著者
押野 康夫 筑井 啓介 橘 秀樹
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.205-214, 1994-03-01
被引用文献数
28

市街地における道路交通騒音の予測では、特に信号交差点付近における自動車の過渡的な走行状態によるパワーレベルの変化が重要である。そこで本報(その1)では、一般道路における自動車の走行パターンを考慮したパワーレベルの推定方法について検討した。まず、テストコースにおける走行実験によってエンジン・排気系騒音とタイヤ騒音のパワーレベルを個別に推定するための実験式を作成した。その結果、エンジン・排気系騒音はエンジン回転数とアクセル開度から、またタイヤ騒音は速度から推定できることが分かった。次に一般道路における走行実験によって、速度、エンジン回転数、アクセル開度などの変動パターンを調査し、それらのモデル化について検討した。その結果、信号交差点付近における加減速時の速度パターンは、いずれの車種の場合も3次の多項式によってモデル化できることが分かった。更にエンジン回転数やアクセル開度は、車両の運動方程式を考慮することによって、速度のパターンから推定できることが分かった。最後に、推定したエンジン・排気系騒音とタイヤ騒音のパワーレベルを合成することによって、発進加速時の発生騒音が高い精度で予測できることを示した。なお、本報における検討結果をもとにして、新たな道路交通騒音の予測モデルを作成したが、これについては続報(その2)で述べる予定である。
著者
橘 秀樹 押野 康夫 山本 貢平 桑原 雅夫 上野 佳奈子 坂本 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成10年に改正された「騒音に係る環境基準」では、環境騒音の状況に関して従来の点的把握から面的把握に変更され、評価指標としても騒音レベルの中央値(L50)から国際的に広く用いられている等価騒音レベル(LAeq)に変更された.また「環境影響評価法」でも大規模開発の際には環境の変化を正確に把握することが必須となった.このような背景の下に、本研究では、騒音のエネルギー的平均値を意味する等価騒音レベル(LAeq)によって環境騒音の状況を正確に把握あるいは予測し、その結果を客観的な形で表示する手法を確立することを目的として、以下の研究を行った。(1)道路交通騒音の予測・モニタリングに関する検討わが国における統一的な道路交通騒音予測モデルであるASJ RTN-Model 1998の内容をさらに充実するための基礎的研究として、大型車の影響や都市部における垂直方向の騒音分布に関する実測調査や、掘割・半地下道路からの騒音伝搬の計算手法の簡易化、きわめて複雑な特性を有する交差点周辺の騒音予測手法の開発などを行った。また、騒音対策として多用されている遮音壁の挿入損失の数値解析手法の検討や建物群による騒音低減効果などについても、検討を行った。(2)騒音伝搬特性の測定法に関する検討屋外では、騒音の伝搬に対して風などの気象条件による影響が大きく、またそれによって伝搬特性が時間的に変化する問題(時変性)が大きな問題となる。このような環境下において騒音の伝搬特性を精度よく測定する方法について、時間伸張(TSP)信号を用いる手法などについて、理論的・実験的検討を行った。(3)建設工事騒音の予測に関する検討最近では、各種の建設工事に伴って発生される騒音についても、環境アセスメントの対象となってきており、この種の騒音の予測手法を開発する必要がある。そこでそのための基礎的検討として、時間変動特性がきわめて多様である建設工事用機械類を対象とした騒音源データの測定・表示方法、LAeqを基本評価量とする騒音予測計算法の基本スキームについて検討を行った。