著者
喜入 暁 越智 啓太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.145, 2016 (Released:2016-10-17)

サイコパシーは,冷淡な感情や他者操作性などを主軸とする1次性サイコパシー(primary psychopathy: PP)と,衝動性や反社会性を主軸とする2次性サイコパシー(secondary psychopathy: SP)からなるパーソナリティ概念の1つである。特に,PPは反社会性パーソナリティ障害と決定的に異なる点であり,したがって,PPがサイコパシーを特徴づける側面であることが指摘されている。本研究では,サイコパシーが他者を道具的に捉え扱う傾向(PP)が,女性に対しての女性蔑視傾向として示されるかどうかを検討した。分析の結果,男性参加者において女性蔑視傾向とPPとの正の関連が示された(SPとは有意な関連は示されなかった)。一方で,女性参加者の場合にこの関連は示されなかった。まとめると,男性のサイコパシーは,女性は道具的に支配するものであるという信念を持つことが示唆された。
著者
伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.140, 2016 (Released:2016-10-17)

外見や社会的地位だけでなく名前そのものが対人評価に影響することがある。例えば,名前の魅力や流暢性の高さが付加価値となり,社会的な評価場面において好意的な印象が形成される。本研究では,名前の奇抜さが見た目の社会性,特にリーダーシップ性に及ぼす影響を検証した。具体的に,名前の奇抜さ(奇抜な名前・一般的な名前)と元々の見た目のリーダーシップ性の程度(低群・中群・高群)を実験要因として,被験者は呈示される若年者の顔画像と名前から見た目のリーダーシップ性の程度を評価した。その結果,元々の見た目のリーダーシップ性の程度に関わらず,一般的な名前に比べて奇抜な名前が呈示されたとき,リーダーシップ性は低く評価された。またこの効果は,高齢者の顔画像が呈示されたとき強く生じた。これらの結果は,近年のいわゆるキラキラネームは社会性評価において付加価値とならず,外見に関わらず非好意的な印象を生むことを反映している。
著者
本元 小百合 菅村 玄二
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.5, 2016 (Released:2016-10-17)

肉は男性性と関連があるとされ,肉を見ると女性は男性の顔を高く評価することが分かっている。本研究では,肉を見ると同性の顔を魅力的だと知覚しやすくなるかどうかを検証した。参加者73名(男性32名,女性41名)がランダムに肉群,野菜群に分けられ,(a)何もしない場合,(b)肉もしくは野菜を見た後,(c)肉もしくは野菜を食べた後で他者の顔の魅力度を評定した。その結果,男性は肉もしくは野菜を見た後(p=.017,r=.50)と食べた後(p=.049,r=.41)で,肉群の方が野菜群に比べて,男性の顔の魅力を高く評価した。女性では,肉と野菜の両方を見たときに,女性の顔の魅力を最も高く評価した(ps<.026,.54<r<.81)。結果から,男性は肉を見たり食べたりすることで興奮し,それが同性の顔の魅力に帰属されたと考えられる。一方,女性は食物を見ることで獲得欲求が喚起され,同性の顔を好ましいと評価したと解釈される。
著者
中尾 啓太 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2016 (Released:2016-10-17)

それまで経験したことがないにも関わらず,以前どこかで経験したことがあると感じた際の,鮮明な感覚の体験をデジャヴ (deja vu) という(Brown, 2004)。デジャヴ発生には新規刺激の形態 (Brown & Marsh, 2010) や,情報量 (Cleary et al., 2012) が影響することが報告されている。これまで情報量の操作には静止画 (二次元と三次元) が用いられていることから,本研究では,研究1として動画を用いて情報量の操作を行い,さらに研究2として情報の質 (文脈) に着目してデジャヴの発生要因に関する検討を行った。 検討の結果,先行する記憶に情報量が少なく (研究1),先行記憶と目の前の刺激に共通する文脈情報がある (研究2) ことによりデジャヴ感覚の発生が促進されることが示された。
著者
岡村 靖人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.2, 2016 (Released:2016-10-17)

