著者
高橋 繁男 栂村 恭子 中神 弘嗣 大槻 和夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.341-348, 2004-10-15 (Released:2017-07-07)
参考文献数
15

代謝エネルギー(ME)システムに基づく,日乳量と体重変化を予測するモデルを作成した。このモデルが必要とするデータは,分娩時体重,日当たり乾物採食量および飼料のTDN(あるいはME)濃度である。主要な仮定は,BRUCEらが提案した潜在的な乳生産量と増体量であるが,エネルギー供給が十分では無い場合,その不足分の乳と体への分配をある一定の比率によるとした。本モデルを,高泌乳牛で得られた成績に適用したところ,乳量と体重の変化傾向をほぼ再現した。しかし,ある場合には乳量が過大に,他の場合には体重が過大に計算された。補助飼料給与がある放牧条件では,モデルの計算結果は乳量で良く一致したが,体重の観測でみられた大きな変動を再現しなかった。モデルの結果と実測値の相違は,飼料構成にかかわらずTDNをMEに換算する変換値と飼料の総エネルギーを一定にしたこと,生体重に占める消化管内容物の大きな変動,乳と体蓄積へのエネルギー分配などが複合的に影響しているものと考えられた。
著者
吉田 裕久 大槻 和夫 植山 俊宏 三浦 和尚 位藤 紀美子 山元 隆春 牧戸 章 吉田 裕久
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、3年間にわたって、説明的文章・文学作品・文章表現・音声表現の四つの領域班に分かれて、それぞれ予備調査・本研究を実施しつつ「国語能力の発達」に関する実証的な研究を進め、国語科教育改善への糸口を見出そうとした。本研究で得られた各領域班の研究から導かれた知見を一言で集約することはむずかしい。が、得られた成果を仮に集約してみると、次のようなことを言うことができる。1音声表現領域班が追究した対話能力の研究なかでの、「共同案」を組替えながら話し合いを行っていくことのできる力と、文学作品領域班の調査で得られた小・中学生の「続き物語」のなかに見られた、参加者的スタンスと観察者的スタンスをバランスよく選択していくことのできる力は、どこかでつながりあっているのではないだろうか。これは、文集表現領域班における調査結果についてもあてはまることである。さらに、説明的文章領域班の考察のなかで明らかになった、小学校6年以降の「メタ認知能力」の伸長の問題とも、これはリンクすると言えるのではないだろうか。2.対象や他者に同化・一体化していくということが可能になるかどうかというところに、少なくとも学童期初期の国語能力の発達の「峠」のようなものがあるように思われる。その同化・一体化が果たされた後、再び自己はことばを媒介としながら対象や他者とは異なる、自らの内部の何かを捉えることになる。それを意識しうるか否か、表現しうるか否か、ということがその次の「峠」なり「節目」なりになる。3.このような営みのなかで、その主体が関心を差し向ける「焦点」は移り動き、関心の幅と深さのようなものが、少しずつ少しずつその域を広げていくのではないか。対象や他者に同化・一体化しようとしたときとは異なった意味で、対象や他者をより広いパースペクティヴで捉えることができ、それを理解したり、その理解のもようを報告できるかどうかということが、その次の「節目」となるように思われる。4.対象や他者の包括的な理解と平行して、自己の内部の拡張もおこなわれるはずである。対象や他者の認識が構造化され、さらに自己の内部で追い育った独自な世界を、対象や他者に匹敵するものとして構築することができるか否かということが、おそらくその次にくる発達上の問題である。5.この科研の各領域班の調査研究で、とくに小学校高学年から中学生にかけて観察された、発達上の<停滞>や<ゆるみ>とも解釈される事象は、子どもの内面に目をやれば、そのような内部での葛藤が営まれているものであると考えることもできる。詳細な研究成果は、平成9年度末にまとめた中間報告書に続き、平成11年度末に刊行する最終報告書『国語科教育改善のための国語能力の発達に関する実証的・実践的研究II』(A4版160頁)に集約した。
著者
大槻 和夫 山元 隆春 牧戸 章 植山 俊宏 位藤 紀美子 吉田 裕久
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本科研の最終年度である平成8年度は,本プロジェクトの集約をめざして、本調査およびその分析に取り組んだ。また,新たに国語能力全体の発達に関わる総合モデルが提出され,プロジェクト全体の研究仮説とするための理論的整備が進められた。これまで取り組んできた説明的文章班,文学作品班,文章表現班,音声表現班の4領域による本調査の計画・実施・分析を行った。その際,予備調査の結果を分析・考察した結果得られた研究仮説を整備し,本調査の調査仮説とした。それをもとに大規模・広域の本調査を計画し,実施した。本調査は,おおむね平成8年末から9年初頭という年度末に行われたため,現時点で集計・分析は継続中である。本年度の研究成果を大きくまとめると次の2点に集約される。1.前年度までの調査研究によって明らかになった各領域における国語能力の発達の諸特徴を,より多くのデータをもとに確かめることができた。2.予備調査・本調査を通じて,各領域班ごとに取り組んできた研究の成果を,「統合モデル」というというかたちで,仮説の域を出ないながらもまとめることができた。本調査についての精細な考察は今後を待たねばならないが,本調査設計時に設定した研究仮説との照合を中心に得られた研究成果を研究成果報告書にまとめている。また,一部の領域班では,集計・分析の所要時間の都合上,収集したデータ全体のうち一部分を取り上げて集計・分析し,その後全体に広げていく方法を採っている。