著者
新田 勍 水野 孝則 高橋 清利
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.447-466, 1992
被引用文献数
43

1986/87エルニーニョ発生期に起きた、様々な対流活動と流れの場に関する、時間・空間変動の特徴について調べた。この時期、インド洋から太平洋にかけての熱帯域では、季節内変動(ISV)、超雲集団(SCC)、双子低気圧、西風バーストが発生、発達、消滅を繰り返した。<br>多くの季節内変動は、インド洋で発生し、超雲集団、双子低気圧、西風バーストを伴って、西部熱帯太平洋へと伝わって行く。1986年に発生した季節内変動の中で、エルニーニョの発達に重要な役割を果たしたと思われる、(1)5月の双子低気圧、(2)8月に発達したITCZ、(3)本格的なエルニーニョの発達と関係した11月の超雲集団、の3例について詳しい時間変化と水平-垂直構造を調べた。<br>超雲集団が赤道上をインド洋から西部太平洋に東進する過程で、下層の西風バーストが海洋大陸上、特にスマトラの地形によって大きく影響を受けることが明らかになった。
著者
住 明正 新田 勍 岸保 勘三郎
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1986

大気中の二酸化炭素の増加は、温室効果により、大気中の気温を上昇させ、大規模な気候変化を引き起こすとされている。しかしながら、従来のモデルの計算では、海面水温を気候値に固定して行なって来た。しかしながら、最近の大気ー海洋結合モデルの結果によれば、同時に、海面水温も増加するという結果が得られている。しかし、海面水温が上昇すると、当然、積雲活動が変化する。それ故に、【CO_2】の気候変化に対する影響を見積るためには、この積雲活動のふるまいを正しく理解する必要がある。このためには、積雲活動の振舞を充分に表現出来るような大気ー海洋結合モデルを用いれば良いのであるが、現在の計算機の能力では時期尚早である。そこで、本研究では、高分解能の東大大気大循環モデル(T4-2全球スペクトルモデル)を用い、海面水温上昇を既知として、その後の、積雲活動の分布の変化を計算し、【CO_2】の増加に伴う、気候の変化の予測を行うことを目標とした。その結果、熱帯域では、海面水温が東西に一様であっても、積雲群は特長的な分布をすることが分かった。つまり、海洋の西半分に、二本のITCZ(熱帯収束帯)が、そして、赤道上では、海洋中央から東に積雲群が分布する。この傾向は、初期値、海面水温の絶対値には、依らなかった。【CO_2】による海面水温の上昇は、東西に一様になるという結果が得られているので、そのような温度アノマリーを与えると、当然の様に、海洋西半分のITCZの積雲活動が強化される。その結果は、亜熱帯ジェットの強化、そして、低気圧活動の強化と一連の現象をへて、中緯度に伝わっていく。しかしながら、それは、東西一様ではなく、大陸の西半分で顕著であった。日本のように、大陸の東端には、それ程顕著な影響は見られなかった。この結果を確証するには、更なる実験が要る。
著者
新田 勍 関根 創太
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.627-641, 1994-10-25
被引用文献数
18

静止気象衛星「ひまわり」による3時間間隔、9年間のT_<BB>データを用いて、熱帯西部太平洋域の対流活動の日変化の解析を行った。対流活動の大きな日変化がインドシナ半島、チベット高原、北オーストラリア、海洋大陸域等の大陸や大きな島及びその周辺海域に存在する。また、ベンガル湾と南シナ海にも大きな日変化が存在する。一方、海洋大陸域ほど大きくはないが、熱帯収束帯(ITCZ)と南太平洋収束帯(SPCZ)にも日変化が見られる。日変化の特徴は季節によって変化し、対流活動が活発な季節に日変化の振幅も増大する。大陸上及び大きな島の上では、対流活動は午後遅くから夜にかけてピークに達するが、これは日中の地表からの加熱によるものと思われる。一方、大きな島の周辺海域では、対流活動のピークは一般に午前中に現れる。このような周辺海域の対流活動の日変化は、海陸風循環と大規模な一般風との相互作用によって作られているものと思われる。ベンガル湾の北端海域の対流活動は夏のインドモンスーン期に大きな日変化を示し、午後に対流活動のピークが現れる。南シナ海の対流活動の日変化は夏から秋にかけて顕著になり、正午頃ピークになる。ITCZとSPCZの対流活動は一般に午前に最盛期に達するが、午後にもう一度活発になる。フーリエ解析の結果、ITCZやSPCZ上には半日周期の変動が存在し、3-4地方時と15-16地方時に対流活動が最大となることがわかった。