これまで嗅覚や味覚への直接的な刺激によってもたらされた空腹感と利他的行動との間には負の相関関係があることが明らかにされている。本研究では、空腹感を喚起させるプライム刺激として食べ物の想起課題を課し、その後の利他的行動への影響について検討した。実験では、大学生63名を空腹感喚起の強弱により、強刺激としてラーメンを用いる群、弱刺激としてプリンを用いる群、空腹感を喚起させる想起課題を行わない統制群の3群に分け、各刺激の特徴を詳細に記述するという課題を課した。その後、参加者に無報酬の実験参加を依頼した。その実験に何分間協力してもよいかを8件法で尋ね、利他的行動の指標とした。その結果、プリン群(M=2.43)とラーメン群(M=1.48)、統制群(M=2.48)とラーメン群との間にそれぞれ有意な差が認められた。以上により、食べ物の想起をするだけでも直接的な刺激呈示の場合と同様に利他的行動を抑制する効果があることが示された。
著者
大北 葉子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.13, 2016 (Released:2016-10-17)

非漢字圏日本語学習者を対象に漢字正誤判断試験時の眼球運動、正答率、反応時間、空書行動の有無の関係を調べた。漢字一字ずつがパソコンモニターに表示され、被験者が正誤判断するまで刺激漢字はモニター上に表示された。刺激は、曖昧漢字、偽漢字、ハングル文字、部首倒置漢字、真漢字の5種類だった。曖昧漢字は日本語学習者の書き間違いを基にしていて、図形的にわずかな誤りのある字形である。偽漢字は部首と旁の組み合わせが存在しないもので、部首倒置漢字は部首と旁の位置を反転させている。ハングル文字と真漢字以外の正答率は個人差が大きかった。偽漢字と部首倒置漢字の回答率不良者は注視点数が少なく、眼球移動距離が短い、反応時間が短く、刺激間での注視点数、眼球移動距離、反応時間にあまり差がなく、空書がなかった。成績不良者は字形分析が不十分である可能性がある。空書は字形知識の内在化の指標になると考えられる。
著者
宮本 大輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2016 (Released:2016-10-17)

近年、コンピュータシステムではなくコンピュータを利用するエンドユーザを対象としたサイバー脅威が報告されている。とりわけ、金融機関などに似せて作られたウェブサイトを用いてユーザを騙すなどの攻撃の被害は増加している。従来、サイバーセキュリティ分野ではユーザが偽サイトを見分けるためのサポートが研究課題であり、教材の開発やインタフェースの改善、検知して知らせるソフトウェアといった対策が行われている。ここで、サイバー脅威に対するエンドユーザの思考を、コンピュータシステムがエンドユーザから観測される情報から推測できると考える。我々は被験者を集めて実験を行い、ウェブサイトの真贋判定を行う際の眼球運動から被験者がどのような意思決定を行うかを予想する研究を行った。この先行研究を紹介するとともに、認知心理学の知見をサイバーセキュリティ分野に応用できるかを議論する。
著者
濱田 明日也 金城 光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.103, 2016 (Released:2016-10-17)

Johansson R, Holsanova, Dewhurst, & Holmqvist,(2012)は、記憶の検索時の視線を制限することが記憶成績に影響することを示した。具体的には、画面の中心に表示される注視点に視線を向けながら課題を進める(center条件)より、何も表示されていない画面に視線を向けながら課題を進める(free条件)ほうが課題成績が良かった。 しかしながら、その他の記憶検索時の視線の役割に関する研究では、課題の正確さにおいてだけ差がみられる研究(Laeng,Teodorescu,2002)や、課題の反応時間だけ差がみられる研究(Johansson R,Johansson M,2014)があげられ、結果の指標に一貫性がないことが問題点としてあげられる。 そこで、本研究では、記憶検索時の視線の制限がどの指標に影響を及ぼすのかを再検討することを目的とした。 結果、center条件よりもfree条件のほうが課題の成績が高く、視線の制限の効果がみられた。反応時間については2条件で差はみられなかった。本研究により、記憶の検索の正確さに視線が影響している可能性が示唆された。
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2016 (Released:2016-10-17)

