著者
文屋 俊子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.443-460,502, 1987-03-31
被引用文献数
1

地域を単位とする近隣関係については、先行研究が乏しく、ある程度探索的なものとならざるを得ない。本稿で取扱った大都市周辺地域は、都市の膨張過程において都市人口の流入をうけ、都市化が進行した地域である.こうした地域では、地付住民と来住民との混住が地域社会レベルでのさまざまの問題を起こしていることが多く、近隣関係を取扱う上で地付-来住間の関係に注目しないわけにはいかない。このため地域社会の統合、いいかえれば地付住民と来住民の融和が問題とされるのであり、どういった場合に統合促進され、また阻害されるのか、これをふたつの集団の人口流入による規模の変化との関係でとらえようとするのがここでの目的である。<BR>調査は、東京五〇キロ圏に位置する千葉県市原市の一町会の範域において実施した。まず、この地域における社会過程としての都市化の特徴をとらえるために、旧村の部落会を中心とする相互扶助システムの変貌過程についてコミュニティ史的観点からの事例研究をおこなった。近隣関係の標準化調査は、調査規模の関係で、この町会の中心部を占める二町内の一二四世帯を対象におこなった。<BR>本論にはいるまえに、都市化をめぐる概念について検討する。