著者
松山 倫也 北野 載 坂口 圭史 長野 直樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

マサバは養殖対象種として有望であるが、クロマグロ同様、稚魚期の共喰いにより生残率が著しく低い。本研究では、ゲノム編集技術を利用して、攻撃性関連遺伝子であるAVTR-V1a2を破壊したマサバの品種作出を目指した。その結果、TALENによりAVTR-V1a2の両アレルが破壊(ホモKO)された21尾の個体を作出することに成功した。今後、これらの個体を用いて、大量の稚魚を生産し、形質を評価する予定である。
著者
松山 倫也 SETHU Selvaraj SETHU Selvaraj
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

脊椎動物の性成熟を支配する脳-脳下垂体-生殖腺軸(BPG-axis)の活動は, 春機発動の開始に伴い活性化すると考えられているが, 魚類ではその詳細は明らかでない。これまでBPG-axisの最上位における生殖制御因子として生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が知られていたが, 近年, 哺乳類において, GnRHの分泌を促して性成熟の引金を引く因子, キスペプチン(Kiss)が発見された。急速に進展している哺乳類でのKiss研究に比べ, 魚類のKiss研究は少なく, 現在, メダカ, ゼブラフィッシュ, キンギョ, フグやシーバスでの研究があるに過ぎず, その機能もほとんど明らかでない。本研究では, 春機発動機構解明のための解析ツールと全生活史にわたる飼育実験系が整備されているマサバを用いて, 期間内(平成23年9月~25年8月)に, KissによるGnRH制御機構, およびマサバへのKiss投与による春機発動促進効果を明かにする。本年度(平成25年4月~平成25年9月)は, 2種のKiss受容体(KissR1, KissR2)の遺伝子クローニングを行い, 合成したマサバKiss1-15およびKiss2-12をリガンドとしたレポーター遺伝子アッセイを行った。その成果、KissR1はKiss1-15の、またKissR2はKiss2-12の固有な受容体であり、それぞれのKiss受容体へのシグナルは、PKC/MAPKs経路で伝達されることが明らかとなった。
著者
中田 久 中尾 貴尋 荒川 敏久 松山 倫也
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.942-946, 2005-11-15
被引用文献数
1 6

ブリの人工授精による採卵技術の向上を目的として,HCG投与時の卵径と排卵時問,卵量および卵質との関係を調べた。卵径650〜800μmの卵を持つ養成3歳雌魚33尾にHCG(500IU/kg)を投与して排卵を誘導した。その結果,HCG投与時の卵径(D,μm)と排卵までの時間(T,hr)には,T=-0.082D+105.99(R^2=0.51)の式で表わされる負の相関関係が認められた。卵径700〜800μmの個体からは約53万粒/尾の卵が得られ,卵径650〜700μmの個体ではその半数であった。ふ化率はHCG投与時の卵径が大きい個体ほど高かった。
著者
入路 光雄 白石 哲朗 入江 奨 新居 早也佳 北野 戴 山口 明彦 松山 倫也
出版者
九州大学大学院農学研究院
雑誌
九州大学大学院農学研究院学芸雑誌 (ISSN:13470159)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.115-123, 2008-10
被引用文献数
1

The aim of this study was to establish a suitable experimental system for inducing maturation and spawning of captive reared jack mackerel, Trachurus japonicus. Specifically, we examined annual changes in the gonadal histology of captive jack mackerel. A total of 285 adult fish (147 females and 138 males) were sampled regularly from rearing tanks (3 ton) in the months of May through July (2006). We found that the gonadosomatic index (GSI) values in both sexes increased during May and June. Spermiation was observed in 60 to 80% of males; however, the GSI values were lower for captive males than for wild males of the same stage. In females, vitellogenic ovaries were recorded in only four fish in the annual sampling period. All of the fish sampled were 2 to 4 years old, with fork lengths of at least 200mm. Condition factors (CF) were between 13 and 17. From the above results, we can conclude that in the present experimental set up female jack mackerel fail to proceed into vitellogenesis, even though they are of reproductive age and their size and body condition have developed to mature values. Further studies on the development of reliable techniques for inducing vitellogenesis based on endocrinological dysfunction mechanisms in the gonadal development of captive jack mackerel are necessary.マアジの繁殖情報の精度を向上させるための飼育実験系の確立を目的として,本研究では,飼育下におけるマアジの生殖年周期を調査した.2005年5月~2006年7月の1年3ヶ月にわたり,陸上屋外円形3トン水槽でマアジ親魚を飼育し,定期採集により285尾(雌147尾,雄138尾)を得た.雌雄のGSIは5-6月に上昇した.雄では60-80%の個体で排精が認められたが,GSIは天然魚と比較して著しく低かった.一方,雌では卵黄形成が認められた個体は,4尾のみであった.採取時のマアジ雌雄の年齢は2-4歳で,尾叉長も全て200mm以上あり,CFも13-17であった.以上の結果より,水槽内で周年にわたり飼育したマアジでは,年齢,体サイズ,栄養状態ともに成熟するための条件は整っていたにもかかわらず,卵黄形成は進行しなかった.今後,養成マアジの成熟・産卵誘導実験系を確立するためには,生殖腺の発育不順の内分泌的要因の解明も含め,飼育下で卵黄形成を確実に促進させる技術を開発することが必要となる.