著者
柏村 文郎 山本 正信
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-83, 1985-10-15 (Released:2017-10-03)

牛にはどのような鳴き方があるかを調べ, 分類することができれば, 牛の健康状態や欲求を知るなど管理面で有効に利用できる可能性があると考え, 牛の鳴声の分類を試みた。さらに, 比較的安価な音声分析の方法として, 1/3バンドパスフィルタユットを接続した騒音計による周波数分析とマイコンによるサウンドスペクトログラフの利用について検討した。年齢により5グループに分けたホルスタイン種雌牛25頭から合計489の鳴声を録音した。鳴声の録音は, FMワイヤレスマイクを牛の頭絡に装着し, ラジオカセットレコーダを用いて20分間行なった。成牛および育成牛は1頭のみ群がら隔離した状態で, 哺乳子牛はカーフハッチにおいて朝の哺乳直前に録音を行なった。鳴声の分類について, 成牛と育成牛の鳴声はMM, MOO, MOHの3つの型に, 哺乳子牛はMMとMOの2っの型に分類した。これは, ひと鳴きが単調ではなく, 強さや周波数が連続的に変化することに基づいた分類である。MMはうなり声に近く, 口はほとんど開けず, 声は弱い(頭絡上で82±4.6dB)。長さは1.5±0.4秒で, 基本周波数は80〜100Hzと考えられた。MOOはMMと違い, 後半口が開いており, 強さは94±6.7dBでMMとMOHの中間であった。MOHは群から隔離された今回の実験状況下の牛では一番多く観察された鳴声で(78%), 遠くの群にとどくよう声は強く(102±4.9dB), 長さも長いものが多かった(1.7±0.4秒)。この型は, 後半に強い声を出すため横隔膜を収縮させる動作を伴う。M・O・Hと分割して考えると各音節の強さ, 長さ, 高さなどが多種多様であったが, さらに細かい分類はしなかった。哺乳子牛のMMとMOの強さはそれぞれ77±3.5,98±6.8dB, 長さは1.1±0.5,1.4±0.3秒であった。MMの基本周波数は100〜160Hzで, 成牛や育成牛とはかなり声の質は異なっていた。MOHやMOなど周波数が時間とともに連続的に変化する鳴声は, 騒音計による周波数分析のみでは細かい特徴をとらえ難かった。その点, マイコンによるサウンドスペクトログラフを使用すると, 鳴声の細かい特徴をとらえるのに有効なことが分った。
著者
萬田 正治 山本 幸子 黒肥 地一郎 渡辺 昭三
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.55-60, 1993-11-10 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

牛の視力を牛の学習能力を利用した動物行動学的手法により検討した。そのため二叉迷路型の学習装置を用い、供試牛の前方左右に視力パネルとしてのランドルト環(正刺激)と同寸法の円(負刺激)を提示した。さらに配合飼料を視力パネルの後方に置き、供試牛が正刺激のランドルト環を選択した場合のみ、配合飼料が摂食できるよう学習訓練した。視力パネルの左右交換は乱数表によりランダムに行い、1セッション20試行とし、適合度の検定により、正反応率が80%以上に達した場合、供試牛はその学習試験を完了したとし、その供試ランドルト環を識別できたと判定した。ランドルト環は0.01のものから0.02刻みにその大きさを変えていき、識別できた最も小さいランドルト環の値をその供試牛の視力値とした。供試牛には鹿児島大学農学部付属農場入来牧場生産の成牛5頭を用いた。1号牛はランドルト環の0.08、2号牛は0.04、3号牛は0.07、4号牛は0.08、5号牛は0.07までそれぞれ識別することができた。したがって供試牛5頭の視力値はランドルト環図形ではおよそ0.04〜0.08の範囲を示し、人間に比べて視力が極めて弱いことが示唆された。日本家畜管理研究会誌、29(2) : 55-60.1993.1993年5月31日受理
著者
柴田 正貴 向居 彰夫 武田 功 荒 智 相井 孝充
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.48-57, 1982-08-28 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

