著者
数永 信徳
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策レビュー
巻号頁・発行日
vol.7, pp.E45-E64, 2013

英国特有のクロスメディア所有規制である「メディア企業の合併規制」は、「メディア企業の合併に関する公益性審査基準」に基づいて審査が行われる。しかしながら、当該審査基準において、その規制の対象となる「メディア企業」の範囲は必ずしも明確にはなっていない。そのため、当該審査基準の運用次第では、規制の射程範囲が大きく変わってくることになり、規制強化にも規制緩和にもなり得る可能性を秘めている。<br>これまで、メディア企業の合併に当該審査基準が適用された事件は、過去に三件ある。その中でも、2010 年11 月のBSkyB 買収事件では、買収を計画する企業側から「代替案(UIL)」が示され、英国政府との間で緊迫した協議が行われるなど、これまでに例のない議論の応酬があった。そこで、本稿では、BSkyB 買収事件におけるメディア企業の合併審査に当たって、英国政府がどのように判断し、審査を行っていったのか、その経過を把握していくこととする。
著者
数永 信徳
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策レビュー
巻号頁・発行日
vol.6, pp.E182-E199, 2013

英国におけるメディアの多様性の確保に関する検討は、2010年11月のBSkyB買収事件以降、これまで多くの議論が重ねられてきた。英国において、今後のメディアにおける意見の多様性の確保をどのように考えていくべきか、また、インターネットと連携・融合する新たなメディアの出現によるメディアの多様化にどのように対応していくべきか、そして、これらの議論の結論として、2012年11月22日に英国通信庁(Ofcom:Office of Communications)から英国文化・メディア・スポーツ省(DCMS:Department for Culture, Media and Sport)へ2012年定期報告「メディア所有規制の運用に関する報告書」が提出されたところである。<br>本稿は、このOfcomの2012年定期報告書について、英国のメディア所有規制に関する法令及び各種報告書を参照しながら、その具体的な内容を紹介するものである。
著者
数永 信徳
出版者
情報ネットワーク法学会
雑誌
情報ネットワーク・ローレビュー (ISSN:24350303)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.134-152, 2020-12-20 (Released:2020-12-25)

ブロードバンドの普及や映像配信技術の進展による人々の視聴習慣の変化に対応するため、インターネットを活用した放送コンテンツの同時配信に期待が寄せられている。その一方で、放送コンテンツの同時配信については、同一のコンテンツであっても、著作権法上の課題から、放送と同じコンテンツを視聴できないことがあるという指摘がある。そこで、本稿では、IPマルチキャスト放送に著作隣接権(送信可能化権)の制限が認められる著作権法の法的解釈と実務上の運用実態を再検証し、放送コンテンツの同時配信への、レコード製作者等の著作隣接権の制限の適用の可否について考察していくこととする。はじめに、著作権法と放送法で異なる「放送」の定義について概観し、次に、IPマルチキャスト放送の法的位置付けについて確認していく。その上で、メディアを巡る新たな技術の進展との関係における著作権法上の課題について、「時間」、「空間」、「内容」の要素に分けて、法制度と実務上の運用実態について分析を行っていく。
著者
数永 信徳
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.207-222, 2020-07-01 (Released:2020-08-27)
参考文献数
34

いつでも,どこでも,ネットに接続してコンテンツを視聴することが可能になり,人々の視聴習慣に変化が生じてきている。そのため,テレビやネット配信といったメディアを問わず,国民・利用者が多様で良質なコンテンツを視聴できる環境を確保することが,必要不可欠となっている。英国では,多様で良質なコンテンツを確保するために,主要放送事業者に対して,外部独立製作番組割当規制(クオータ制)を遵守することが義務づけられている。この外部独立製作番組も含め,BBCやITVなどの主要放送事業者は,2007年から先駆的に「同時配信」や「見逃し配信」等の動画配信OTTサービスを展開してきた。それゆえ,当然の帰結として,英国では,早い段階から外部独立製作番組のネット配信に向けた著作権等の利用と保護に関する法的枠組みが構築されてきた。そこで,本稿では,外部独立製作番組のネット配信に向けて,「どのメディアかではなく,いつの時点での利用か“when, not where”」という考え方を出発点として議論されてきた英国の先行事例を検証していくこととする。はじめに,クオータ制を構成する「量的目標」,「独立製作事業者の定義」,「著作権等の基本原則」の三要素を概観する。その上で,外部独立製作番組のネット配信に向けた共同規制による著作権等の利用と保護に関する「合意形成」の過程を考察していく。