近年,衛生マスク (以下,マスク) は,風邪や花粉対策等の衛生用途以外にも使われる。例えば,若年女性の一部は,小顔に見せる為にマスクを利用することがある。本研究では,見た目の顔の大きさにマスクの着用が及ぼす効果を検証した。実験はマスク着用 (着用,非着用) と元々の見た目の顔の大きさ (小顔,中顔,大顔群) の2要因被験者内計画で実施した。被験者は,LCDに呈示された顔画像の見た目の顔の大きさを1 (小さい) から100 (大きい) の範囲で評定した。その結果,元々の見た目の顔の大きさに関わらず,マスク非着用画像に比べ,マスク着用画像の方が顔が小さく知覚されることが示された (マスク着用の効果量は小顔群に比べ,中顔・大顔群の方が大きかった)。この効果は,マスク着用で,顔の大きさ判断に用いられる視覚手がかり (咬筋部や下顎周りの皮膚厚等) が利用できなくなること,顔が遮蔽されたことによる錯視効果に基づくと考えられる。
著者
髙橋 麻衣子 片岡 史絵 田中 章浩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.124, 2016 (Released:2016-10-17)

音楽を聴きながら,電車に乗りながら等,我々は背景に無関連な音が提示されている中で読書をする場合がある。本研究は,このような背景音の種類によって小説の読解成績がどのように異なるのかを検討することを目的としたものである。24名の参加者に,歌詞あり音楽,歌詞なし音楽,歌詞朗読,無音の4条件の背景音提示下で小説から抜粋した300字程度の文章を読ませ,主観的な理解度の評定と内容の要約,登場人物についての記述の作成を求めた。その結果,歌詞朗読条件の主観的理解度や文章要約の質が,他の3条件のものより低いことが明らかとなった。登場人物の記述の成績は条件間で差がなかった。さらに,読解活動中の参加者の視線を計測して分析したところ,歌詞朗読条件の読解中の注視時間と注視回数が他の3条件よりも多いことが示された。以上の結果から,小説の読解時には音楽にのせていない意味のある音声の提示が読解を妨害することが考えられた。
著者
篠原 恵 松下 戦具 森川 和則
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2016 (Released:2016-10-17)

株価の予測は、過去の変動から未来の変動を予測する賭け行動である。このような事態では、物事の変化の受け止め方に関する性格特性が賭け行動に影響する可能性がある。しかし、株価の予測への性格特性の効果はほとんど調べられていない。 そこで、本研究では、世の中や人生の移り変わりについての見方である無常観が、株価予測にどのように影響するかを調べた。 実験課題は、株価の変動を示すチャートを観察し、その後の株価が上がるか下がるかを予想することであった。実験の結果、チャートが上昇トレンドの場合、無常観の低い参加者はその後の株価も上昇すると予測する傾向があった。一方、無常観の高い参加者は、上昇の継続と下降への反転を同程度予想した。これらの結果は、無常観の高い人は、賭け行動においても中立的なあるいは保守的な予測を行うということを示している。
著者
小野 史典 木本 茉莉奈
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.26, 2016 (Released:2016-10-17)

我々は自分の心の中の思いなどが相手に見透かされてしまっているのではないかと思ってしまうことがある。こうした自分の内的状態が相手に漏れているかのように考えてしまう現象は透明性の錯覚と言われている。本研究では,5杯の飲み物(4杯は同じ味だが1杯は異なる味)を準備し,行為者はなるべく無表情で飲み物を飲み(行為者セッション),観察者はその様子が録画されたビデオを見て,異なる味の飲み物を推測した(観察者セッション)。さらに,行為者は観察者の正答率を推測した。実験の結果,観察者の実際の正答率に比較して,行為者の推測した正答率が高くなった(透明性の錯覚)。また,別の参加者に対して,あらかじめ正答を教え,ビデオを見た後に観察者の正答率を推測してもらったところ,観察者の実際の正答率よりも高くなった。この結果は,行為者の内的状態を知っていること自体が透明性の錯覚において重要な要因になることを示唆している。
著者
高木 幸子 安田 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2016 (Released:2016-10-17)

