著者
渡邊 立子 甲斐 健師 服部 佑哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.525-530, 2017-11-15 (Released:2017-11-15)
参考文献数
9

放射線による生物影響のメカニズムの解明には,モデルやシミュレーションを用いた研究は重要な役割を持つ。特に,メカニズムに関する仮定や生体の異なるレベルで得られた実験データの間の関係を評価するためにはシミュレーションは有効な手段である。本稿では,DNAと細胞への放射線影響のシミュレーションによる研究の概要について述べる。この中で,DNA損傷生成に関わる物理化学過程の詳細を推定する理論的アプローチと,DNA損傷と細胞応答のダイナミクスを推定する数理モデルも紹介する。
著者
横谷 明徳 渡辺 立子 秋光 信佳 岡 壽崇 鵜飼 正敏 福永 久典 藤井 健太郎 服部 佑哉 野口 実穂 泉 雄大 Hervé du Penhoat Marie-Anne
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

X線照射したEGFPプラスミドを“非照射”の細胞導入し、ライブセル観察によりEGFP蛍光の発現速度の低下から難修復性のクラスターDNA損傷が生じていることを示した。また軟X線を照射しながら水和デオキシリボース(dR)からの脱離イオンを測定し、水分子が分子の激しい分解を抑制すること、またその理由がdRから配位水への高速のプロトン移動によることを分子動力学計算により示した。さらに放射線トラックエンドで生じる多数の低速2次電子は、発生位置から数nm以上離れたところに塩基損傷を誘発し、修復過程を経てDNAの2本鎖切断に変換され得るクラスター損傷を生成することを示した。