著者
新谷 勝広 秋山 友了 雨宮 秀仁 竹腰 優 佐藤 明子 太田 佳宏 三宅 正則
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.417-422, 2020 (Released:2020-12-31)
参考文献数
25

山梨県における早生の主要品種である ‘日川白鳳’ に替わる品種の育成を目的に交雑を実施し, ‘甲斐トウ果17’ を育成した.‘甲斐トウ果17’ の収穫始め期は ‘日川白鳳’ とほぼ同時期である.果実重は298 gとなり, ‘日川白鳳’ と同程度の大きさとなる.果汁は対照品種と同様に多であった.核割れの発生はかなり少なく, ‘日川白鳳’ より栽培しやすいと考えられる.果皮の着色の型は,一様に着色しやすいべた状である.成熟に伴う果肉硬度の推移は収穫始め日が2.4 kgであり,日数の経過とともに低下し,2016年は16日後に2.0 kg,2017年は18日後に1.9 kgとなった.収穫後オーキシン処理した果実の果肉硬度は処理9日後には0.4 kgとなり,エチレン生成量は処理1日後より急激に増加した.DNAマーカーにより肉質の確認を行ったところ,硬肉モモであることが明らかとなった.これまで知られている硬肉モモは,成熟が進んでも果肉が硬く,普通モモとはまったく異なる食感を有している.遺伝的に硬肉モモでありながら果肉が柔らかくなる品種についての報告は ‘甲斐トウ果17’ 以外にない.‘甲斐トウ果17’ は ‘日川白鳳’ およびその後に成熟する品種の代替え品種としての普及が期待される.
著者
新谷 勝広 猪股 雅人 富田 晃 渡辺 晃樹
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
no.13, pp.49-56, 2014 (Released:2016-01-20)

1990年代後半より県内のモモ栽培地域でモモ樹が衰弱もしくは枯死してしまう障害の発生が見られるようになった。そこで,現地における発生実態および障害の特徴を把握し,その経緯に基づいた再現試験および防止対策試験を行った。現地実態調査から,枯死障害の発生に,圃場や品種の違いとの明白な関係は認められなかった。一方,剪定を中心とする樹体管理,特に冬季剪定おける強剪定との関係が最も高かった。再現試験においても,強剪定した樹に衰弱樹や枯死樹が多く発生し,現地実態調査で観察された枯死障害の症状と同様の症状が確認された。このことから,冬季の強剪定が枯死障害の発生に大きく関与しており,剪定切り口からの枯れ込みが養水分の通導を妨げ,枯死の引き金になっている可能性が示唆された。また、防止対策試験では,厳寒期後の3月に剪定を行う方法が障害の発生を防止するうえで最も有効であることが明らかとなった。
著者
萩原 栄揮 富田 晃 山下(土橋) 路子 新谷 勝広
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.179-184, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
16

甘果オウトウ ‘ナポレオン’ の花粉を供試し,in vitroで温度変化が花粉発芽と花粉管伸長に及ぼす影響を調査した.2段変温区(20°C, 2時間→4°C, 15時間→20°C, 3時間)と変温区(4°C, 15時間→20°C, 3時間)を一定温度の対照区(20°C, 3時間)と比較した.2段変温区では設定温度を20°Cから4°Cに変更すると花粉管の伸長速度は著しく低下した.再び,20°Cに移行しても伸長速度は当初の約50%に留まり,花粉管先端の屈折や肥大などの形態的な異常が観察された.変温区では,4°Cで15時間経過しても発芽は認められなかった.設定温度を20°Cに上げると花粉管の伸長は速い速度を示した.さらに,温度条件が異なる時間帯に受粉して結実率を比較したところ,結実は受粉する時間帯によって異なり,午前10時~午後2時の受粉で良好な結実が得られたが,気温が低い早朝や夕方の受粉では結実率が低下した.甘果オウトウでは気温の高い日中に受粉すると結実確保に有効であることが示された.
著者
新谷 勝広 富田 晃 萩原 栄揮
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.554-559, 2008-05

モモの枯死障害に及ぼす強剪定の影響。山梨県におけるモモの栽培面積は3,510ha、生産量は60,200tになる。これはいずれも全国一であり、山梨県内における樹種別の栽培面積ではブドウの4,360haに次ぐ規模となっている。しかし一方で、山梨県の農地面積は、農業就労者の高齢化や担い手不足などに伴い漸減してきている。そのような状況においても、モモはブドウに比べ栽培面積の減少割合は低く、ほぼ横ばいとなっている。これは、ブドウに比べて開園に際して棚などの施設費を必要としないことや、1998年1月の大雪でブドウ棚が倒壊する被害によってモモヘの改植が進んだこと、ブドウに比べ省力的な樹種として認識されていることなどによると考えられる。障害は植付け後2〜3年が経過した若木で発生が多いと言われている。果実が生産できる樹齢に達したころ、本障害が発生し樹体の衰弱や枯死を引き起こすと、経営的にもダメージとなる。このような状況から本障害の原因の究明と防止対策が強く求められており、筆者らは2001年より「モモ枯死障害の原因究明と対策」の試験を開始した。