著者
敷島 千鶴 安藤 寿康 山形 伸二 尾崎 幸謙 高橋 雄介 野中 浩一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_105-2_126, 2008-11-30 (Released:2009-01-05)
参考文献数
45

観測された形質の分散を、「遺伝」「共有環境」「非共有環境」という3つの潜在変数の寄与に分割して推定させる行動遺伝学の方法論を用いて、権威主義的伝統主義の形成に関わる要因について検討した。4111名(12~26歳の男性双生児1279名、女性双生児1889名、および双生児の父親83名、母親860名)から権威主義的伝統主義尺度の回答を得た。一卵性双生児912組、二卵性双生児630組を対象とした双生児モデルによる分析は、権威主義的伝統主義の分散を遺伝33%、非共有環境67%で説明し、双生児親子モデルによる分析においても、結果は同等であった。これより、権威主義的伝統主義の家族内伝達を媒介するのは専ら遺伝であり、文化伝達ではないことが示された。権威主義の形成を親の養育、あるいはその家の社会背景によって説明するこれまでの理論には異議が唱えられる。遺伝を説明変数に含めた、より精緻な伝達モデルの有用性が提起される。
著者
高橋 雄介 山形 伸二 木島 伸彦 繁桝 算男 大野 裕 安藤 寿康
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.276-289, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
42
被引用文献数
53 60

本研究は,Grayの強化感受性理論 (Reinforcement Sensitivity Theory) に基づいた2つの気質次元,行動抑制系 (Behavioral Inhibition System) と行動賦活系 (Behavioral Activation System) について,日本語版尺度の信頼性・妥当性の検討(研究1),生物学的基盤との対応関係の検討(研究2)を行った。研究1では,大学生446名を対象に質問紙調査を行い,Carver & White (1994) が作成した尺度の日本語版の信頼性を確認した。また,因子的妥当性,構成概念妥当性の検討を行い,十分な結果を得た。研究2では,慶應義塾双生児プロジェクトによって集められた双生児を対象に質問紙調査を実施し,293組から有効な回答を得た。行動遺伝学的解析の結果,BISとBASは遺伝要因によって部分的に説明され,お互いに独立な遺伝因子から寄与を受けていることが分かった。
著者
高橋 雄介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.38-56, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
103
被引用文献数
6

本稿の目的は, 2014年7月から2015年6月までの間に発表・報告された人格(パーソナリティ)特性をはじめとする個人差変数が取り扱われた研究について概観し, その動向と課題についてまとめたうえで, 今後の展望や展開を論じることである。ジェームズ・ヘックマンの研究以来, パーソナリティ特性(非認知能力)の発達及び教育的介入の可能性に関する研究に焦点が当たっている。本稿では, まずBig Fiveとそれに並ぶ個人差変数(知能や自尊感情など), そして自己制御とそれに類する心理学的構成概念(衝動性や満足の遅延など)に関する研究について, 次に, パーソナリティ特性や個人差変数と身体的・精神的・社会的健康との関連に関する研究について概観して, それらの成果をまとめた。最後に, 「あ・い・う・え・お」に準える形で(あ : Anchoring vignettes, い : Interactions, う : Unique relationships, え : Environmental Effects, お : Other reports), 5つの観点から今後のパーソナリティ特性研究の展望と展開を考察し, 3つの視座から課題と期待を論じた。
著者
市村 賢士郎 河村 悠太 高橋 雄介 楠見 孝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.55-64, 2018-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
40

