著者
奥川 喜永 大井 正貴 北嶋 貴仁 志村 匡信 大北 喜基 望木 郁代 横江 毅 問山 裕二
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.55-58, 2021-04-15 (Released:2022-05-15)
参考文献数
22

第四のがん治療として免疫チェックポイント阻害剤が登場し,腫瘍を直接的に標的とせず,腫瘍宿主相互反応を利用した治療の有用性があきらかとなり,周術期を含むがん治療においても,あらためて宿主の状態を改善する集学的治療の重要性が再注目を集めている.特に超高齢化社会を迎える本邦において,今後の消化器外科手術における周術期管理には,手術を受ける宿主の状態そのものの改善を目的とした漢方薬の有用性が周術期管理向上への一助として期待される.漢方薬は数千年の歴史を持つが,最近では特に消化器領域の漢方薬研究が非常に進捗し,生物学的機序が徐々に解明されている.さまざまな漢方薬がある中でも,特に六君子湯はその臨床的有用性とその作用機序も含め,もっともエビデンスが豊富な漢方薬のひとつといえる.本稿では,六君子湯の周術期管理における有用性を,これまでの報告をもとに紹介する.
著者
川島 一晃 芳賀 康朗 望木 郁代
出版者
皇學館大学文学部 ; 2009-
雑誌
皇學館大学紀要 = Bulletin of Kogakkan University (ISSN:18836984)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.92-72, 2017-03

心理学を専攻することに決めた初学者がどのような学習上の課題を体験し、どのような学びを得ているかについての質的な検討はあまりなされてこなかった。本研究の目的は、学生が経験する学習上の課題とプロセス、そして取り組みから得られるメリットについて探索的に検討し、示唆を得ることであった。心理学を専攻している学生5 名を対象に、卒業研究に対する取り組みについて半構造化面接を実施した。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析し、最終的に10 のカテゴリーと13 の概念が得られた。< 興味・関心> から出発した卒業研究の取り組みは、< 自分で調べる>作業を経て、< 第一のつまづき[知識不足]> を経験する。< 知識の整理の工夫> に勤めながら< 心理学概念につなげる> ことに成功すると進展するが、次に< 第二のつまづき[停滞]> を経験する。< 思考の整理の工夫> を繰り返し、自身のテーマと向き合う中で< 研究の方向性の定着> に至り、< 研究の楽しさの発見> を経験するという、学生の取り組みのプロセスモデルが得られた。 Qualitative consideration about challenges and outcomes on what kind of learning is given to beginners who have decided to major in psychology has not been examined enough. The purpose of the present study was to consider the merit and the challenges of the learning experiences, and the process of beginners’graduation study. Semi-structured interviews about the learning experience were conducted with five participants.That material was analyzed with a modified grounded theory approach (M-GTA), which resulted in 10 categories and 13 concepts. Beginners started to study from their “interests”, and “searched the materials”, but they experienced “their first failure [the lack of their knowledge].” The“Acquisition of knowledge” helps to “connect their interests to psychological constructs” which enables them to advance their studies.However“ the second failure[delay]” brings trials and errors to beginners to “settle the direction of the study.”Settling the direction enables beginners to discover “ the taste of their study.”
著者
望木 郁代 桑畑 綾香 白石 泰三 堀 浩樹
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.355-363, 2015-09-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的 : 医学教育における有効な倫理教育を検討するために, 医学部医学科学生の生命倫理観・死生観を評価した.方法 : 医学科第1, 2, 4, 6学年学生, 他学部第1学年学生を対象として質問紙調査を実施した.結果 : 医学科学生と他学部学生との比較では, 入学間もない時点で, 生命倫理「安楽死」「ヒトクローン」, 死生観「死への恐怖・不安」「人生における目的意識」「死への関心」への態度に差が認められた. 医学科学生では, 生命倫理「着床前・出生前診断」「遺伝子診断」「生殖補助医療」, 死生観「人生における目的意識」への態度に学年間で差が認められた.結語 : 医学科学生の生命倫理観・死生観は, 大学入学時すでに他学部と差があり, 学年ともに変化している. 医学科学生の特性をふまえての有効な倫理教育プログラムの構築が, 今後望まれる.