著者
葛西 豊高 川辺 晃一 村松 誠司 宮原 庸介 福田 裕昭 江藤 宏幸 中原 守康 今井 崇紀 田中 健丈 新井 基展
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.1554-1560, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
16

64歳,男性.食欲不振・下痢により,9カ月間で23kgの体重減少を認めた.高血圧症に対して,オルメサルタン内服歴が10年間あった.上下部内視鏡検査では原因となる疾患を認めず,小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮を認めた.十二指腸粘膜生検ではアミロイド沈着,異型リンパ球は認めず,便培養・便虫卵検査が陰性であることから,セリアック病を疑った.オルメサルタン内服中であることから,セリアック病と同様の臨床像を呈するオルメサルタン関連スプルー様腸疾患を疑い,オルメサルタンを中止とした.その後,食欲不振・下痢・体重減少は改善し,4カ月後の小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮の改善を認めた.慢性下痢の原因として,オルメサルタン内服中の場合には,オルメサルタン関連スプルー様腸疾患を念頭におくべきである.小腸カプセル内視鏡検査は小腸絨毛の萎縮評価に有用であった.
著者
仲村 佳彦 中野 実 町田 浩志 鈴木 裕之 蓮池 俊和 畠山 淳司 村松 英之 新井 基展
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.379-383, 2012-07-01 (Released:2013-01-16)
参考文献数
17

症例は32歳,男性。水酸化カリウム水溶液の水槽に転落し,当院に搬入となった。肉眼的観察法ではII度熱傷と診断し,熱傷面積は約85%であった。流水洗浄を約2時間15分行い,保存的加療の方針とし集中治療管理を行った。第7病日に敗血症性ショック,acute respiratory distress syndrome(ARDS)を認めた。抗菌薬投与にて一旦は全身状態改善傾向であったが,ARDSが進行し,第14病日に死亡退院となった。剖検を行い,肺の病理にてdiffuse alveolar damageを認め,ARDSと矛盾しない所見であった。ARDSの原因は熱傷および感染症が考えられた。皮膚病理では一部III度熱傷を認め,肉眼的観察法による評価よりも深達度は深く,初診時または保存的加療継続中に深達度評価を誤っていた可能性が考えられた。外科的治療のタイミングを逃していたため,他の深達度評価法も検討すべきであった。