著者
仲村 佳彦 中野 実 町田 浩志 鈴木 裕之 蓮池 俊和 畠山 淳司 村松 英之 新井 基展
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.379-383, 2012-07-01 (Released:2013-01-16)
参考文献数
17

症例は32歳,男性。水酸化カリウム水溶液の水槽に転落し,当院に搬入となった。肉眼的観察法ではII度熱傷と診断し,熱傷面積は約85%であった。流水洗浄を約2時間15分行い,保存的加療の方針とし集中治療管理を行った。第7病日に敗血症性ショック,acute respiratory distress syndrome(ARDS)を認めた。抗菌薬投与にて一旦は全身状態改善傾向であったが,ARDSが進行し,第14病日に死亡退院となった。剖検を行い,肺の病理にてdiffuse alveolar damageを認め,ARDSと矛盾しない所見であった。ARDSの原因は熱傷および感染症が考えられた。皮膚病理では一部III度熱傷を認め,肉眼的観察法による評価よりも深達度は深く,初診時または保存的加療継続中に深達度評価を誤っていた可能性が考えられた。外科的治療のタイミングを逃していたため,他の深達度評価法も検討すべきであった。
著者
鈴木 裕之 中野 実 蓮池 俊和 仲村 佳彦 畠山 淳司 庭前 野菊 清水 尚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.297-302, 2011-06-15 (Released:2011-08-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

症例は70歳の女性。自宅で呼吸苦を自覚し自ら119番通報をした。救急車内収容時に無脈性電気活動(pulseless electrical activity; PEA)となり,救急隊員による約1分間の心肺蘇生術で心拍再開し当院へ搬送された。当院到着時に再びPEAとなり,アドレナリン1mgを投与し,気管挿管,当院スタッフによる約8分間の心肺蘇生術で心拍は再開した。心エコーで著明な右心負荷所見,胸部造影CTで左右の肺動脈に血栓を認め,肺塞栓と診断した。へパリン3,000単位静注後,肺動脈造影を施行したところ,肺動脈主幹部の血栓は既に溶解しており,造影欠損像を末梢に認めるのみであった。循環動態,呼吸状態ともに安定したため,抗凝固療法のみ行う方針でICUに入室させた。しかし,ICU入室4時間後から徐々に血圧が下がり始め,入室6時間後にはショック状態となった。心エコーで右心負荷所見は改善傾向にあり,肺塞栓による閉塞性ショックは否定的だった。腹部エコーで大量の腹水を認め,腹部造影CTでは血性腹水と肝裂傷を認め,胸骨圧迫による肝損傷から出血性ショックに至ったと診断した。硫酸プロタミンでへパリンを拮抗し,大量輸血で循環を安定させ塞栓術による止血を試みた。しかし,肝動脈と門脈からの血管外漏出は認められず,塞栓術による止血は不可能であった。静脈性出血の自然止血を期待し腹腔内圧をモニターしながら,腹部コンパートメント症候群に注意しつつ経過観察した。第2病日循環動態は安定し,第9病日抗凝固療法を再開した。第10病日人工呼吸器離脱し,第40病日独歩退院した。心肺蘇生術後の患者では,蘇生術に伴う合併症の発生を常に念頭に置きながら,原疾患の治療にあたることが重要である。
著者
関根 康正 野村 雅一 松本 博之 小田 亮 松田 素二 小馬 徹 野村 雅一 小田 亮 松田 素二 小馬 徹 KLEINSCHMIDT Harald 松本 博之 棚橋 訓 鈴木 裕之 GILL Thomas P. 加藤 政洋 島村 一平 玉置 育子 近森 高明
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

ストリートの人類学は、流動性を加速させるネオリベラリズムとトランスナショナリズムが進行する再帰的近代化の現代社会に資する人類学の対象と方法を探求したものである。現代の「管理社会」下ではホーム・イデオロギーを逸脱したストリート現象の場所は二重の隠蔽の下にあるので、画定しにくいがゆえにまずは正確な対象画定が重要になる。系譜学的にそれを掘り起こしたうえで、そのストリート現象についてシステム全体を勘案した体系的なエスノグラフィを書くことを試みた。この<周辺>を<境界>に読み替えるというネオリベラリズムを適切に脱却する人類学的な新地平を開拓した。
著者
和崎 春日 上田 冨士子 坂井 信三 田中 重好 松田 素二 阿久津 昌三 三島 禎子 鈴木 裕之 若林 チヒロ 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 望月 克哉
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

