著者
野杁 由一郎 恵比須 繁之 薮根 敏晃 朝日 陽子 阿座上 弘行
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は,ヒトのデンタルバイオフィルムに対する化学的制御・抑制法の確立を最終的な目標して行われた。クオラムセンシング(QS)誘導物質であるオートインデューサーの1種であるアシルホモセリンラクトン(AHL)の類似化合物をターゲットにしたが, 10種のAHL類似化合物は検出限界(6. 32~7. 33ng/ ml)以上の濃度では検出されず,デンタルバイオフィルム中にはほとんど存在しないことが明らかとなった。一方, QSを撹乱し抗バイオフィルム作用を示していると推察されるAHL類似化合物や抗菌剤を発見し,これらによる化学的なバイオフィルム抑制法の臨床適用に向けた緒を築いた。この研究成果は,バイオフィルム感染症の新たな治療戦略の開発に有意義な示唆を与えるものであると自負している。
著者
山口 幹代 岡本 基岐 朝日 陽子 山田 朋美 伊藤 祥作 林 美加子 伊藤 勇紀 須崎 尚子 堅田 千裕 外園 真規 川西 雄三 増田 晃一 伊藤 善博 米田 直道
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.255-261, 2017

<p> 目的 : ニッケルチタン (NiTi) ファイルは弾性係数が小さいため, 湾曲根管への追従性に優れており, 根管治療において必要不可欠な器材となりつつある. 本研究では, 歯学部学生の臨床前基礎実習において, FKGレイス (FKG DENTAIRE, Switzerland) による湾曲根管形成実習を実施し, 習熟到達度を評価した.</p><p> 材料と方法 : 大阪大学歯学部3年生49名に対して, J型エポキシレジン製透明湾曲根管模型を用いてFKGレイスによる形成実習を2回行った. Kファイル#15にて根管長を測定後, プリレイスによる根管上部のフレアー形成とKファイル#15によるグライドパス形成を行った. 作業長は根管長から1mm引いた長さとし, レイス#30/6%, #30/4%, #25/4%, #20/4%を用いて根管形成を行った.</p><p> 形成前後の根管模型をマイクロCT (R_mCT2, RIGAKU) にて撮影し, 根管長軸方向に対して平行に根尖から1, 2, 3, 5, 7, 10mmの位置で内湾側および外湾側の根管幅径増加量を計測した. 根管幅径増加量および形成時間を学生1回目, 2回目, ならびに日本歯科保存学会専門医・認定医10名の結果と比較検討した.</p><p> 結果 : 学生1回目の根管形成においては, 28根管で根尖破壊, 1根管でファイル破折, 1根管で目詰まりを認めた. また, 学生2回目の根管形成においては, 5根管で根尖破壊, 1根管で目詰まりを認めた. 内湾側および外湾側の根管幅径増加量および形成時間は, 学生1回目, 2回目, ならびに専門医・認定医の間で統計学的有意差を認めなかった.</p><p> 結論 : NiTiファイルを用いた湾曲根管形成実習において, 根尖部の形成に特に注意を促すことにより, 習熟到達度が向上することが明らかとなった.</p>
著者
大嶋 淳 内藤 克昭 阿部 翔大郎 上村 怜央 高橋 雄介 伊藤 祥作 林 美加子 川西 雄三 岡 真太郎 山田 朋美 山口 幹代 朝日 陽子 外園 真規 鍵岡 琢実 渡邉 昌克
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.263-270, 2019

<p> 目的 : 弾性係数が小さく, 形状記憶性, 超弾性, ファイルテーパーの多様化といった特徴をもつニッケルチタン (NiTi) 製ロータリーファイルは, ステンレススチールファイルと比較して高い切削効率や作業時間の短縮, 優れた根管追従性を有し現在の歯科臨床においても頻繁に用いられるようになりつつある. 本研究では, 歯学部学生の臨床前基礎実習において, FKGレイス (FKG Dentaire, Switzerland) およびJ型, S型湾曲根管模型を用いた根管形成実習を実施し, 習熟到達度を評価した.</p><p> 材料と方法 : 大阪大学歯学部3年生56名に対して, J型およびS型エポキシレジン製透明湾曲根管模型を用いてFKGレイスによる形成実習を2回ずつ行った. Kファイル#15にて穿通し, 根管長を測定後, プリレイスによる根管上部のフレアー形成とKファイル#15によるグライドパス形成を行った. 作業長は根管長から1mm引いた長さとし, レイス#30/6%, #30/4%, #25/4%, #20/4%を順に用いて, 最終拡大号数を#30/6%として根管形成を行った.</p><p> 形成前後の根管模型をマイクロCT (R_mCT2, RIGAKU) にて撮影し, 根管長軸方向に対して根尖から垂直に1, 2, 3, 4, 5mmおよび6mmの位置で内湾側および外湾側の根管幅径増加量を計測した. その後, S型根管幅径増加量および形成時間について, 学生ならびに日本歯科保存学会専門医・認定医10名がおのおの2回実施した結果を比較した.</p><p> 結果 : J型根管1回目の根管形成では, 62.5%の学生が根尖破壊, 5.4%がレッジ形成を生じ, 成功率は32.1%だった. J型根管2回目では, 30.4%が根尖破壊, 3.6%がファイル破折, 3.6%がレッジ形成を生じたものの, 成功率は62.4%と改善した. S型根管1回目は23.2%が根尖破壊, 7.1%がファイル破折を生じた. S型根管2回目では7.1%がファイル破折を生じた. 根管形成に要した時間については, 学生のS型2回目の形成時間がS型1回目と比較し有意に短縮され, 専門医・認定医によるS型1回目, 2回目の形成時間と比較して有意差を認めないレベルまで改善した. 内湾側および外湾側の根管幅径増加量については, 学生1回目, 2回目, ならびに専門医・認定医の間で統計学的有意差を認めなかった.</p><p> 結論 : NiTiファイルを用いた湾曲根管形成実習において, 特に根尖部の形成に注意して実習回数を重ねることにより, 難易度の高いS型湾曲根管であっても迅速に, 正確に根管形成ができるようになり, 習熟到達度が向上することが明らかとなった.</p>