著者
早瀬 善彦
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 = Human and Environmental Studies (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
no.21, pp.175-190, 2012-12-20

政治哲学者レオ・シュトラウスの提示した論点は数多いが, なかでも, もっとも重要なテーマの一つが披のレジームをめぐる議論である. シュトラウスによれば英語の「レジーム」という言葉の語源はギリシャ語の「ポリテイアJにあるが, このポリテイアとは, 本来いかなる法律よりも一層根本的なものであり, また社会に性格を与える秩序であると同時に, その形態でもあった. 小論の日的は, こうしたレジームという観念がもっ原理の重要性を考察することである. はじめにレジームと社会の関係から, 善き生き方とレジームの関係をみつつ, レジームの起源が人為的力にあることを明らかにする.次に, 善きレジームの形成の問題についてシュトラウスの『国家』解釈を通し明らかにしていく. そして, 最後に, 哲学者がレジームを越えていくという論点を提示し哲学と政治社会の関係はどうあるべきかという問題に一定の結論を提示する.
著者
早瀬 善彦
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.124-135, 2011-12-10 (Released:2019-06-08)
参考文献数
46

小論は,ネオコン第一世代とよばれる人々が醸成してきた一連の政策や思想体系について,以下の論点を基に考察することを目的とする。はじめに,“ネオコンサーヴァティヴ”(neo-conservative)という言葉の由来をふり返り,彼らの思想がアメリカの思想的系譜のなかでどう位置づけられるのかという問題を確認するが,ここでは,とりわけ,アメリ力の伝統的保守派との思想的相違に着目しながら議論を進めたい。次に,ネオコンの代表的論客であるアーヴィング・クリストルなどの整理に従いつつ,「信念」(persuasion)としてのネオコンの定義を再確認し,その歴史的歩みについてふれる。なお,彼らの歴史を追っていく上で重要な鍵となるのは,左派的なニューヨーク知識人の集団として歩み始めた彼らが,どのような時代背景や事件をきっかけに,保守的立場へと転向したかという点である。続いて,彼らが展開した一連の国内政策の要点を確認し,その現代的意義について論じる。その過程で,彼らの政策を形づくる思想的背景にも踏み込んでいきたい。最後に,ネオコン第一世代がアメリカの外交というものにたいし,どう向き合ってきたかという問題を考察する。その際,第二世代のネオコンが進める外交政策との共通点を探っていくことで,世代に関係なく,ネオコンを貫く思想や政策的指針の正体を最終的に明らかにしていきたい。