著者
土居 秀幸 菊地 永祐 日野 修次 伊藤 丈 高木 茂人 鹿野 秀一
出版者
日本陸水学会
雑誌
日本陸水学会 講演要旨集 日本陸水学会第68回大会 岡山大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2003 (Released:2004-11-26)

潟沼は平均pH 2.2の強酸性湖である.潟沼において,炭素安定同位体比を用いて堆積有機物起源の解析を行った.また,潟沼はその生物相が単純であることから,堆積有機物起源の詳細な解析が可能である.一般に酸性湖沼は非調和型湖沼であり,堆積有機物の起源は周りから供給される有機物が多い.しかし炭素安定同位体比解析の結果,潟沼の堆積有機物は周りの森林からの有機物由来のものは少なく,その多くは底生珪藻と植物プランクトン(内生産性の有機物)に由来することが分かった.この要因としては,潟沼が流入河川を持たないこと,珪藻と植物プランクトンの生産が大きいことが考えられた.
著者
占部 城太郎 日野 修次 伴 修平 千葉 聡
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1)集水域の土地利用と湖沼生態系の二酸化炭素分圧(pCO2)との関係を把握し、2)pCO2変化に伴う種間相互作用や物質転換効率の変質過程を生態化学量論の視点から明らかにすることで、3)地球・地域環境変化に伴う湖沼生物群集の応答予測を行うことを目的としている。この目的のため、前年度に引き続き湖沼調査を実施し、調査結果を強化するとともにGISを用いて集水域を解析し、湖沼pCO2への被覆・土地利用の影響を解析した。主成分分析により各湖沼の集水域の被覆・土地利用特性を数量化し、湖沼の物理・化学・生物パラメータとともに共分散構造分析を行ったところ、集水域に針葉樹林が広がる湖沼では溶存有機態炭素の流入が相対的に多く、これを従属栄養生物が直接・間接的に利用して無機化するためpCO2が増加することがわかった。しかし、集水域に田畑・市街地を多く含む湖沼では、栄養塩流入が相対的に高くなるため一次生産が活発となってCO2を吸収するため、pCO2は大気よりも低くなる。すなわち、湖沼の炭素代謝は栄養塩と溶存有機態炭素の流入バランス(化学量)に強く依存し、それらは集水域の被覆・土地利用を反映していることが示唆された。また、このような湖沼のpCO2変動に対する生物群集への応答を調べる、CO2濃度を操作したマイクロコズム実験を実施した。その結果、pCO2の変化に対する藻類の応答やその藻食プランクトンへの化学量効果は、藻類分類群によって異なることが示された。すなわち、ラン藻類ではpCO2の変化に応答は小さく、藻食プランクトンの餌としての価値も小さいものであったが、緑藻や珪藻類ではpCO2の変化に成長速度や化学量が鋭敏に応答し、藻食プランクトンの餌としての価値はpCO2濃度によって大きく変わることが明らかとなった。湖沼のpCO2の挙動はこれまで殆ど注目されてこなかったが、集水域の土地利用を指標する一方、湖沼の食物網にも強く栄養を及ぼすものであることが、本研究により示唆された。