著者
横山 咲 由利 かほる 森田 祥司 上野 真菜 河端 美玖 雨宮 あや乃 中村 進一 服部 浩之 頼 泰樹
出版者
根研究学会
雑誌
根の研究 (ISSN:09192182)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.35-41, 2018 (Released:2018-06-26)
参考文献数
11

作物は無機態窒素だけではなく遊離アミノ酸を吸収し,窒素源として利用している可能性がある.しかし,植物の窒素吸収における根のアミノ酸吸収能の寄与は明らかにされていない.我々はまず土壌のアミノ酸動態を明らかにするために,アミノ酸混合液および3種類の有機質肥料を施用し,アミノ酸濃度の変化を経時的に追跡した.アミノ酸混合液の添加ではいずれのアミノ酸も12時間以内に10%以下に分解された.また,有機質肥料の添加では,添加直後のアミノ酸の濃度は最も高く,3日程度で大幅に低下したが,30日目まで高い濃度が維持された.アミノ酸組成は,有機質肥料添加直後には添加した有機物ごとに異なっていたが,時間の経過とともにいずれの有機物の添加でもGln,Arg,Lys,Thr,Glu,Asn,Alaが高い割合で検出されるようになった.これらは土壌微生物の細胞壁の主な構成アミノ酸であり,微生物バイオマスの代謝回転によって,比較的早期 (3日以降) から土壌に供給されることが明らかとなった.有機質肥料添加土壌のアミノ酸は2時間以内の半減期で分解されており,土壌のアミノ酸存在量の約15~20倍のアミノ酸が1日に供給されることが示唆された.植物のアミノ酸吸収能は高いことがすでに示されており,本研究の有機質肥料添加による土壌のアミノ酸濃度・供給量は植物根が利用可能なレベルであると考えられた.
著者
森井 和彦 福永 智栄 多田 俊史 中村 進一郎
出版者
一般社団法人 日本病院総合診療医学会
雑誌
日本病院総合診療医学会雑誌 (ISSN:21858136)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.214-222, 2023-05-31 (Released:2023-10-19)

がんの治療方針は staging や performance status に基づいて決定されることが多いが,高齢者の場合は平均余命が短く,複数の併存疾患や加齢による脆弱性を認めることがあるため, 高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment;CGA)を行わないで治療を始めるのは危険である。高齢者の脆弱性は日常的診療では拾い上げが不完全であり,CGAでの評価が望ましい。多忙な日常診療ではまず G8 Screening tool で脆弱性の疑われる高齢者をスクリーニングして,該当者に CGA を行うのが効率的である。CGAでは検証されたツールを用いて,instrumental activities of daily living(IADL),併存疾患,転倒,栄養状態,化学療法の毒性の予測,がん以外の要因による平均余命, 薬剤関連の問題,認知障害,うつ病,社会的支援システムの不足などを評価する。近年使用頻度が増えている免疫チェックポイント阻害剤の 有益性・有害性の予測にもCGAが有効かどうかは,今後の課題である。
著者
中村 進一 花田 郁実 水主川 剛賢 村上 翔輝 曽田 公輔 岡谷 友三アレシャンドレ 常盤 俊大
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.25-30, 2017

<p> 動物園や水族館で飼育動物が死亡した際,多くの施設では動物を剖検して必要な検体を採材・保存し,自施設で検査を実施,または外部の検査機関に検体を送付している。疾病診断や死因究明のためには様々な検査結果を総合的に判断する必要があるが,それは正しいサンプリング方法をとることが大前提となる。検体の採取,保存,輸送にあたっては,適切な方法で実施されなければ期待される検査結果が得られないことが多い。検査目的に合わせて適切な採材方法を選択することは,早期かつ正確な診断につながり,後に続く飼育個体の死亡を防ぐことができる。迅速で正しい診断を得ることは,飼育管理を円滑に行ううえでも不可欠である。検査が無駄とならないようにするためには,検査を依頼する側と実施する側双方の実情を知ることが重要であり,日頃からコミュニケーションを図る必要がある。</p>
著者
白羽 英則 小橋 春彦 大西 秀樹 中村 進一郎 山本 和秀 小林 功幸
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Des-gamma carboxy prothrombin (DCP)は、血管内皮細胞のKDRに作用し、細胞移動能(2.2倍)、細胞増殖能(1.5倍)を亢進させた。これら効果はKDR阻害剤により消失した。肝癌細胞のシークエンス解析からexon2の脱落したΔ2-gamma-glutamyl carboxylase(GGCX)を同定し、クローニングした。肝癌細胞においてΔ2-GGCX発現はDCP産生細胞(69%)において非産生細胞(8%)と比較して優位に高く、本来DCP非産生細胞であるHLE, SK-Hep-1は、Δ2-GGCX遺伝子導入によりDCP産生機能を持つようになった。これらの結果より肝癌におけるΔ2-GGCXの発現は、DCP産生の一因であることが解明された。Δ2-GGCX導入Hep3Bは、parental Hep3Bに対して約10倍のDCPを産生し、逆にWT-GGCX導入Hep3Bは、DCPの産生が消失した。それぞれの細胞を、ヌードマウス皮下に接種し8週間飼育した。Δ2-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積632mm^3)においては、WT-GGCX遺伝子導入細胞(腫瘍体積153mm^3)と比較して4.2倍と大きな腫瘍をヌードマウス皮下に形成し、血管新生も多く認められた。HCC患者組織(手術標本)でもDCP産生、血管新生の検討を行った。免疫組織染色の検討では、DCP発現と血管新生を示すCD31発現の相関が認められた。また、造影CTで評価したHCCのvascularityと、血清DCPの値にも相関が認められた。これらの結果より、DCPは臨床検体においても血管新生と密接な関連を持つことが判明した。
著者
中山 恵二 三神 寛 濱松 優 青木 雅子 西 原潔 中村 進一
出版者
The Japanese Skin Cancer Society
雑誌
Skin Cancer (ISSN:09153535)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.297-299, 1991
被引用文献数
1

75歳女性の腹部に発生したエックリン汗管癌の1例を報告した。数年前より毎年暑くなると腹部に紅斑が出現。涼しくなると, 軽快することを繰返していた。初診時, 腹部に27×36mmの中心に潰瘍を形成する楕円形の結節を認めた。病理組織学的所見: 腫瘍細胞は表皮直下から一部脂肪織にかけて充実性に増殖しており, 細胞の大小不同, 核の異型性など悪性像を示し, 小管腔構造を伴って小胞巣を形成しながら増生していた。