著者
小谷 治子 日野 弘之 武市 知己 白石 泰資 小倉 英郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.473-478, 2005-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3

気管切開後に呼吸障害が再出現した重症心身障害者4例で, 原因とその対策を検討した.全例でカニューレ下端が気管狭窄部に接し, 同部に動脈性拍動を伴う肉芽が認められ, 3例で気管軟化症を合併していた.3例でカニューレ下端を病変部より口側固定に変更し (うち気管軟化症を伴う1例にはステントを併用), 経過は良好である.高度の気管軟化症を伴い, ステント留置のみを行った1例は気管腕頭動脈瘻のため死亡した.重症心身障害者の気管切開の合併症予防には, 解剖学的検討による長さや角度が適切なカニューレ選択が重要であり, 高度の気管軟化症がない場合は, 狭窄部や動脈近接部の口側に固定できる短いカニューレが適切であると考えられた.
著者
小倉 英郎
出版者
一般社団法人 日本計画行政学会
雑誌
計画行政 (ISSN:03872513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.3-8, 2023-05-15 (Released:2023-06-08)
参考文献数
7

From October 2000 to March 2021, we examined the clinical features of 349 outpatients with SHS, MCS and EHS (16 years and older) who initially visited our hospital with symptoms. A diagnosis of MCS was made based on the “1999 Consensus”. The average age of the subjects was 47.6 +/-13.3 years, with a male to female ratio of 1:4.82. However, the male-to-female ratio of 34 children aged 15 years or younger was 1:1.15 (p<0.001). A review by disease type indicates that SHS accounted for 22.3% of the cases, decreasing after 2007, with 69.2% thereof progressing to MCS or MCS+EHS. The trend shows that EHS associated with MCS has been on the rise since 2011. There was a significant difference in the male-female ratio between adults and children. The results also suggest that there more females than men develop the disease at an older age. There is a concern that MCS and EHS will increase going forward, so some form of countermeasure is desired.
著者
小倉 英郎 井上 和男 武市 知己 原 昭恵
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.265, 2014

はじめにインフルエンザの感染様式は飛沫感染、接触感染、空気感染が考えられるが、空気感染に関しては、インフルエンザの感染拡大防止対策において重要であるとする意見とそれを疑問視する意見が対立している。今回、われわれは当院重症心身障害病棟において空気感染の可能性を示唆する事例に遭遇したので報告する。事例2014年3月24日〜26日、重症心身障害病棟、1個病棟(41名)において、A型インフルエンザの病棟内流行を認めた。予防接種は40名に行われていた(接種率97.6%)。診断は迅速診断で行ったが、24日9名、25日12名、26日5名が発症し、27日には患者の流行は終息した(罹患率63.4%、うち2名でH1N12009が分離された)。職員では、25日4名、26日5名、27日1名が発症した。3月19日〜21日に個別支援計画の説明が家族になされており、この後の面会がインフルエンザの侵入に関与した可能性が否定できなかった。急激な発症パターンであることとアウトブレイク初日の患者配置図の検討から、空気感染の可能性を強く疑い、現場を検証した。その結果、おむつ交換時に換気スイッチを押すことにより、病棟入り口の天井から急速に吸気され、病室内から外部に排気されることが判明した。このため、病棟廊下から病室への気流が発生し、感染拡大の原因となった可能性が示唆された。この臨時の換気システムは病棟全体の換気システムとは別になっており、応急措置として、おむつ交換時の換気はしないこととした。なお、予防投与を含め、タミフル®が37名、リレンザ®が16名、ラピアクタ®が1名に投与され、流行は終息した。重篤な合併症を呈した例はなかった。考察当院の重症心身障害病棟は3個病棟であるが、他2個病棟では当該病棟のような気流の流れを生じる構造になっていなかった。重症心身障害病棟ではインフルエンザやノロウイルス感染症の流行はしばしば経験される。空気感染対策を考慮した病棟の設計が望まれる。
著者
鳥居 新平 平山 耕一郎 秋山 一男 池澤 善郎 内尾 英一 岡本 美孝 小倉 英郎 高橋 清 西間 三馨
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1515-1530, 2006
参考文献数
13
被引用文献数
2

【目的】シックハウス症候群(SHS)の定義を明らかにする目的で本研究を行った.【方法】SHSの定義は,1.発症のきっかけが住居に関連する.2.症状は住居内で現れる.3.住居から離れると,症状は軽くなるか又は消失する.4.住居に入ると繰り返し症状が現れる.以上をSHSとし,それ以外はMCSと分類した.SHSのみを完全に抽出すれば,MCSは複数の疾患を含むため,MCSの特徴的な症状は検出され難い.この作業仮説に基づき,オッズ比が,1超えがSHSの特徴的な症状となるように,MCSを参照としてlogistic regressionを行った.【結果】オッズ比が2以上のSHSに特徴的な症状は吐き気・嘔吐,何事もおっくうであり,症状が悪化する原因物質として香水,化粧品のにおいであった.各種アレルギー性疾患との比較で,アレルギー疾患に特徴的な症状が夫々検出された.【結語】この結果は,分類方法が適切であることを示し,本定義は,WHOのシックビルディング症候群に関する定義と基本的に変わらず,類似の症状が検出できた.
著者
池津 善郎 池部 敏市 小倉 英郎 小田嶋 博 黒坂 文武 佐瀬 くらら 杉内 政巳 杉山 朝美 勝呂 宏 鈴木 慎一郎 藤沢 重樹 北條 徹 松井 猛彦 松田 三千雄 山本 淳 四本 秀昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.633-642, 1991
被引用文献数
8

米アレルギーの関与が考えられるアトピー性皮膚炎(AD)患者に対する通常米の厳格除去効果を臨床的に検討することを目的として, 低アレルゲン米(HRS-1)の代替食療法を多施設共同で実施した. その際, 米と小麦との交叉反応性を考慮し小麦も厳格除去した. このHRS-1は, 抗原蛋白を除去するため蛋白分解酵素処理した米である. 総実施例49例のうち除外・脱落などを除いた43例を解析対象とした. 多くの症例でHRS-1摂取直後から4週にかけてAD病変の範囲・重症度指数(ADASI)の急速な低下が観察され, 2週後, 4週後, 最終判定日(平均5.6週)のADASIは, それぞれ開始時と比較して有意に低下した. 全般改善度において「改善」以上の改善率は, 2週後では39%, 4週後では67%, 最終判定日では74%であった. また, 併用ステロイド外用剤の減量効果においても「軽減」以上の症例は, 最終判定日で約半数に認められた. 3例の悪化のほかに特記すべき副作用は認められなかった. 有用性の成績は, 43例中「非常に有用」が17例(40%),「有用」が13例(30%),「やや有用」が9例(21%)であり,「有用」以上の有用率は70%であった. HRS-1は, 米アレルギーに悩む難治性重症AD患者の代替食として高い有用性のあることが認められた.