4 0 0 0 OA 核生成

著者
木村 勇気 川野 潤 田中 今日子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

核生成は物質形成の始まりであり、物理的、化学的なメカニズムの解明は多分野にまたがる非常に重要な課題である。本研究では、1)気相からの核生成実験、2)計算機シミュレーション、3)核生成の透過電子顕微鏡(TEM)中その場観察実験の3つのアプローチを行うことで、核生成と前駆体のかかわりを直接的に示すことを目的としている。本年度は、それぞれに関して、以下に記す実績が得られた。1)気相からナノ粒子が生成する場合であっても、初めに生成したクラスターが成長ユニットとなり、方位をそろえて接合しながら成長することで、最終生成物が形成することが分かった。結晶成長分野で最近注目されている多段階核生成の解明に迫る成果であり、論文としてまとめてNanoscaleに報告した。2)昨年成功した、最大1500万の希ガス分子(Lennard-Jones分子)を用いた長い待ち時間の計算による、気相から過冷却液滴への核生成と液滴からの結晶化という多段階核生成過程の再現をまとめ、Physical Review Eに報告した。3)コンクリートの劣化を防ぐ為に使われるシリカ粒子と水酸化カルシウム溶液を用いて単純化したコンクリート化の初期過程のTEM中その場観察実験を行った。その結果、まずシリカ粒子の膨潤によってコンクリート内の細孔が埋められていき、その後、カルシウムケイ酸塩水和物が形成して粒子同士をつないでいくことで固化が進むプロセスを捉えた。わずか0.03 nm/秒というシリカ粒子が膨潤する典型的な速度の実測にも成功した。溶液セルを用いたTEMその場観察実験により、他の手法では殆ど不可能である個々のナノ粒子の水和による膨潤や溶解、成長の微小な速度を求めることが可能になった。本成果を論文としてまとめ、Industrial & Engineering Chemistry Researchに報告した。
著者
木村 勇気 勝野 弘康 平川 靜 山﨑 智也
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.700-705, 2023-12-10 (Released:2023-12-10)
参考文献数
27

Non-equilibrium processes such as nucleation are difficult to observe in situ using transmission electron microscopy (TEM) because of spatiotemporal stochastic process. Therefore, we have been developing a method to predict/detect nucleation events and observe under low electron doses conditions in real time with the support of machine learning. Low electron dose observation is important to avoid radiolysis of water in the observation of aqueous solutions using liquid-cell TEM. Our data-driven TEM that can suggest observation points to the operator by processing in situ observation data in real time. In other words, it is data-driven TEM in which the TEM helps the operator, rather than the TEM being driven by the data. By incorporating the two codes into the TEM's software, nucleation can now be observed efficiently.
著者
木村 勇気
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.545-549, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
31

宇宙にはダストと呼ばれる無数のナノ粒子が存在しており,さまざまな場面で重要な役割を果たしているため,ダストの形成過程の理解は天文学,惑星科学の土台となる課題である.我々は気相からの核生成過程の一般性と,宇宙における物質進化を理解する鍵はナノ領域特有の性質にあると考え実験を基に研究を行ってきた.その結果,気相からの均質核生成のキーファクターはダイマーの形成と融点降下にあることが分かり,ダストの形成過程の理解にはナノ粒子の融合成長を考慮する必要があることが分かってきた.ここでは,最近の研究の一端を紹介する.