著者
清川 博史 清木 元治 伊東 文生 安田 宏 及川 律子 石井 俊哉 山本 博幸 月川 賢 大坪 毅人 峰岸 知子 越川 直彦
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.139-150, 2015

<b>【背景】</b>大腸癌の診断および術後管理において腫瘍マーカーの臨床的意義は大きい。ラミニン<i>γ</i>2単鎖(Ln-<i>γ</i>2)の発現は様々な腫瘍浸潤先進部において著しく亢進することが報告されており,これはLn-<i>γ</i>2が浸潤性の腫瘍マーカーとして有用である可能性を強く示唆している。我々は,Ln-<i>γ</i>2を選択的に認識するモノクローナル抗体を用いてLn-<i>γ</i>2の定量ELISA法を開発した。<br/><b>【方法】</b>定量ELISA法により78症例(健常者51例,良性疾患8例,大腸癌19例)における血清中のLn-<i>γ</i>2の定量を行った。同時に,化学発光免疫測定法 (chemiluminescent immunoassay: CLIA) を用いてCarcinoembryonic antigen (CEA) とCarbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) を測定し診断能について比較検討を行った。<br/><b>【結果】</b>Ln-<i>γ</i>2の中央値は,健常者241.9 pg/mL,良性疾患138.8 pg/mLであり,一方大腸癌においては323.0 pg/mLと非癌症例より有意に高値であった(<i>p</i> = 0.0134)。大腸癌症例と非癌症例とを区別するLn-<i>γ</i>2のカットオフ値を315.8 pg/mLとすると大腸癌症例の57.9%に陽性であった。Ln-<i>γ</i>2とCEA併用における大腸癌陽性率は78.9%であり,CEAとCA19-9併用での陽性率57.9%よりも高率であった。大腸癌の各病期における陽性率では,いずれのマーカーにおいても進行期は高率であったが,CEA,CA19-9におけるStage I/IIの陽性率は低率であった。一方,Ln-<i>γ</i>2はStage I/IIにおいて陽性率50.0%とより高率であった。<br/><b>【結語】</b>血清Ln-<i>γ</i>2は大腸癌診断において既存の腫瘍マーカーを補助可能なバイオマーカーとなる可能性がある。
著者
小林 慎二郎 瀬上 航平 三浦 和裕 四万村 司 櫻井 丈 小泉 哲 牧角 良二 月川 賢 宮島 伸宜 大坪 毅人
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.595-598, 2011-05-31 (Released:2011-07-12)
参考文献数
21
被引用文献数
5

膿瘍形成性虫垂炎に対する緊急手術では拡大手術移行の可能性や合併症発生率が高い。当院では2008年から膿瘍形成性虫垂炎に対して保存的治療で膿瘍を沈静化させ手術希望があれば約3ヵ月後に虫垂切除を行うinterval appendectomy(以下,IA)を行っている。膿瘍形成性虫垂炎32例について検討した。32例中29例(91%)が平均17.2日の入院期間で保存的治療に成功した。29例のうち,手術希望のあった16例に対してIAを施行した。16例のうち14例(87.5%)が腹腔鏡下虫垂切除術を完遂した。手術症例16例における平均手術時間は96分で,手術時平均入院期間は9.4日であった。また手術症例において合併症の発生は1例も認めなかった。総入院日数が長いことが課題であるが,拡大手術移行が少なく,合併症もない本治療方針は膿瘍形成性虫垂炎に対して有効であると考えられた。
著者
西尾 乾司 小林 慎二郎 櫻井 丈 牧角 良二 月川 賢 大坪 毅人
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.593-597, 2010 (Released:2011-08-25)
参考文献数
11

症例は77歳,男性.既往歴に鼠径ヘルニアで手術歴があった.腹痛を主訴に当院の消化器内科を受診し,イレウスの診断で入院となった.入院後イレウス管を挿入され腸管の減圧状態は良好であったが,イレウス管挿入から5日目に突然の腹痛が出現した.CT検査を施行したところイレウス管の先進部を中心とした小腸に同心円状の多層構造が認められ,小腸内に腸間膜脂肪および腸管が巻き込まれていた.腸重積と診断し,陥入腸管の循環障害が疑われたため手術を施行した.口側腸管が肛門側腸管に順行性に約100cmの長さにわたって陥入していた.また重積部位から1m以上肛門側小腸に策状物による内ヘルニアが生じており,これがイレウスの原因と考えられた.イレウス管が原因となった腸重積症のこれまでの本邦報告例を集計し,文献的考察を加えて報告する.