著者
早坂 貴代史
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.992-999, 1986
被引用文献数
1 1

互に認知しないいくつかのグループからなる群における個体間関係を行動の同時性,個体間距離という両側面から明らかにしそれにかかわる要因を統計的に確認した.供試牛群は経歴の異なる3つのグループ,すなわち黒毛和種雌成牛6頭(J-Aグループ),ホルスタイン種雌育成牛4頭(H-B),同2頭(H-C)からなり,2haの牧区に11日間一諸に放牧した.調査はうち4日間,日中5分間隔で,牧区内の個体の位置および行動を記録した.行動の同時性および個体間距離を測定し,クラスター分析によりそれぞれのデンドログラムを作成した.<br>その結果,同経歴グループの個体間は,行動の同時性を示す一致係数が平均68.7%,個体間距離が平均28.4m,一方異経歴グループの個体間ではそれぞれ60%,41.8mであり,各個体は他のグループより同経歴グループの個体,特にそのなかの年齢の近い個体と密接なきずなをもつ傾向にあった.またH-Cグループが同品種のH-BグループよりJ-Aグループときずなが強かったこと,さらにJ-Aグループの最若齢個体がH-Cグループと密接なきずなをもったことが明らかにされた.<br>以上から,品種,経歴,年齢,所属するグループの大きさといった諸要因が複雑に絡みあって,個体間関係に影響を及ぼしているものと推察された。
著者
早坂 貴代史 宮谷内 留行 宮本 進 荒井 輝男 鷹取 雅仁 田中 慧 佐々木 久仁雄 三浦 祐輔
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.65-72, 1990-03-16 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

舎内気温の違いによる採食・反芻行動の変化を検討するために、夏と冬の各5日間、北海道東部の生産的実験牧場において泌乳前期の牛6頭の行動を肉眼観察した。乾物あたり可消化養分総量を73〜74%、粗蛋白質を14〜16%、粗飼料率を55%に調整した混合飼料をおよそ1日4〜5回にわけて個別給餌し、以下の結果を得た。 1)舎内気温と同相対湿度は、夏が25.0℃、83%、冬は6.3℃、75%であった。 2)乾物摂取量は、夏が22.5kg、冬が24.8kgであった。 3)日採食時間は夏が262分、冬が343分であり、夏は給餌刺激にもとづく採食時間が日採食時間の79%を占めたのに対し、冬は53%であった。 4)日反芻時間は夏が476分、冬が485分であった。以上から、夏の採食時間の減少ならびに給餌したときの集中的な採食行動を高温環境によるものと仮定し、高温時における代謝産物の生成の変化、体熱産生量の抑制反応、および飼槽内飼料の経時的な劣化にその違いの根拠を求めた。 家畜の管理、25(3) : 65-72.1990.1990年1月12日受理