本研究の目的は,ラーニングコモンズの物理的環境が利用者の創造性に与える影響を検討することであった.具体的には,48名の大学生を対象に,創造性課題と作業課題をラーニングコモンズと自習スペースの2つの学習環境で実施し,それらの環境によって課題成績に差がみられるかどうかを検討した.あわせて,それぞれの学習環境の用途や期待される学習効果に関する情報を提示する影響とラーニングコモンズの利用経験の影響を検討した.その結果,ラーニングコモンズでは,その利用経験がある群において創造性課題の成績がより高いことが示された.また,学習環境に関する情報を提示することによって,いずれの学習環境においても作業課題の成績が低下することが示された.以上の結果を踏まえて,ラーニングコモンズの物理的環境の効果やその他の要因も含めた適切な学習環境の設計や運用について考察し,自律的・協調的な学びを効果的に行うための示唆を得た.
著者
高橋 雄介 山形 伸二 星野 崇宏
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.63-76, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
119
被引用文献数
4 4

Research has shown that personality traits have strong predictive validity for economic variables (e.g., income, work attainment) and epidemiological variables (e.g., longevity, physical health), as well as for psychological variables such as problem behaviors, and mental disorders. Importantly, personality traits are predictive even after controlling for socioeconomic status and cognitive abilities. The authors believe that current personality research in Japan almost completely overlooks this perspective. In this article, the authors review these new trends in personality psychological research. They propose a model for research involving A (accurate assessments), B (big samples), C (controlling for covariates and confounders), D (developmental trajectories), and E (economic and epidemiological variables). They outline three future directions to embody personality psychology for prediction, prevention, public wealth, and population health.
著者
高橋 雄介 山形 伸二 木島 伸彦 繁桝 算男 大野 裕 安藤 寿康
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.276-289, 2007-03-31
被引用文献数
60

本研究は,Grayの強化感受性理論(Reinforcement Sensitivity Theory)に基づいた2つの気質次元,行動抑制系(Behavioral Inhibition System)と行動賦活系(Behavioral Activation System)について,日本語版尺度の信頼性・妥当性の検討(研究1),生物学的基盤との対応関係の検討(研究2)を行った。研究1では,大学生446名を対象に質問紙調査を行い,Carver & White(1994)が作成した尺度の日本語版の信頼性を確認した。また,因子的妥当性,構成概念妥当性の検討を行い,十分な結果を得た。研究2では,慶應義塾双生児プロジェクトによって集められた双生児を対象に質問紙調査を実施し,293組から有効な回答を得た。行動遺伝学的解析の結果,BISとBASは遺伝要因によって部分的に説明され,お互いに独立な遺伝因子から寄与を受けていることが分かった。
著者
大嶋 淳 内藤 克昭 阿部 翔大郎 上村 怜央 高橋 雄介 伊藤 祥作 林 美加子 川西 雄三 岡 真太郎 山田 朋美 山口 幹代 朝日 陽子 外園 真規 鍵岡 琢実 渡邉 昌克
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.263-270, 2019

