著者
早坂 七緒
雑誌
人文研紀要
巻号頁・発行日
no.78, pp.181-207, 2014-09-16

1933年のナチス政権確立以降,ドイツ,オーストリアでは次々に議会制民主主義や言論の自由などが蹂躙されていった。大方の市民の対応は「脱深刻化」,すなわち大したことではないとする敗北的な態度だった。その下地を形成したのが第一次世界大戦以降,数度にわたり高揚と幻滅を体験した人びとの「魂の真空」であるが,さらにムージルも含めた作家や詩人たちが既成の概念や感性,ひいては旧来のモラルを疑問視する作品を発表して,ナチスの不条理な主張を説き伏せる言葉と理念の力を殺いだことでもあると思われる。ムージルは反ユダヤ主義を全否定していたが,政治については「態度表明しない」姿勢を貫いた。これは「精神」にのみ従い,党利党略などを離れて,単独者として判断するためであった。
著者
早坂 七緒 STRUTZ Josef CSAKY Eva-marie EHRLICH Ulrike MARECEK Zdenek SVITAK Zdenek IMHOOF Stefan
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

旧ハプスブルク帝国の諸地域にまたがるローベルト・ムージル(1880年~1942 年)の足跡をたどり、作品との関連および作品解釈の新しい可能性を発見した。成果は学術図書"Robert Musil und der genius loci" (Wilhelm Fink 社)として発表し、多大の反響を得た。その後も論文「補遺1」「補遺2」として成果を公表している。