- 著者
-
小野 史典
木本 茉莉奈
- 出版者
- 日本認知心理学会
- 雑誌
- 日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
- 巻号頁・発行日
- pp.26, 2016 (Released:2016-10-17)
我々は自分の心の中の思いなどが相手に見透かされてしまっているのではないかと思ってしまうことがある。こうした自分の内的状態が相手に漏れているかのように考えてしまう現象は透明性の錯覚と言われている。本研究では,5杯の飲み物(4杯は同じ味だが1杯は異なる味)を準備し,行為者はなるべく無表情で飲み物を飲み(行為者セッション),観察者はその様子が録画されたビデオを見て,異なる味の飲み物を推測した(観察者セッション)。さらに,行為者は観察者の正答率を推測した。実験の結果,観察者の実際の正答率に比較して,行為者の推測した正答率が高くなった(透明性の錯覚)。また,別の参加者に対して,あらかじめ正答を教え,ビデオを見た後に観察者の正答率を推測してもらったところ,観察者の実際の正答率よりも高くなった。この結果は,行為者の内的状態を知っていること自体が透明性の錯覚において重要な要因になることを示唆している。