<p> 目的 : 弾性係数が小さく, 形状記憶性, 超弾性, ファイルテーパーの多様化といった特徴をもつニッケルチタン (NiTi) 製ロータリーファイルは, ステンレススチールファイルと比較して高い切削効率や作業時間の短縮, 優れた根管追従性を有し現在の歯科臨床においても頻繁に用いられるようになりつつある. 本研究では, 歯学部学生の臨床前基礎実習において, FKGレイス (FKG Dentaire, Switzerland) およびJ型, S型湾曲根管模型を用いた根管形成実習を実施し, 習熟到達度を評価した.</p><p> 材料と方法 : 大阪大学歯学部3年生56名に対して, J型およびS型エポキシレジン製透明湾曲根管模型を用いてFKGレイスによる形成実習を2回ずつ行った. Kファイル#15にて穿通し, 根管長を測定後, プリレイスによる根管上部のフレアー形成とKファイル#15によるグライドパス形成を行った. 作業長は根管長から1mm引いた長さとし, レイス#30/6%, #30/4%, #25/4%, #20/4%を順に用いて, 最終拡大号数を#30/6%として根管形成を行った.</p><p> 形成前後の根管模型をマイクロCT (R_mCT2, RIGAKU) にて撮影し, 根管長軸方向に対して根尖から垂直に1, 2, 3, 4, 5mmおよび6mmの位置で内湾側および外湾側の根管幅径増加量を計測した. その後, S型根管幅径増加量および形成時間について, 学生ならびに日本歯科保存学会専門医・認定医10名がおのおの2回実施した結果を比較した.</p><p> 結果 : J型根管1回目の根管形成では, 62.5%の学生が根尖破壊, 5.4%がレッジ形成を生じ, 成功率は32.1%だった. J型根管2回目では, 30.4%が根尖破壊, 3.6%がファイル破折, 3.6%がレッジ形成を生じたものの, 成功率は62.4%と改善した. S型根管1回目は23.2%が根尖破壊, 7.1%がファイル破折を生じた. S型根管2回目では7.1%がファイル破折を生じた. 根管形成に要した時間については, 学生のS型2回目の形成時間がS型1回目と比較し有意に短縮され, 専門医・認定医によるS型1回目, 2回目の形成時間と比較して有意差を認めないレベルまで改善した. 内湾側および外湾側の根管幅径増加量については, 学生1回目, 2回目, ならびに専門医・認定医の間で統計学的有意差を認めなかった.</p><p> 結論 : NiTiファイルを用いた湾曲根管形成実習において, 特に根尖部の形成に注意して実習回数を重ねることにより, 難易度の高いS型湾曲根管であっても迅速に, 正確に根管形成ができるようになり, 習熟到達度が向上することが明らかとなった.</p>
著者
高橋 雄介 三橋 秀男 村田 一仁 則枝 真 渡邊 克巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.1048-1055, 2012-04-01
被引用文献数
1

他人とコミュニケーションするときや,動物や虫と接するとき,我々はそれらの存在に対して生物らしさを感じることがある.生物らしさに関する従来の研究では,非生物である視覚図形の相互作用的な動きに対して,あたかも生き物のような社会性や意図性を感じるという高次認知過程が示されている(アニマシー知覚).これに対し本研究では,心理物理学手法を用いた実験研究により,無意味な感覚刺激に対して触覚,視覚,聴覚で感じる低次の生物らしさについて検討した.周期的に変化する無意味な感覚刺激を0.5Hzから100Hzまでの様々な周波数で呈示し,被験者は刺激について感じる生物らしさの強さを評価した.その結果,全ての感覚に共通の傾向として,2Hz程度までの低周波刺激の方が高周波刺激に比べて強い生物性が感じられることが明らかとなった.ただし周波数依存性の詳細なパターンを検討した結果,特に触覚では刺激される身体部位により周波数依存性が異なること,視覚,聴覚における生物性では,視聴覚間の統合や相互作用が生じていることなどが示された.以上の結果から,ヒトは無意味な感覚刺激に対してでも周波数依存的に生物らしさを感じており,特に低周波刺激で強い生物性が生じることが示唆された.ヒトが感じる生物らしさには社会性や意図性を反映した高次認知に加え,刺激の統計構造を処理するような低次知覚過程も関与していると考えられる.
著者
高橋 雄介
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究は,パーソナリティ特性と身体的・精神的・社会的健康の関連性の全体像を把握するための新たな知見の蓄積のために,健康に関わるさまざまな指標を複数のサンプルに対して用いて調査データを取得し,パーソナリティ特性と健康の相互関連について包括的に紐解いていくことを主たる目的とする。本研究の結果,パーソナリティ特性の変化は健康および健康に関連する行動の変化と正に相関することが確認され,これはパーソナリティ特性の変容が健康に対して影響に与えていることを示唆している。また,別の研究結果は,パーソナリティ特性が,その個人が子どものころに受けた養育態度と身体的な健康感の正の関連を媒介していること,そして,その媒介効果は年齢層を通じて一貫していて持続力があることを明らかにした。このことは,養育態度はパーソナリティ特性の発達と健康増進のために介入可能性のあるターゲットのひとつであることを示唆している。