著者
曽田 公輔
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ベトナムの家禽群における鳥インフルエンザウイルスの流行を制御するために、流行ウイルスの家禽に対する病原性を評価する必要がある。本年度は前年度までに検証したウイルス株に加え、複数のベトナムの家禽由来のH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)およびH6,9亜型の鳥インフルエンザウイルスのアヒルに対する病原性を検討した。さらに研究実施者の所属機関である鳥取大学における2017-18シーズンの国内の鳥インフルエンザ確定診断において分離されたH5亜型ウイルスについても同様の解析を行った。近年東アジア地域ではclade2.3.4.4に属するH5N6亜型ウイルスが家禽に浸潤しているが、その走りであるDuck/Vietnam/LBM751/2014株を接種したアヒルは6-8日目に死亡した。直近に日本国内で分離されたMute swan/Shimane/3211A001/2017を接種したアヒルは半数が接種後2週間生残した。一方でclade2.3.4.4 HPAIVの祖先にあたるclade2.3.4 HPAIVであるDuck/Vietnam/G12/2008 (H5N1)を接種したアヒルは2-3日で全羽死亡した。前年度の成績も合わせると、H5亜型HPAIVのアヒルに対する病原性は現在にいたるまで次第に減弱してきていることが示された。ベトナムで分離されたH6およびH9亜型の鳥インフルエンザウイルスを接種したアヒルは、ウイルス排出が認められた一方、2週間生残した。最終年度は上記の単独のウイルス接種試験の結果を基に、H5亜型HPAIVおよび鳥インフルエンザウイルスがアヒルに共感染した場合、すなわちベトナムの家禽で実際に起こっているウイルス感染状況をモデル化し、今後の防疫に有用な情報を得る予定である。
著者
中村 進一 花田 郁実 水主川 剛賢 村上 翔輝 曽田 公輔 岡谷 友三アレシャンドレ 常盤 俊大
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.25-30, 2017

<p> 動物園や水族館で飼育動物が死亡した際,多くの施設では動物を剖検して必要な検体を採材・保存し,自施設で検査を実施,または外部の検査機関に検体を送付している。疾病診断や死因究明のためには様々な検査結果を総合的に判断する必要があるが,それは正しいサンプリング方法をとることが大前提となる。検体の採取,保存,輸送にあたっては,適切な方法で実施されなければ期待される検査結果が得られないことが多い。検査目的に合わせて適切な採材方法を選択することは,早期かつ正確な診断につながり,後に続く飼育個体の死亡を防ぐことができる。迅速で正しい診断を得ることは,飼育管理を円滑に行ううえでも不可欠である。検査が無駄とならないようにするためには,検査を依頼する側と実施する側双方の実情を知ることが重要であり,日頃からコミュニケーションを図る必要がある。</p>