著者
文野 洋
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.71-81, 2007

This study investigated narrative styles and narrative relationships that were interactionally accomplished by a researcher and participants by conducting participant observation and interviews with 10 participants in an ecotour which contributes to the sustainability of a local community and its environment. Results indicated that two interviewer-interviewee relationships, "inquirer-respondent" and "tour-participants," different from each other in terms of their narrative styles and the visualization of co-membership, were accomplished during the interviews. They correspond to the two general concepts of narrative relationships: dialogic and coexistent (Yamada, 2004), respectively. This study also revealed that there was another important relationship, the "narrating-hearing experience," which is intermediate between the other two relationships. These findings imply the possibility that participatory research to examine the joint narrative of ecotours contributes to the practice of environmental education.
著者
文野 洋
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.498-509, 2008-12

本研究では,小笠原村父島で行われたエコツアーの参与観察を行い,ツアー参加者へのインタビューにおける語りを社会文化的アプローチによって検討することにより,環境の学びのプロセスの特徴を明らかにした。持続可能性のための教育の視点からエコツアーにおける環境の学びの4つの側面を導き,これらがいかに語られるかを,ツアー経験の参照,他者の言及に焦点づけて分析した。その結果,1)エコツアーにおける環境の学びのきっかけとなるツアー経験の内容は一様ではなく,各参加者はさまざまな活動において学びを触発されていること,2)自分自身の生活環境を含む地域環境の持続可能性に関する語りは,交流を通じて見通すことが可能になった,エコツアーの活動に従事する人びとの小笠原の地域環境に対する認識や保護に取り組む姿勢を媒介としてなされることが示された。この結果から,エコツアーにおける環境の学びは,単線的なプロセスモデルでは適切にとらえられないこと,各参加者の学びのプロセスを把握する上で社会文化的アプローチが有効であることを論じ,最後に本研究の知見がエコツアーのプログラム編成に与える示唆について考察した。