「グローバル化時代における中下層アフリカ人の地球的移動と協力ネットワーク」現代社会において、グローバライゼーションを生きるのは、北側社会や特別なアフリカ人富裕層だけではなく、「普通の」アフリカ人たちが、親族ネットワーク等を駆使して、地球を広く縦横に生き抜いている姿が、本共同研究から析出された。その事実を基礎にした外交上の政策立案が必用になってくることを、本共同研究は明らかにした。
著者
鈴木 裕之
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.37-62, 2016 (Released:2018-10-05)

本稿の目的は、内裏の夜間警備(夜行・宿直)の分析から、摂関期における左右近衛府の機能を検討することである。律令制以来、衛府は内裏警備を主たる職掌とした。夜間の警備も同じく規定されていた。延喜式段階でも、その職掌は継承された。本稿の問題意識は、このような内裏の夜間警備が摂関期(一一世紀)に機能していたか、あるいは貴族に認識されていたかという点にある。従来の研究で否定的に理解されてきた摂関期の左右近衛府の治安維持機能について、内裏夜行・宿直の観点から再検討した。 まず、延喜式の夜行・宿衛規定の分析を起点とした。夜行に関する諸規定から、六衛府すべてが内裏・大内裏の夜行に関与していることを指摘した。内裏夜行の検討が、摂関期の左右近衛府の性格を知るうえで有効であると判断した。また、宿衛は考第・昇進の条件として考えられていた。内裏夜行・宿衛の実態史料の分析から、その日常性が確認できた。 次に、一一世紀の左右近衛府の内裏夜行・宿直を考えるため、行事書・儀式書から次第を確認し、古記録から実態を検討した。その結果、摂関期における左右近衛府の内裏夜行・宿直の日常性が明らかとなり、貴族が治安維持組織たる左右近衛府を認識していたことを指摘した。 最後に、内裏夜行・宿直の有効性を補足する論点として、内裏火災における左右近衛府の活動に着目した。摂関期の内裏火災において、消火活動と予防組織としての左右近衛府の姿がみられた。消火・予防という活動の背景には、内裏夜行・宿直の有効性とそれに付随する貴族認識があると考えた。 従来の研究で否定的に理解されてきた左右近衛府の治安維持機能を、内裏の夜間警備を通じてみることで、肯定的に捉えようとしたのが本稿である。儀式関与・芸能・摂関家への奉仕など、様々な存在形態が認められる左右近衛府であるが、本来的な治安維持組織としての姿もその一つとして認めるべきであると結論づけた。
著者
鈴木 裕之
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.198-201, 2017-12-15 (Released:2018-03-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
岡田 浩司 薄井 健介 大内 竜介 金野 太亮 鈴木 裕之 西川 陽介 紫桃 裕造 布施 克浩 齋藤 裕子 星野 淳 渡辺 善照
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.739-746, 2020-12-10 (Released:2021-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

The COVID-19 pandemic has significantly affected every aspect of social life. Even in the education field, flexible measures were required beyond conventional wisdom. We provided remote practical hospital pharmacy training (remote training) using online systems such as Zoom and Moodle. We conducted a questionnaire survey with 38 subjects and 34 respondents, who were students that underwent remote training. The students self-evaluated their achievement level regarding specific behavioral objectives (SBOs), from the 2013 revised edition of pharmaceutical clinical practice related to hospital pharmacy practical training, in four stages. In addition, we analyzed the words used in the free comments using a text mining method for their characteristics. The SBO classifications exceeding the overall average were “clinical attitude”, "acknowledgement of patient information”, “prescription and question inquiry”, and so forth. The SBO classifications falling below the overall average were “team medical care at medical institutions”, “preparation of drugs based on prescription”, “safety management”, and so forth. The analysis of the positive aspects of remote training suggest that it was useful in sharing information about Subjective, Objective, Assessment, Plan (SOAP) records in case analysis, and evaluating the effects and side effects of drug treatment. Conversely, the analysis of the required improvements in remote training showed concerns regarding the considerable amount of homework and issues within the communication environment. We consider that remote training has a certain educational effect and can be expected to complement clinical training.
著者
高橋 淳根 田中 清明 鈴木 裕之
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.611-615, 2009-06

