- 著者
-
新田 貴之
- 出版者
- 東北社会学会
- 雑誌
- 社会学年報 (ISSN:02873133)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.171-187, 2007-07-20 (Released:2013-10-23)
- 参考文献数
- 14
本稿は,ノーマン・K・デンジンの「エピファニー」概念の検討を通して,彼の「解釈的相互行為論」がイデオロギー批判の方法であることを明らかにする. 本稿は,デンジンの立場を明確にしたうえで,彼の「解釈的相互行為論」における「エピファニー」概念に焦点をあてる.特に,研究者が,「個人的トラブル」として語られる「エピファニー」をいかなるものとして捉え,解釈しているのかという点を検討する. 「解釈的相互行為論」においては,「エピファニー」を書くことが二重に捉えられている.このことによって,エスノグラフィーにおける物語の「神話化」が批判的に捉えられる.さらに,デンジンは,研究者が「エピファニー」の再叙述において自らの自明性,すなわちイデオロギーに無批判であることに対して批判する.デンジンの「解釈的相互行為論」とは,再叙述における物語の「神話化」を自覚的に捉え,研究者自身のもつ自明性,すなわちイデオロギーを批判的に捉えることによって再叙述することなのである.