著者
西岡 圭子 新井 孝昭
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、「音声言語」対「手話言語」の二項対立図式を越えて進む試みである。伝統的な言語学を方法論とする「手話言語学」は、「手話言語には文字がない」と判断した。しかし、デリダとメルロ=ポンティの思索によれば、空間的であるだけでなく時間的に、間-身体的な表現である手話こそ、原エクリチュールとしてのパロールに他ならない。成人ろう者によるろう児の教育は、文字のある言語の世界に人間のおとなが子どもを導いていく原型である。この視座からの現象学的記述を通して、成人ろう者がろう児に必要不可欠な文化的環境であることの自明性を論じた。
著者
新井 孝昭 小林 庸浩 新井 達也
出版者
筑波技術短期大学学術国際交流委員会
雑誌
筑波技術短期大学テクノレポート (ISSN:13417142)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-7, 2003

本学(筑波技術短期大学)聴覚部において、授業時における教員の発言を学生が苦労せずに読み取れる状況になることは、教員が意図した教育的成果を期待する上でも、必要不可欠な教育環境である。そこで我々は、授業記録テープをろう学生と聴者教員のそれぞれが読み取り、それらの比較・分析をおこなった。その結果、授業における学生の読み取りの誤りが、聴者教員(話者)に気づかれることなく、いくつも生じていることが改めて確認できた。本稿では、読み取り分析から明らかになった表現の問題点を指摘し論考するとともに、本学での教育的成果を上げるためにも、ろう(または「難聴」)学生に通用するもう一つのコミュニケーションスタイルの必要性について論述する。