本研究では、楕円の輪郭の傾きを知覚する際に、楕円の内部要素の傾きが及ぼす影響を実験によって検討した。先行研究から、楕円の内部要素が傾いていると楕円の外部輪郭そのものが傾いて知覚され(高木・安田, 2014; 安田・高木, 2015)、内部要素が顔の場合には特異的な効果があること(高木・安田, 2014)が示唆されている。本研究ではさらに、楕円内部の直線成分の存在が及ぼす影響を検討した。実験では、楕円の内部要素を3種類(顔・T字・寄せ鍋)用意し、これら3種類の刺激について内部要素のみを傾きが0°の状態から±15°まで3°ずつ傾けた全11種類の画像を作成し、ターゲット刺激として提示した。結果から、先行研究と同様に楕円の内部要素が傾いていると楕円の外部輪郭そのものが傾いて知覚され、傾き角度によっては内部要素に直線成分がある場合(顔・T字)の方がない場合(寄せ鍋)と比較して錯視量が大きくなる傾向があることが示された。
著者
庭瀨 裕子 朴 白順 月浦 崇
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.107, 2016 (Released:2016-10-17)

Fading Affect Bias(FAB)とは,情動的にネガティブな出来事と結びついた感情は,情動的にポジティブな出来事と結びついた感情よりも早く弱まる傾向があるバイアスのことである.しかし,このFAB効果の大きさと気分の個人差との関係は明らかではない.本研究では,日記法を用いてFAB現象と気分の個人差の関係を検証した.参加者は,情動的にPositive,Neutral,Negativeな出来事を毎日1つずつ14日間連続で日記に記入し,各出来事についての覚醒度を評価した.さらに14日後に,参加者は日記に記載した出来事についての覚醒度を再評価し,さらに気分と性格特性に関連する心理検査を施行した.その結果,FAB現象の大きさは,記憶想起時のネガティブな気分状態が強い個人ほど有意に減少することが示された.この結果は,FAB現象は記憶想起時の気分の個人差によって予測されることを示唆している.
著者
渡辺 友里菜 吉崎 一人 大西 志保
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.64, 2016 (Released:2016-10-17)

逆ストループ課題では,採色された色名単語の単語読みを求め,インク色が干渉した程度が測定される。Smithson, et al. (2006)は,彩色された色名単語のインク色を操作し,色名単語との色が近づく程,反応時間は速くなることを示した。本研究は,刺激呈示空間の上下と刺激の示す方向(上下)との間で適合性が決まる空間ストループ課題を用いて,空間ストループ効果には凝視点から刺激呈示位置の距離(視角)に応じた変化がみられるかどうかを調べた。実験では,凝視点を通る垂直子午線上で,上下視野に2箇所(凝視点から視角にして2.32°と6.97°,又は6.97°と11.63°)の計4箇所に矢印刺激が呈示された。その結果,視角に関わらず,最も上,最も下の呈示位置の空間ストループ効果が,他の呈示位置より大きかった。つまり,空間ストループ効果の大きさは,刺激布置の相対的な位置(上下)に依拠することが示された。
著者
羽渕 由子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.77, 2016 (Released:2016-10-17)

本研究は,病院薬剤部において医薬品取り揃え時に発生する取り間違いエラーについて,発生を予測し,防止策を提案することを目的とした。医療機関において約2か月間に発行された処方箋から,層化無作為二段抽出法によって約1000枚の処方せんを抽出し,処方された医薬品の組み合わせを共起ネットワークとして描画し,実際の取り間違いデータと比較した。検討の結果,正しい処方医薬品と取り間違われた医薬品は特定の症状で処方される医薬品との関連が強いネットワーク上にあることが示された。いわゆる“思い込み”エラーとして,薬剤師が医薬品を取り間違える要因の一端が明らかになった。
著者
松田 憲 興梠 盛剛 小野 史典 杉森 絵里子 楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.28, 2016 (Released:2016-10-17)

