著者
金田 義宏 岡 基 旭 興正
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.68-76, 1969-09-30 (Released:2008-05-15)
参考文献数
12

1964年6月から1965年8月の間,青森県集約酪農地域内で乳牛飼養頭数の比較的多い8市町村において,400戸の農家を対象として3回にわたって成雌牛延3,520頭の繁殖状況を調査して次の成績が得られた。1.妊否の割合は各調査時ともほぼ同率でとくに差異は認められなかった。2.病的空胎牛は510頭(14.5%)で,この内訳は卵巣疾患が166頭(32.6%),卵巣と子宮疾患の合併症が168頭(32.9%)で最も多く,ついで子宮疾患が119頭(23.3%),低受胎が25頭(4.9%),その他31頭(6.3%)であった。3.卵巣疾患の主体は鈍性~微弱発情および卵胞発育障害で,その他に持続性発情,卵巣嚢腫,黄体形成不全,卵巣卵管癒着,永久黄体が少数みられた。4.子宮疾患の主体は子宮内膜炎で,その他に子宮下垂,子宮粘液症,頸管炎,子宮発育不全,子宮膿瘍がみられた。5.腟疾患では尿腟が多く,その他に腟炎が少数みられた。6.経産牛では鈍性~微弱発情,卵胞発育障害あるいはこれに子宮内膜炎を併有する合併症が多く,未経産牛では子宮内膜炎,低受胎,卵巣発育不全が多くみられた。7.子宮疾患,卵巣•子宮•腟疾患の合併症,腟疾患および低受胎と診断されたもののうち,1年以内に回復受胎したものは39.1%(52/133頭)であり,卵巣疾患および卵巣•子宮疾患の合併症における65.4%(138/211頭)と比較して低率を示していた。8.調査期間中に受胎した1,076頭のうち授精3回以内で受胎したものは,未経産,経産牛ともに90%内外を示していたが,空胎期間がかなり長いものが経産牛において多く認められた。9.空胎期間は分娩月によってかなりの差がみられ,4~6月および11~12月分娩牛はその他の月の分娩牛に比べて長い傾向がみられた。10.調査期間中に売却された乳牛421頭のうち繁殖障害および不妊の理由によるものが124頭(29.5%)でかなり高率を示していた。11.繁殖成績は地区により著しく異なり,病的空胎率はとくに開拓農家において高率であった。