- 著者
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春日 耕夫
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, pp.183-193, 1971-10-15
(A)・(D)・(G)を例にとって、PTAと地域の関連について述べてきた。最後に要約すると次のように言うことができる。農村土着型の(A)地域は部落が強力に統合された集団として存在し、地域全体としては、かなりな同質性を示すとともに、以前の独立の村としてのまとまりをもち、校区区長会によって調整されている。そこにおいては、部落長である区長および、部落のPTA担当委員ともいうべき部落選出の運営委員がPTAの重要な役割を果しているように、PTAは独立して存在せず、部落からの構造的分化が不完全な状態で存在する。PTAは部落組織の一部となっているのである。都市土着型の(D)地域では、町内会連合を中核として、地域内の各種の団体が、校区連合自治会の中に組織されている。そのために、たとえば校区婦人会は、いわば連合自治会の婦人会部門という位置と性格を与えられる。同じように、PTAも連合自治会の中にフォーマルに組み入れられ、連合自治会の一部門をなさしめられている。それと同時に、PTAは地域内のインフォーマルな社会関係によってもとりまかれており、それが糊のような役割を果して、PTAと地域・連合自治会との関係を強化している。 都市流動型の(G)地域では、地域の流動的性格、更には団地と団地以外の部分の間の対立・葛藤の存在によって、町内会も団地自治会も地域全体の統合に貢献することができず、ひいては、地域全体を代表する機関が欠如するという状態が作り出されている。そのような条件の下において、PTAは自ら地域内の各部分間の均衡を自律的に維持するような構造を持たなければならないという課題を与えられている。その課題に対するひとつの解決が、(G) PTAにおける地域分会である。(G)PTAが、そのような形で地域内の各部分間の均衡を自律的に維持する構造をもってPTAの役割を遂行していく過程において、逆にPTAが地域全体に対して、統合的機能を副次的に持ってくる。つまり、土着型地域では校区区長会あるいは連合自治会というような住民組織が果していた役割を流動型地域ではPTAが果しているのである。いいかえると、都市・農村を問わず土着型地域では校区区長会・校区連合自治会という、地縁的結合による組織が強く存在し、それによって地域の統合が果されている。その場合、PTAのようなアソシェーションも独立して存在するのではなく、それらの組織の一部として位置づけられる傾向がある。それに対して、流動型の地域では、地域全体を統合する組織はできにくく、それに代ってPTAが地域統合の媒体になっているのである。なお本稿の関心にとっては中心的なものではないが、同じ「都市」といっても、土着型の地域と流動型の地域とでは、全然異った性格をもっていることが明らかである。前者は、むしろ農村土着型地域と共通する性格をもつ面が多く、その意味で、農村と都市の差異よりは、土着型としての類似性が強くあらわされているといえる。