著者
星野 信也
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.1, pp.229-250, 2004-05-31 (Released:2012-09-24)
参考文献数
23

わが国の社会保障制度は,第1に,国民皆保険制皮を日標に,載削,載甲に成立していた年金保険と医療保険を全国に普及する形で形成されたから,年金,医療とも低負担・低福祉の地域保険と中負担・中福祉の職域保険に分立して成立した.第2に,給付水準のヨーロッパ水準への引き上げを目標に,地域保険に不公正に国庫負担金を投入することで給付水準のみ地域と職域の格差縮小が図られ,象徴的には一時期老人医療費無料化が行われた.こうした地域保険の低負担・準中福祉・高福祉化は,産業構造の変化で自営業層が減少したこと,医療保険の場合,定年退職すると職域保険から地域保険に移り地域保険の高齢者医療費負担を増大させる構造問題があることから,年金,医療の両者で地域保険を破綻の危機に直面させた.それに対応した改革は,医療保険では,原則70歳以上について地域保険と職域保険を統合し,年金保険では地域保険を全成人に拡大し,それぞれ「どんぶり勘定化」する改良に終わった.さらに介護保険制度でも改善されなかった医療保険で職域保険の給付水準が地域保険並みに引き下げられ,職域年金給付水準も引き下げのターゲットとなっている.こうした小刻みな改革の連続は制度への信頼感喪失を招きかねない.筆者は,イギリス,スエーデンの例にならって,選別的普遍主義に基づいて社会保障制度を抜本的に一元化し,保険料による制度と税による制度を整理再編することを提言する.
著者
星野 信也
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-31, 1990-10-31