著者
有薗 信一 小川 智也 渡辺 文子 寶門 玲美 西村 正士
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.289-295, 2006-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

肺葉切除術後患者における理学療法の介入頻度の違いによる効果を無作為化比較対照試験によって検討した。研究の同意を得た肺癌患者63例を手術に先立って無作為に2群に割り振った。通常の看護ケアに,理学療法士による理学療法介入を1日1回行う群を1回群とし,理学療法介入を1日3回行う群を3回群とした。当院の理学療法は,排痰,早期離床,呼吸練習などを中心に行い,手術当日から介入した。手術後1週間毎日の肺活量,酸素投与期間,歩行開始日,歩行自立日,手術後呼吸器合併症の有無を評価した。肺葉切除術を実施した症例は51例であり,1回群27例,3回群24例であった。手術後1週間毎日の肺活量,酸素投与期間,歩行開始日,歩行自立日は1回群と3回群の間に差を認めなかった。また,手術後呼吸器合併症は,1回群に膿胸1例,遷延性肺瘻1例,無気肺1例,肺炎1例の計4例であり,3回群には呼吸器合併症を認めず,2群間で有意な差を認めた。肺葉切除術後患者における多頻度の理学療法介入は,手術後呼吸器合併症を減少させるかもしれない。
著者
深谷 孝紀 有薗 信一 小川 智也 渡邉 文子 平澤 純 三嶋 卓也 古川 拓朗 谷口 博之 近藤 康博 田平 一行
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 間質性肺炎患者(IP)の運動耐容能と労作時低酸素血症は、予後予測因子である。また、経皮的酸素飽和度(SpO2)や骨格筋機能が運動耐容能に関連があると報告されている。しかし、IP患者における運動中の骨格筋の酸素消費とSpO2の関連については明らかになっていない。そこで、本研究の目的はIP患者における漸増運動負荷時の外側広筋の骨格筋酸素消費の指標と運動中のSpO2の変化の関連性を検討することである。【方法】 対象は全身状態の安定したIP患者、男性20名(平均年齢:65.9±9.7歳、%VC:94.3±19.8%、%DLCO:67.0±21.9%)とした。自転車エルゴメータを使用し心肺運動負荷試験(CPX)を実施した。CPXは0Wで3分間のwarm upを行った後、10watt/分のramp負荷で症候限界性に実施した。CPX中にSpO2をパルスオキシメータにて測定し、同時に近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を使用し、外側広筋の組織酸素飽和度(tissue oxygen saturation:StO2)を測定し、骨格筋での酸素消費の指標(SpO2-StO2)を算出した。安静時と最大負荷時のSpO2とStO2を測定し、それぞれ最大負荷時の値から安静時の値を減算したΔSpO2とΔStO2を算出した。安静時と最大負荷時の間でSpO2, StO2, SpO2-StO2の比較と、ΔSpO2とΔStO2の比較を対応のあるt検定を用いて検討した。SpO2とSpO2-StO2の関係をピアソンの相関分析を用いて検討した。【結果】 SpO2は安静時の95.8±1.8%に比べ、最大負荷時は88.7±6.0%に有意に低下した(p<0.05)。StO2は安静時の55.9±5.3%に比べ、最大負荷時は53.0±7.3%に有意に低下した(p<0.05)。安静時と最大負荷時の差であるΔSpO2は-7.1±5.5%であり、ΔStO2は-2.9±4.7%であり、ΔSpO2の方がΔStO2に比べ有意に高値を示した(p<0.05)。安静時のSpO2-StO2は39.8±4.7%で、最大負荷時のSpO2-StO2は35.9±9.7%と両者では差を認めなかった。SpO2とSpO2-StO2の関係では最大負荷時で相関関係を認め(r=0.676, p<0.05)、安静時では相関関係を認めなかった。【考察】 StO2は安静時より最大運動時の方が低値を示したが、低下量はSpO2より小さかった。運動時に肺での酸素を取り込む能力が低下しても、骨格筋での酸素を抜き取る能力が補おうとしたと考えられた。骨格筋での酸素消費を表すSpO2-StO2と最大負荷時のSpO2との間に正の相関関係を認めた。これは運動終了時の労作時低酸素血症の程度が、骨格筋の酸素消費に影響することが示唆された。