夏期の高温が乳量および乳成分率に及ぼす影響と牛舎冷房の効果を明らかにするために, 延べ20頭の泌乳牛を用いて1974年から3年間にわたり3回の試験を行った。その結果, 次のような知見を得た。1)日中の最高気温が30℃を越える7月後半から8月後半におけて, 放飼群(N群)の体温は39.5℃を, また呼吸数は85回/分を越えた。しかし, 冷房群(A群)では常に体温は38.6℃程度, 呼吸数は40回/分前後であり, 牛舎冷房による効果が認められた。2)体重にあたり乾物摂取量は, 試験IではN群の方が多く, 試験IIでは両群間に著差が認められなかった。N群の摂取量は運動場における測定であるためやや過大に評価される傾向にあったものの, 飼料摂取量に明らかな冷房効果が認められなかったことは, 舎飼いによる長時間の係留・拘束の影響も無視できないものと思われた。3)N群の乳量減少率は, 試験I, IIにおいて7月後半には20%を越え, 9月に至っても回復を示さなかった。6月後半から9月前半の間における減少率では年次間に差が認められたものの, 通常の夏であれば17〜20%を示すことが明らかにされ, また, この時期に泌乳最盛期をむかえるような高乳量のものでは更に大幅な減少を示すことが推察された。4)乳脂率などの乳成分率も6月後半から8月前半にかけて低い値を示す傾向にあり, 特にSNF率では「乳等省令」で定められた規格を下回る値を示しており, 乳成分生産の面でも夏期の高温が悪影響を及ぼしていることが示唆された。5)牛舎冷房によって日中の牛舎内温度を24℃以下に保った場合は, 夏期の高温に起因する乳量減少を防止しうることが明らかになった。
著者
吉川 昭雄
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.106-113, 1981

頭絡は, 従来, 牛・馬の頭部保定具として, 誘導・調教・保定などの諸作業に広くもちいられてきたが, 今日ではその利用が衰退しつつある。本報告は, 各種牛頭絡について, 構成・作製技法などを示したうえで, 作製上の難易性や様式の特徴, あるいは結びの技法, 用途などについて検討し, 類型化を試みたものである。これらのことから, 各種牛頭絡それぞれの特徴と位置づけなどをあきらかにし, 今後の研究・改良に供するものである。
著者
早坂 貴代史 宮谷内 留行 宮本 進 荒井 輝男 鷹取 雅仁 田中 慧 佐々木 久仁雄 三浦 祐輔
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.65-72, 1990-03-16 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

舎内気温の違いによる採食・反芻行動の変化を検討するために、夏と冬の各5日間、北海道東部の生産的実験牧場において泌乳前期の牛6頭の行動を肉眼観察した。乾物あたり可消化養分総量を73〜74%、粗蛋白質を14〜16%、粗飼料率を55%に調整した混合飼料をおよそ1日4〜5回にわけて個別給餌し、以下の結果を得た。 1)舎内気温と同相対湿度は、夏が25.0℃、83%、冬は6.3℃、75%であった。 2)乾物摂取量は、夏が22.5kg、冬が24.8kgであった。 3)日採食時間は夏が262分、冬が343分であり、夏は給餌刺激にもとづく採食時間が日採食時間の79%を占めたのに対し、冬は53%であった。 4)日反芻時間は夏が476分、冬が485分であった。以上から、夏の採食時間の減少ならびに給餌したときの集中的な採食行動を高温環境によるものと仮定し、高温時における代謝産物の生成の変化、体熱産生量の抑制反応、および飼槽内飼料の経時的な劣化にその違いの根拠を求めた。 家畜の管理、25(3) : 65-72.1990.1990年1月12日受理
著者
伊藤 敏男 隅田 真代 山本 禎紀
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.73-80, 1990-03-16 (Released:2017-10-03)

メン羊の行動変化に伴う熱産生量(HP)の変動を明らかにするために、4頭の去勢羊を用いて、起立(S)、横臥(L)、起立反芻(SR)および横臥反芻(LR)に対応するHPを、ヘイキューブ、生草および配合飼料を給与したチャンバー内ストール飼育条件下で求めた。同時に、心拍数(HR)の測定を行い、HPとHRと行動の相互関係について考慮し、以下の結果を得た。1)メン羊の行動変化に伴いHPとHRは大きく増加し、HPのレベルは、L&lglt;S&lglt;LR&lglt;SRの順となり、HRもほぼ同様の傾向であった。2)反芻に伴うHPの増加量は、横臥および起立時の場合とも、3kJ/kg^<0.75>・h前後であった。起立時と横臥時のHPの差は、非反芻時1.7kJ、反芻時1.3kJ/kg^<0.75&lg;・hであり、この値は、採食前あるいは後においても、給与飼料を変えた場合でもほぼ同じであった。3)HPとHRの相関図に行動を加味して検討すると、例えば反芻行動時においては、HRの増加の割にHPの増加が大きく、反芻時と非反芻時ではHRとHPの変化割合が異なる可能性を示した。 家畜の管理、25(3) : 73-80.1990.1990年1月9日受理