著者
日高 なぎさ 田中 英高 土田 こゆき 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.55-59, 2001-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

従来から指摘されているように心因性発熱の発生機序を不十分な情動表現から生じるとするなら, 言語化を促す箱庭療法はきわめて有効な治療手段であろう.箱庭療法が奏効した心因性発熱の1例の治療過程について報告する.導入当初は統合性の低い箱庭が多くみられ, 制作中はほとんど話をせず言語表現の乏しさが目立ったが, 治療を終結する頃には全体として統合性の高い箱庭があらわれるようになった.同時に言語化も促され, 家庭や学校での出来事を自発的に話し, 発熱もなく登校するようになった.本症例では箱庭療法を通じて欲求や感情の言語化が促され, 心的浄化が図られた結果として症例の重篤化を防ぐことができたと考えられる.