著者
木村 亜矢子 堀 匠 佐藤 啓子 佐藤 智美 先崎 章
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.421-427, 2017-12-31 (Released:2019-01-02)
参考文献数
4

記憶障害と発動性低下のため日常生活の遂行が難しい患者 1 例に対し, SNS (social networking service) を用いた支援を行った。症例は 40 代, 男性の運転手で前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血を発症した。身体, 言語機能はほぼ問題ないが, 重度記憶障害, 発動性の低下を中心とした高次脳機能障害を認めた。入院当初メモリーノートや, アラーム機能による行動指示を試みたが, 活用は困難であった。 本人が使い慣れていた SNS (LINE のトーク機能) を使用し, 多職種チームが連携して支援を行った結果, 病棟生活では標準意欲評価法 (CAS) による評価が改善し, 退院後もLINE を用いて屋外での単独行動が安全に可能となった。家族にとっても行動を遠隔に確認し見守ることができ, 退院後の安心や省力化につながった。SNS (LINE) による行動指示や記憶を補完する支援は, 患者が自立した生活を送るために有効であった。
著者
木村 亜矢
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.312-322, 2016
被引用文献数
2

<b>目 的</b><br> 病院に勤務する熟練助産師が分娩第一期の分娩進行を判断していく一連のプロセスの特徴を明らかにすることである。<br><b>対象と方法</b><br> 本研究では,エキスパートの条件を兼ね備え,妊産婦に卓越した助産を実践している助産師を熟練助産師と定義し,研究では総合病院の産科病棟に勤務する4名の熟練助産師を対象とした。データ収集は分娩介助場面の参加観察と半構成的インタビューにより行った。熟練助産師が行う臨床判断の特徴についてカテゴリー化を目的として,質的帰納的に分析した。<br><b>結 果</b><br> 熟練助産師は,初回面会時に分娩進行に影響する分娩3要素,心理的背景,リスク要因を統合して【産婦の全体像の把握】を行いながら,【個別の分娩進行の見通し】を立てていた。その中から分娩進行を阻害する【阻害要因の見極め】を行い,有効な【ケアの選択】をしていた。さらに,選択したケアを実践しつつ,分娩進行における【ターニングポイントの予測的な察知】,または必要に応じた【ターニングポイントの意図的な生み出し】を行っていた。その後,分娩進行におけるターニングポイントを踏まえ,【分娩進行の見通しの立て直し】および【阻害要因の再度の見極め】【新たなケアの選択】を繰り返し,方針の軌道修正を行っていた。以上の分析から,熟練助産師は分娩第一期の分娩進行を判断していく中で,助産師としての信念,熟練した技術を<b>臨床判断の基盤</b>とし,産婦と<b>ともに産む関係の構築</b>を行い,情報把握の手段として活用していることがわかった。<br><b>結 論</b><br> 熟練助産師が行う一連の臨床判断プロセスの中で,分娩進行の変化をターニングポイントとして予測的に察知または意図的に生み出すことは,分娩進行の異常への逸脱を予防し,母子の安全確保に寄与するものである。このプロセスはハイリスクな分娩に対峙する病院勤務の助産師により特徴的なものであると考えられる。