著者
中橋 良信 丸山 新 関 晋司 日高 智 口田 圭吾
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.441-446, 2007-11-25 (Released:2008-05-25)
参考文献数
11
被引用文献数
8 3

画像解析によりロース芯内脂肪交雑の断面部位による変化について調査するために,黒毛和種去勢牛12頭のロース芯をスライスし,画像解析を行った.第6~7胸椎から第10~11胸椎までを2 cm間隔でスライスし,12枚のスライス肉を得た(リブロース).また,第10~11胸椎から23~28枚のスライス肉を得た(サーロイン).ミラー型枝肉撮影装置を用いて各スライスの高精細デジタル画像を得た.画像解析ソフト(Beef Analyzer II)により,各スライスにおけるロース芯面積,脂肪面積割合,小ザシ数,小ザシ指数,全体あらさ指数,最大あらさ指数,慣性主軸短径長径比,ロース芯複雑度の8形質を求めた.また,第6~7切開面,サーロインの第1面,ロース芯終端面それぞれの画像解析形質と,全スライス平均との相関係数を求め,どの面がロース芯をより代表するか調査した.ロース芯の形状はリブロースからサーロインに進むにつれて細長くなった.脂肪面積割合は尾側に向かうにつれリブロースでは減少し,サーロインでは増加した.脂肪交雑のあらさは尾側に向かうにつれあらくなった.最大あらさ指数が高くなる特定の部位は存在せず,大きな粒子は突発的に発生することが示唆された.第6~7切開面と全スライス平均との相関係数は脂肪面積割合を除く形質でr=0.15~0.61の範囲にあった.それに対しサーロインの第1面と全スライス平均とのそれは,最大あらさ指数を除く形質でr=0.68~0.92の範囲にあった.個体によって第6~7切開面のロース芯における脂肪交雑の状態と,サーロインにおけるそれに差が存在する場合が確認されたため,詳細に肉質を調査する場合,第10~11胸椎の切開面の脂肪交雑の状態を追加情報とする必要性が示唆された.
著者
前原 正明 村澤 七月 中橋 良信 日高 智 加藤 貴之 口田 圭吾
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.507-513, 2008-11-25
被引用文献数
4 3

黒毛和種572頭のロース芯から得た脂肪交雑の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより分析した.ロース芯を画像解析した値と,各脂肪酸との関連性を調査した.モノ不飽和脂肪酸(MUFA)割合の平均値は57.0%(去勢 : 56.4%,メス : 58.3%),ロース芯脂肪割合の平均値は44.4%(去勢 : 45.6%,メス : 41.6%)であった.MUFA%は出荷月齢およびBFSナンバーと正の相関を示した(それぞれ0.27,0.25 : <I>P</I> < 0.01).BMSナンバーと有意な相関を示した脂肪酸はステアリン酸(-0.11 : <I>P</I> < 0.01)のみであった.MUFA%はあらさ指数(0.16)および最大あらさ指数(0.11)と正の,細かさ指数(-0.17)と負の相関係数を示した(<I>P</I> < 0.01)が,ロース脂肪割合(0.04)とはほぼ無関係であった.脂肪交雑の平均階調値はMUFA%と負(-0.38)の,パルミチン酸と正(0.43)の相関係数を示した(<I>P</I> < 0.01).
著者
長谷川 隆則 森松 文毅 川本 恵子 日高 智
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.343-350, 2015-08-25 (Released:2015-09-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

自給飼料活用の更なる推進のため,北海道ではイアコーンサイレージ(ECS)の利用検討が行なわれている.本研究では,ECS給与が肥育豚の産肉性に及ぼす影響を検討した.肥育豚(平均65.4kg)を6頭ずつ3区分し,市販配合飼料を給与した対照区,配合飼料80%+ECS 20%の混合飼料を給与したECS区,配合飼料60%+ECS 20%+デンプン粕主体エコフィードサイレージ(EFS)20%の混合飼料を給与したECEFS区を設け,平均117.9kgまで肥育した.飼料(乾物)要求率は,対照区とECS区では同等で,ECEFS区では全期間平均で有意に高かった(P < 0.05).各試験区の肉質は,背部皮下脂肪中のスカトール含量が,対照区と比較してECS区,ECEFS区で有意に低かった(P < 0.05).以上から,20%量のECSを配合飼料と置換しても生産性に影響なく,産肉の不快臭を減少させる可能性が示唆された.
著者
口田 圭吾 菊地 彩 加藤 浩二 日高 智 鈴木 三義 三好 俊三
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.23-29, 2003-02-25
被引用文献数
9 8

胸最長筋の皮下脂肪側において,筋間脂肪が胸最長筋内に大きく入り込んでくぼみのあるもの(いわゆる'ハート芯')は,枝肉の価値を低下させる一因であるとされる.本研究では,画像解析による新たなハート芯評価方法について提案すること,ならびに黒毛和種のハート芯形成に対する種雄牛の影響を検討することを目的とした.枝肉横断面撮影装置によって撮影された第6~7肋骨間の胸最長筋画像を2値化した.2値画像について胸最長筋の境界線を検出し,膨張処理ならびに細線化処理を行い,なめらかな胸最長筋の輪郭線を得た.胸最長筋の長径より上部(皮下脂肪側)について,凸部を結んだ凸多角形を描き,凸多角形と胸最長筋の輪郭線が作る領域について,その面積,パターン幅等を測定した.得られた画像解析形質のうちから3変数を用い,肉眼で判定したハート芯の程度を分類変数とする線形判別分析を行ったところ,その判別率は,97.0%と極めて高く,画像解析によりハート芯の程度を数値化することを可能とした.237頭(種雄牛32頭)の黒毛和種産肉能力検定間接法の材料牛について,ハート芯の程度を肉眼で調査したところ,38頭においてハート芯が確認された.画像解析により評価したハート芯の程度に対する種雄牛の効果は高度に有意(P<0.01)であり,特定の種雄牛からの後代にハート芯の出現頻度が多い傾向が認められ,ある1頭の種雄牛については,後代6頭すべてがハート芯の形状を呈した.