1次発酵乾燥粉末30〜40%に対して副資材は木質破砕物を60〜70%混合し、DB菌を添加した2次発酵肥料の品質を調査したところ、下記のような結果を得た。(1)魚臭ほとんどなくなり、低水分で清潔感が増し使用しやすい。(2)適度の肥料分と微量要素がバランスよく含有している。(3)肥料中にDB菌1g中10(4)個が含有し、ほ場へ移植されるため、根張り、作物生育促進、病虫害防除および連作障害を予防する。(4)DB菌・土壌改善により地力が高まり、作物の品質向上および収穫量が増加する。(5)作物の長期保存による品質低下を防ぐ。(6)人畜無害である。
著者
鈴木 裕之 Presicce Giorgio A. Yang Xiangzhong
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.49-62, 1998-04-01
参考文献数
62
被引用文献数
4 4

体内ならびに体外成熟中のウシ卵丘細胞-卵母細胞複合体の表面微細構造を走査型電子顕微鏡により比較した.また,卵母細胞の直径の変化についても検討した.体内成熟卵は過剰排卵処理した雌ウシからhCG投与後0,12,24時間後に,超音波ガイド法により2 mm以上のすべての卵胞から回収した(それぞれ85,38,39個).体外成熟卵は屠場卵巣から回収された卵母細胞を0,12,24時間体外培養して得た(それぞれ188,138,228個).未成熟卵は緊密に配列した顆粒層細胞に囲まれていた.体外培養24時間後に,体内成熟卵に比べ(44%),より多くの体外成熟卵(100%)が顆粒層細胞の膨化を示した.しかし,体内成熟卵の顆粒層細胞の膨化の程度は体外成熟卵のそれに比べ顕著であった.透明帯は成熟のステージや成熟方法に関わらず繊維性のメッシュ構造を示した.未成熟卵の細胞膜には,大型の舌状突起の分布が見られ,これらは成熟に伴い徐々に微絨毛の分布パターンに変化した.成熟12時間後では,体内成熟卵に比べ(11%),より多くの体外成熟卵(100%)の細胞表面が舌状突起の分布パターンから微絨毛の分布パターンへ変化していた(p<0.05).卵母細胞の直径は成熟培養中に徐々に減少した.すなわち,0,12ならびに24時間後で,それぞれ127±1,122±1,116±1 <i>&mu;</i>mであった.一方,体内成熟卵ではそれぞれ121±2,129±2,101±1 <i>&mu;</i>mであった.以上の結果から,hCG投与後の体内卵子成熟は体外培養による体外成熟に比べ緩やかに進行する傾向がうかがわれた.しかし,成熟開始24時間後では,体外成熟卵に比べ体内成熟卵において,より顕著で完全な顆粒層細胞の膨化と卵母細胞の直径の劇的な変化が観察された.<br>
著者
田島 英朗 鈴木 裕之 小尾 高史 山口 雅浩 大山 永昭
雑誌
第47回プログラミング・シンポジウム予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.181-184, 2006-01-10

従来の指紋を用いたファイル保護システムでは、認証によってファイル本体、もしくはファイルを暗号化する鍵へのアクセス制御を行っていた。しかしこの方法では、認証のための指紋情報がローカルに保存されるため、別のPCへファイルを移動して使用する場合などでは安全性を保つことが困難であった。一方我々の提案するシステムでは、指紋を暗号の鍵として用いた暗号化、復号化を行うことにより、認証情報をローカルに残さずにファイルを保護することが可能となった。
著者
鈴木 裕之
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.37-62, 2016

本稿の目的は、内裏の夜間警備(夜行・宿直)の分析から、摂関期における左右近衛府の機能を検討することである。律令制以来、衛府は内裏警備を主たる職掌とした。夜間の警備も同じく規定されていた。延喜式段階でも、その職掌は継承された。本稿の問題意識は、このような内裏の夜間警備が摂関期(一一世紀)に機能していたか、あるいは貴族に認識されていたかという点にある。従来の研究で否定的に理解されてきた摂関期の左右近衛府の治安維持機能について、内裏夜行・宿直の観点から再検討した。<br>まず、延喜式の夜行・宿衛規定の分析を起点とした。夜行に関する諸規定から、六衛府すべてが内裏・大内裏の夜行に関与していることを指摘した。内裏夜行の検討が、摂関期の左右近衛府の性格を知るうえで有効であると判断した。また、宿衛は考第・昇進の条件として考えられていた。内裏夜行・宿衛の実態史料の分析から、その日常性が確認できた。<br>次に、一一世紀の左右近衛府の内裏夜行・宿直を考えるため、行事書・儀式書から次第を確認し、古記録から実態を検討した。その結果、摂関期における左右近衛府の内裏夜行・宿直の日常性が明らかとなり、貴族が治安維持組織たる左右近衛府を認識していたことを指摘した。<br>最後に、内裏夜行・宿直の有効性を補足する論点として、内裏火災における左右近衛府の活動に着目した。摂関期の内裏火災において、消火活動と予防組織としての左右近衛府の姿がみられた。消火・予防という活動の背景には、内裏夜行・宿直の有効性とそれに付随する貴族認識があると考えた。<br>従来の研究で否定的に理解されてきた左右近衛府の治安維持機能を、内裏の夜間警備を通じてみることで、肯定的に捉えようとしたのが本稿である。儀式関与・芸能・摂関家への奉仕など、様々な存在形態が認められる左右近衛府であるが、本来的な治安維持組織としての姿もその一つとして認めるべきであると結論づけた。
著者
鈴木 裕之 中村 達也 宮浦 誠治 猪岡 京子 八木 朋美 我妻 恭行 鈴木 常義 髙村 千津子 鈴木 幹子 村井 ユリ子 中村 仁
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.503-509, 2018-10-10 (Released:2019-10-10)
参考文献数
17

