 (42.7%) で, 平均年齢は58.3歳 (1~98歳) であった. 出血部位はキーゼルバッハ567件 (51.7%), 出血なし288件 (26.3%), 出血点不明93件 (8.5%) と続いた. 初診時に行った止血法は, 電気焼灼47.1%, 経過観察24.0%, 局所止血剤20.6%で, 鼻中隔出血に対しては主に電気焼灼を行い, 鼻中隔以外の出血にはガーゼパッキングや局所止血剤が多く用いられていた. 1,096件中, 入院対応とした群は66件 (6.0%) であり, うち再出血あり群19件, なし群47件で, 帰宅対応とした1,030件 (94.0%) のうち, 再出血あり群116件, なし群914件であった. 入院群では, 出血点不明や鼻中隔以外からの出血が多く, 主にガーゼパッキングで止血し, 高血圧や心疾患既往, 抗血小板薬の内服歴, 前医での処置を受けた症例が有意に多かった. 名義ロジスティック回帰分析による初診時点での再出血リスク因子は, 出血点が上鼻道・中鼻道・不明な症例, 高血圧の既往, ガーゼパッキングが有意なリスク因子であった. 中でもガーゼパッキングを行わざるを得なかった症例は電気焼灼よりも約4倍再出血を来しやすく, 出血点を同定しピンポイントで止血処置を行うことが重要と考えられた.