著者
亀甲 武志 根本 守仁 伴 修平 三枝 仁 澤田 宣雄 石崎 大介 中橋 富久 寺本 憲之 藤岡 康弘
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.303-309, 2013-09-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
43
被引用文献数
2

水田を利用したホンモロコ Gnathopogon caerulescens の初期育成の可能性を検討するため,2009年と2011年にホンモロコ孵化仔魚を滋賀県内の水田(合計6筆)に 1 m2 あたり20個体から80個体の密度で放流し,中干し時までの成長と生残を調査した。水田へ放流後19~25日間で,15.2~21.9 mm まで成長し,天然下や飼育下での成長よりも早く,生残率は23.1~43.9%であった。以上の結果から,水田はホンモロコの初期育成の場として有効であると考えられた。
著者
神戸 道典 伴 修平
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.375-389, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

琵琶湖固有種であるアナンデールヨコエビ(Jesogammarus annandalei)について, 8,15,20および25℃における生残率,呼吸速度,アンモニアおよびリン排出速度を測定し,その水平分布に与える水温の影響について考察した。本種は,年一世代で,日中7~8℃の湖底に生息し,夜間温度躍層下部まで上昇する。飼育水温を8~15℃に変化させても生残率に影響はみられないが,20あるいは25℃まで上昇させると1日以内に50%が死亡した。呼吸速度はいずれの季節でも水温上昇に伴って増加する傾向を示し,また1~3月と10月に比べて5~6月に高かった。これは成長に伴う増加を示しており,呼吸速度(R)は体乾燥重量(W)と水温(T)で,logR = 0.695·logW + 0.03·T-0.34と表すことができた。一方,アンモニアおよびリン排出速度は5~6月には水温上昇に伴って増加傾向を示したものの,1~3月と10月には温0度に伴う増加はみられず,20℃を上回る高水温ではむしろ低下する傾向を示し,その影響は若齢個体で顕著だった。琵琶湖北湖における本種の水平分布は,湖底水温が周年を通して10~15℃以下の地点に偏っていた。本研究は,このことをよく説明し,水温が本種の水平および鉛直分布を決定する重要な環境要因の一つであることを示唆した。
著者
占部 城太郎 日野 修次 伴 修平 千葉 聡
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1)集水域の土地利用と湖沼生態系の二酸化炭素分圧(pCO2)との関係を把握し、2)pCO2変化に伴う種間相互作用や物質転換効率の変質過程を生態化学量論の視点から明らかにすることで、3)地球・地域環境変化に伴う湖沼生物群集の応答予測を行うことを目的としている。この目的のため、前年度に引き続き湖沼調査を実施し、調査結果を強化するとともにGISを用いて集水域を解析し、湖沼pCO2への被覆・土地利用の影響を解析した。主成分分析により各湖沼の集水域の被覆・土地利用特性を数量化し、湖沼の物理・化学・生物パラメータとともに共分散構造分析を行ったところ、集水域に針葉樹林が広がる湖沼では溶存有機態炭素の流入が相対的に多く、これを従属栄養生物が直接・間接的に利用して無機化するためpCO2が増加することがわかった。しかし、集水域に田畑・市街地を多く含む湖沼では、栄養塩流入が相対的に高くなるため一次生産が活発となってCO2を吸収するため、pCO2は大気よりも低くなる。すなわち、湖沼の炭素代謝は栄養塩と溶存有機態炭素の流入バランス(化学量)に強く依存し、それらは集水域の被覆・土地利用を反映していることが示唆された。また、このような湖沼のpCO2変動に対する生物群集への応答を調べる、CO2濃度を操作したマイクロコズム実験を実施した。その結果、pCO2の変化に対する藻類の応答やその藻食プランクトンへの化学量効果は、藻類分類群によって異なることが示された。すなわち、ラン藻類ではpCO2の変化に応答は小さく、藻食プランクトンの餌としての価値も小さいものであったが、緑藻や珪藻類ではpCO2の変化に成長速度や化学量が鋭敏に応答し、藻食プランクトンの餌としての価値はpCO2濃度によって大きく変わることが明らかとなった。湖沼のpCO2の挙動はこれまで殆ど注目されてこなかったが、集水域の土地利用を指標する一方、湖沼の食物網にも強く栄養を及ぼすものであることが、本研究により示唆された。
著者
長沼 毅 今中 忠行 伊村 智 内田 雅己 大谷 修司 神田 啓史 黒沢 則夫 幸島 司郎 高野 淑識 東條 元昭 伴 修平 福井 学 星野 保 宮下 英明 吉村 義隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は地球環境の健康診断「国際極年」の中核計画として実施されたものである。地球環境変動のうち温暖化の影響は南北両極、特に環境変動に鋭敏に応答する微生物の生態に顕著に現れる。そこで本研究では初めて総合的な極地微生物の生態調査を行った。極域および高山氷河域に生息する微生物の種類と現存量および固有種・汎存種を調べることで、今後の変遷を評価する上で必要になる「国際極年参照データ」を残すことができた。