Panvitan® powder for prescription (PP) administrated in combination with pemetrexed sodium hydrate (PEM) for the purposes of folic acid supplementation is significantly degraded by exposure to humidity or light. Hence, we investigated the influence of humidity and light on the color of the powder and concentration of folic acid in PP. We prepared samples by placing 1 g of PP into separate bags and stored them for 28 d under normal delivery conditions, intermediate humidity, high humidity, and light exposure. The amount of folic acid was quantified by high-performance liquid chromatography, where the percentage was calculated assuming the initial amount was 100%. Under normal delivery conditions (room temperature, 50% RH, shielded light) and intermediate humidity conditions (25℃, 75% RH, shielded light), no significant changes in appearance or folic acid content were observed. The sample stored under high humidity conditions (25℃, 91% RH, shielded light) changed in color from yellow to brown. The decrease in folic acid content was time dependent, and decreased to 47.1% after 28 d. Under light exposure (room temperature, 50% RH, 5,000 lux, 0.56 W/m2), the yellow color of PP becomes thin with time, while the folic acid content decreased to 73.2% after 28 d. The amount of folic acid may have decreased without any concomitant visible changes in the powder. The results of this study are expected to facilitate the management of adverse effects of PEM.
著者
畠山 淳司 中野 実 高橋 栄治 鈴木 裕之 蓮池 俊和 仲村 佳彦 針谷 康夫 大西 一徳
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.644-649, 2012

ツツガ虫病はダニが媒介するリケッチア感染症であり,稀に重症化する。症例は64歳,女性。入院9日前にキノコ狩りに出かけた後に頭痛と39℃台の発熱を認めた。その後,意識障害と呼吸不全も発症し,他院から転院となった。敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群,急性呼吸窮迫症候群を伴う多臓器不全の状態であり,ICUに入室した。経過中2度にわたり出血性胃潰瘍から出血性ショックとなり,内視鏡下緊急止血術を要した。病歴と特徴的な皮疹からツツガ虫病を疑い,ミノサイクリンを投与したところ,全身状態は改善した。第10病日以降も認知機能低下と性格変化が持続し,髄液蛋白の増加も認めたため,ツツガ虫病による脳炎と診断した。第27病日に脳炎は改善し退院した。ツツガ虫病の主な病態は血管内皮細胞障害による血管炎と考えられており,多臓器不全のみならず,今回見られた多発胃粘膜障害と脳炎も血管炎に伴う病態であった可能性が考えられた。
著者
川田 順造 鈴木 裕之 鶴田 格 亀井 伸孝 川瀬 慈 松平 勇二
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1995年以来、語りや踊りも含む「音文化」という概念の下に、ユネスコとの連携で続けている我々の研究対象は、ユネスコの観点からすれば無形文化遺産に他ならない。2009~ 2011年の研究期間には、研究代表者1名、研究分担者3名、連携研究者2名によって、アフリカ西部(ブルキナファソ、ベナン、コートジボワール)、アフリカ東部(エチオピア、タンザニア、ザンビア)における、さまざまな音文化=無形文化遺産の存続の条件を、それを支えている地域集団との関係で探求した。一方ユネスコの側からは、当該の文化遺産が現在その地域社会で機能していることを、無形文化遺産として登録される前提条件としており、文化的・歴史的価値だけでは登録できない。現地地域集団にとっての意味、研究者の視点からの価値判断、国際機関が提示する条件、三者の関係をどのように考え、現実に対応して行くかが今後の課題だ。
著者
鈴木 裕之
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:若手研究(B)2010-2011