著者
山田 典栄 四柳 宏 小板橋 優 長瀬 良彦 奥瀬 千晃 安田 清美 鈴木 通博 小池 和彦 飯野 四郎 伊東 文生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.553-559, 2008 (Released:2009-01-09)
参考文献数
11
被引用文献数
18 19 5

首都圏のB型急性肝炎のウイルス学的及び臨床的解析をgenotype Aを中心に行った.Genotype Aの割合は1994年から1997年では31.8%,1998年から2001年では35.3%,2002年から2005年では41.5%であったのに対し,2006年から2008年では73.0%と急増していた.Genotype Aの感染経路として同性間,不特定異性との性交渉のみならず,特定の日本人パートナーとの異性間性交渉を通じて広がり始めていることが示唆された.Genotype A症例の1例が慢性肝炎へ移行し,肝炎が遷延した2例に対し,Entecavirの投与が行われた.また,genotype A症例の14.3%にHIV合併感染を認めた.a determinant regionのアミノ酸配列の解析を行ったところ,genotype Aの1例では,分離されたウイルスクローンのすべてに,免疫グロブリンによる感染防御からエスケープすることが報告されているアミノ酸変異(G145A)が認められた.Genotype Aを中心としたB型肝炎ウイルスの伝播を防止するために,一般市民に対する啓蒙,genotype A HBVキャリアの実態把握,universal vaccinationの検討など公衆衛生面での対応を急ぐ必要がある.
著者
近江 亮介 安田 宏 伊東 文生 清川 博史 松本 伸行 奥瀬 千晃 中川 将利 吉田 栄作 吉村 徹 清木 元治 越川 直彦
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.125-133, 2019

<p>【<b>背景</b>】血清ラミニンγ2単鎖(Ln-γ2m)測定は臨床的に有用な肝細胞癌(HCC)診断の新規腫瘍マーカーとなる可能性がある。Ln-γ2mがHCCの治療効果判定の指標となるかは明らかでない。そこで肝動脈化学塞栓療法(TACE)前後の血清Ln-γ2m値を測定し,治療効果判定への有用性を検討した。<br/>【<b>方法</b>】2013年1月から2018年2月までに加療したHCC症例28例(男性:19例,女性:9例,平均年齢値:70歳)を対象とした。TACE後1週間〜1ヶ月(中央値7日:4〜25日)に施行された造影computed tomography(CT)画像を用いて,modified RECIST criteriaによりその治療効果を評価した。また,TACE術前と術後7日の血清のLn-γ2m値を化学発光免疫測定法(Chemiluminescent immunoassay: CLIA)で測定し,CT画像による治療効果との比較を行った。<br/>【<b>結果</b>】CT画像による治療効果判定は著効(Complete response:CR)5例,有効(Partial response:PR)11例,不変(Stable disease:SD)5例,進行(Progressiveon disease:PD)7例であった。治療有効例であるCR群とPR群では,CR 3/5例(60%),PR 4/11例(36%)でTACE後に血清Ln-γ2m値が有意に低下した。PR 7/11例(64%)でTACE後に血清Ln-γ2m値が上昇し,CT画像においても3ヶ月以内に腫瘍の増悪が認められた。治療無効群であるSD群とPD群では,SD 5/5例(100%)とPD 6/7例(86%)において,TACE後に血清Ln-γ2m値の有意な上昇を認めた。<br/>【<b>結語</b>】血清Ln-γ2mは,HCCにおけるTACE術後のCT画像による治療効果判定を補完する新たな指標分子となりうる可能性をもつ。</p>
著者
中原 一有 片倉 芳樹 奥瀬 千晃 足立 清太郎 中津 智子 高木 麗 伊東 文生
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-112, 2011 (Released:2011-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

要旨:症例は62歳,63歳,72歳の男性.原疾患は胆管結石2例,慢性膵炎1例といずれも良性疾患の正常胃症例で,ERCP時にスコープによる十二指腸穿孔をきたした.穿孔部位は下行脚が2例,上十二指腸角が1例で,穿孔方向は後腹膜が2例,腹腔内が1例であった.原因はいずれもスコープのストレッチ操作によるものであった.術者はいずれもERCP経験が40件未満であった.2例は穿孔後早期に腹部症状の増悪と腹膜刺激症状の出現を認め外科手術を要したが,後腹膜穿孔の1例は腹部症状が軽微で保存的加療のみで改善した.なお全例軽快退院した.ERCP時のスコープのストレッチ操作で十二指腸穿孔を来す恐れがあり,特に腹腔内穿孔や腹部症状が増悪傾向を示す場合は早急な外科手術による対応を要する.一方,身体所見や血液検査の炎症所見に乏しい後腹膜穿孔では保存的加療のみで改善が得られる場合がある.
著者
清川 博史 清木 元治 伊東 文生 安田 宏 及川 律子 石井 俊哉 山本 博幸 月川 賢 大坪 毅人 峰岸 知子 越川 直彦
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.139-150, 2015

<b>【背景】</b>大腸癌の診断および術後管理において腫瘍マーカーの臨床的意義は大きい。ラミニン<i>γ</i>2単鎖(Ln-<i>γ</i>2)の発現は様々な腫瘍浸潤先進部において著しく亢進することが報告されており,これはLn-<i>γ</i>2が浸潤性の腫瘍マーカーとして有用である可能性を強く示唆している。我々は,Ln-<i>γ</i>2を選択的に認識するモノクローナル抗体を用いてLn-<i>γ</i>2の定量ELISA法を開発した。<br/><b>【方法】</b>定量ELISA法により78症例(健常者51例,良性疾患8例,大腸癌19例)における血清中のLn-<i>γ</i>2の定量を行った。同時に,化学発光免疫測定法 (chemiluminescent immunoassay: CLIA) を用いてCarcinoembryonic antigen (CEA) とCarbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) を測定し診断能について比較検討を行った。<br/><b>【結果】</b>Ln-<i>γ</i>2の中央値は,健常者241.9 pg/mL,良性疾患138.8 pg/mLであり,一方大腸癌においては323.0 pg/mLと非癌症例より有意に高値であった(<i>p</i> = 0.0134)。大腸癌症例と非癌症例とを区別するLn-<i>γ</i>2のカットオフ値を315.8 pg/mLとすると大腸癌症例の57.9%に陽性であった。Ln-<i>γ</i>2とCEA併用における大腸癌陽性率は78.9%であり,CEAとCA19-9併用での陽性率57.9%よりも高率であった。大腸癌の各病期における陽性率では,いずれのマーカーにおいても進行期は高率であったが,CEA,CA19-9におけるStage I/IIの陽性率は低率であった。一方,Ln-<i>γ</i>2はStage I/IIにおいて陽性率50.0%とより高率であった。<br/><b>【結語】</b>血清Ln-<i>γ</i>2は大腸癌診断において既存の腫瘍マーカーを補助可能なバイオマーカーとなる可能性がある。
著者
重福 隆太 松永 光太郎 田村 知大 小澤 俊一郎 松尾 康正 高橋 秀明 松本 伸行 奥瀬 千晃 鈴木 通博 伊東 文生
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.263-272, 2016-02-05 (Released:2016-02-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

今回,口腔内常在菌であるStreptococcus intermediusによる化膿性肝膿瘍を経験し,その感染経路の検索で早期胃癌を診断した.胃低酸状態ではStreptococcusを中心とした胃細菌叢が形成され,さらに糖尿病,高齢など粘膜免疫低下を呈する病態が存在する場合,上部消化管疾患が細菌の侵入経路となる可能性があり十分に留意すべきである.