パワープライミングとは,抑制的な先行手掛かりが安全・安心といった認知を高め,促進的な手掛かりが成長・発展・発達といった認知を高めることである。本研究では参加者にパワープライミング課題を課してハイパワーとローパワーの操作を行い,ノスタルジックな画像ないし先進的な画像と広告との連合形成及び広告の評価に及ぼす影響について検討を行った。商品カテゴリーとして,食品(お茶,レトルトカレー)と家電(液晶TV,ノートPC)を用いた。参加者にはパワープライミング課題を課した後に広告と画像を連続対呈示し,その後に広告への評価を求めた。実験の結果,特に家電カテゴリーにおいて,ハイパワー条件では先進的画像と対呈示された広告の評価が,ローパワー条件においてはノスタルジー画像と対呈示された広告の評価が高かった。これは,ハイパワー操作によって新奇性選好が,ローパワー操作によって親近性選好が促された結果であると考える。
著者
猪原 敬介 内海 彰
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2016 (Released:2016-10-17)

フィクション本の読書頻度はノンフィクション本よりも語彙力と強く関連することが報告されている。原因として,テキスト内要因(フィクション本の単語出現のパターンのほうが語彙力向上に有効である,など)とテキスト外要因(フィクション本のほうが高い動機づけで本を読めるので,読書に集中でき,結果として単語の学習が行われやすい,など)が考えられるが,両者を切り分ける検討はこれまでなされてきていない。本研究では,言語コーパスに基づく語彙学習シミュレーションを行い,読書傾向によって群分けした人間の参加者の語彙テスト成績と比較を行った。その結果,参加者実験では先行研究の結果を追試できたが,シミュレーション実験ではノンフィクション本の成績がフィクション本の成績を上回るなど,食い違った結果が得られた。本結果はテキスト外の要因が上述の現象の原因であることを示唆しているが,別解釈の可能性についても併せて論じた。
著者
宮川 法子 服部 雅史
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.23, 2016 (Released:2016-10-17)

本研究では,流暢性 (刺激に対する情報処理の速さや容易さの主観的な感覚) の記憶に与える影響に個人特性であるワーキングメモリ容量や認知欲求が調整変数として働くか否かについて,文字の見えづらさを操作し検討した。記憶課題には40語の単語記憶課題,ワーキングメモリ測定課題にはリーディングスパンテスト(以下,RST)と演算スパンテスト (以下OST) を用いた。40単語の記憶課題の後にRSTとOSTを行った。各記憶課題の間には1分間の休憩を挟み,RSTとOSTは参加者間でランダムな順で行った。最後に認知欲求を測る質問紙を行い,単語記憶課題での文字の読みやすさについて5件法で回答してもらった。本実験の結果からOST得点の低い人が流暢性の影響を受けやすいことが示唆された。更にOST得点によって,読みやすさ,つまりは流暢性の感じ方に違いは見られなかった。よって流暢性そのものは入力段階において差はないことも示唆された。
著者
田中 孝治 佐々木 駿作 池田 満 堀 雅洋
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.112, 2016 (Released:2016-10-17)

本研究では,自転車運転中の不安全行動の問題特性を明らかにするための足掛かりとして,一般的な知識として正しい行動を問う知識課題と自身が実際に選択する行動を問う意図課題の二種類の課題を用いて,自転車運転における知識と行動意図の不一致を定量化する(実験1)。さらに,定量化したデータから,不安全運転行動の意図形成について,時間的切迫感および不安全運転行動が引き起こす被害に対する関与(実験2),不安全運転行動の危険認知および安全運転行動のコスト認知の観点(実験1・2)から検討を加える。実験の結果,意図課題の方が知識課題よりも正答率が低く,知識と行動意図の不一致が示された。また,切迫感,コスト感,危険性の認知が,不安全運転行動の意図形成に影響を与えることが示された。さらに,自身が加害者となる可能性を提示された方が,被害者となる可能性が提示されるよりも不安全運転行動の意図が形成されることが示された。