著者
宇佐美 慧 名越 斉子 肥田野 直 菊池 けい子 服部 由起子 松田 祥子 斉藤 佐和子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.278-294, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
27

発達障害・知的障害のある子どもたちに対して適切な支援を行う上で, 社会適応上必要なスキルを安定的かつ多面的に測定する検査の開発が求められている。そこで, 本研究では, 社会適応スキル検査の作成を試みた。まず予備調査では, 項目内容や採点法の適否等に関する検討を行い, また定型発達群(N=959)の標本をもとに各項目の困難度, 内的整合性の検討を行った。その結果を踏まえて, 本調査では, 特別な教育的ニーズのある群(N=560)と定型発達群(N=2,027)の標本をもとに, 各項目の内的整合性の再評価や因子分析モデルに基づく妥当性検証を行った。その結果, 検査の下位スキルとして設定した「言語スキル」, 「日常生活スキル」, 「社会生活スキル」, 「対人関係スキル」において実用上十分な内的整合性が認められ, また一因子性の観点から下位項目の因子的妥当性も確認された。また, 実用上の観点から, パーセンタイルに基づく社会適応スキル指数の算出や, 水平線表示を利用した個人内評価の方法についても検討を行った。最後に, 本検査を適用したADHDの子どもの一事例を通して本検査の臨床的有用性を考察した。
著者
斉藤 佐和子
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 2002-04-25 (Released:2009-11-18)
参考文献数
32

ダウン症は特異な言語障害をもつとされ,言語のさまざまな側面の研究が積み重ねられてきた.しかしいまだ不明の点も多く,研究途上である.ここ10数年の国内外の研究を概観し,まとめた.その結果,以下の知見が得られた.(1)言語獲得以前のコミュニケーション能力については,反応の弱さがあるものの,さまざまなタイプのコミュニケーションを行っており,逸脱や大幅な遅れはなかった.(2)構音の誤りは,浮動性が目立ち,口腔器官の器質的障害や舌運動の拙劣さ,筋緊張の低下など運動能力のみでは説明ができず,なんらかの中枢性の障害が予想された.(3)言語表出は,精神年齢に比し発達が遅れた.しかも語彙と構文で異なった発達を示し,語彙の発達が先行した.健常児の発達過程との比較,他の発達障害児との比較では,研究により異なった結果を示した.(4)言語発達の個人差が目立ち,理解,表出の発達のバランスを考えてもさまざまなサブグループが存在する可能性が考えられた.(5)サイン指導が言語理解・表出を発達させるために効果的であることが立証された.しかし日本におけるダウン症児者の言語理解,表出発達に関しての研究はいまだ少なく,これからの課題である.
著者
斉藤 佐和子
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.48-56, 1988-10-01 (Released:2009-11-18)
参考文献数
15

正常児7名を生後8ヵ月から15ヵ月まで縦断的に追跡し,言語表出の発達とUzgiris-Hunt精神発達順序尺度の発達との関係をみた.その結果,単純な表象,身近な事物の概念化,不充分な音声模倣の能力が備わると同時に始語が出現した.また,表出語数が20語を過ぎるあたりから表示機能をもつ語の比率が大幅に増加した.表出の発達の良い被験児ではUzgiris-Hunt精神発達順序尺度の下位尺度のうち,物の永続性と音声模倣の発達が良好であった.
著者
白澤 麻弓 斉藤 佐和
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.197-209, 2001-03

手話通訳に関する研究の多くは、通訳の結果、つまり手話の特徴や受け手の反応を研究対象としてきた。本研究では、手話通訳の過程に焦点をあて、音声同時通訳における研究と対比しながら、手話通訳中に行われている作業について文献的に考察した。この結果、手話通訳においても、言い換えや付加などの作業や、日本語から手話へ翻訳する際の処理単位の違いといった音声同時通訳に類似した特徴が指摘され、同様の手法を用いて研究ができることが推察された。しかしながら、日本語対応手話の存在や空間モダリティーの活用といった手話独自の特徴については未だ十分な研究が行われておらず、こうした特徴を視野に入れた研究の必要性が示唆された。