著者
河北 雄一郎 新居 早也佳 橋本 博子 永谷 基浩 村井 一人 竹田 博幸
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】国立循環器病研究センターの減塩食「かるしおレシピ」は素材のうま味を引き出す京料理の考え方をベースとして、美味しく食べられるように工夫されている。レシピの基本はだし汁1.3Lに淡口醬油50ml、砂糖30g、塩6gを合わせた八方だしで、煮物から下茹でなど様々な調理に利用できる。一般的な八方だしには淡口醤油が多用されるが、かるしお八方だしにも淡口醤油が必須の調味料として使用されている。そこで本研究では、かるしお八方だしに淡口醤油を使う意義を解明することを目的とした。【方法】減塩調理に醤油が及ぼす影響を評価するため、淡口醤油と濃口醤油各々で調製した八方だしで、長芋の煮物、大根とうす揚げの煮物、ぶり大根、鯛の煮付け、治部煮、筑前煮を同条件で調理し、SD法による官能評価を行った。既に我々は塩味とだし風味について、淡口醤油中の方が濃口醤油中に比べ低い濃度で識別できることを報告してきたが、甘味は検討できていなかったため、本報告では甘味を識別できる濃度を調査した。淡口醤油と濃口醤油を用いてうどんだしを調製し、砂糖濃度1%を中心としてその濃度差を変えて2点識別試験片側検定にて甘味の閾値を比較した。【結果】減塩調理時の官能評価では全てのメニューで淡口醬油が濃口醤油よりも「素材の味が生きる」項目で有意差が見られた(P<0.001)。また、淡口醤油では砂糖濃度1%と1.25%の差を有意水準0.1%で識別できたが、濃口醤油では識別できなかった。以上より、淡口醤油は、塩味やだし風味に加えて、甘味を感じやすいことが明らかとなり、素材の味を引き立て、料理を低塩で美味しく仕上げることができる点で、かるしお八方だしに必須であることが示唆された。
著者
入路 光雄 白石 哲朗 入江 奨 新居 早也佳 北野 戴 山口 明彦 松山 倫也
出版者
九州大学大学院農学研究院
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:13470159)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.115-123, 2008-10
被引用文献数
1

The aim of this study was to establish a suitable experimental system for inducing maturation and spawning of captive reared jack mackerel, Trachurus japonicus. Specifically, we examined annual changes in the gonadal histology of captive jack mackerel. A total of 285 adult fish (147 females and 138 males) were sampled regularly from rearing tanks (3 ton) in the months of May through July (2006). We found that the gonadosomatic index (GSI) values in both sexes increased during May and June. Spermiation was observed in 60 to 80% of males; however, the GSI values were lower for captive males than for wild males of the same stage. In females, vitellogenic ovaries were recorded in only four fish in the annual sampling period. All of the fish sampled were 2 to 4 years old, with fork lengths of at least 200mm. Condition factors (CF) were between 13 and 17. From the above results, we can conclude that in the present experimental set up female jack mackerel fail to proceed into vitellogenesis, even though they are of reproductive age and their size and body condition have developed to mature values. Further studies on the development of reliable techniques for inducing vitellogenesis based on endocrinological dysfunction mechanisms in the gonadal development of captive jack mackerel are necessary.マアジの繁殖情報の精度を向上させるための飼育実験系の確立を目的として,本研究では,飼育下におけるマアジの生殖年周期を調査した.2005年5月~2006年7月の1年3ヶ月にわたり,陸上屋外円形3トン水槽でマアジ親魚を飼育し,定期採集により285尾(雌147尾,雄138尾)を得た.雌雄のGSIは5-6月に上昇した.雄では60-80%の個体で排精が認められたが,GSIは天然魚と比較して著しく低かった.一方,雌では卵黄形成が認められた個体は,4尾のみであった.採取時のマアジ雌雄の年齢は2-4歳で,尾叉長も全て200mm以上あり,CFも13-17であった.以上の結果より,水槽内で周年にわたり飼育したマアジでは,年齢,体サイズ,栄養状態ともに成熟するための条件は整っていたにもかかわらず,卵黄形成は進行しなかった.今後,養成マアジの成熟・産卵誘導実験系を確立するためには,生殖腺の発育不順の内分泌的要因の解明も含め,飼育下で卵黄形成を確実に促進させる技術を開発することが必要となる.