- 著者
-
早瀬 善彦
- 出版者
- 日本公共政策学会
- 雑誌
- 公共政策研究 (ISSN:21865868)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.124-135, 2011-12-10 (Released:2019-06-08)
- 参考文献数
- 46
小論は,ネオコン第一世代とよばれる人々が醸成してきた一連の政策や思想体系について,以下の論点を基に考察することを目的とする。はじめに,“ネオコンサーヴァティヴ”(neo-conservative)という言葉の由来をふり返り,彼らの思想がアメリカの思想的系譜のなかでどう位置づけられるのかという問題を確認するが,ここでは,とりわけ,アメリ力の伝統的保守派との思想的相違に着目しながら議論を進めたい。次に,ネオコンの代表的論客であるアーヴィング・クリストルなどの整理に従いつつ,「信念」(persuasion)としてのネオコンの定義を再確認し,その歴史的歩みについてふれる。なお,彼らの歴史を追っていく上で重要な鍵となるのは,左派的なニューヨーク知識人の集団として歩み始めた彼らが,どのような時代背景や事件をきっかけに,保守的立場へと転向したかという点である。続いて,彼らが展開した一連の国内政策の要点を確認し,その現代的意義について論じる。その過程で,彼らの政策を形づくる思想的背景にも踏み込んでいきたい。最後に,ネオコン第一世代がアメリカの外交というものにたいし,どう向き合ってきたかという問題を考察する。その際,第二世代のネオコンが進める外交政策との共通点を探っていくことで,世代に関係なく,ネオコンを貫く思想や政策的指針の正体を最終的に明らかにしていきたい。