著者
小松 賢一 高地 義孝 高地 智子 丸屋 祥子 松尾 和香 木村 博人 鈴木 貢
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.89-100, 1993-05-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
34
被引用文献数
4

1980年1月から1989年12月までの10年間に弘前大学医学部附属病院歯科口腔外科外来を受診した650名の顎関節症患者について臨床統計学的な観察を行い, 次のような結論を得た。本症患者は年々増加傾向にあり, 新患総数に占める割合は10年間で平均7.4%であった。性別では男性173人, 女性477人と女性に有意に多かった。年齢別では20歳台が27.2%と最も多く, 次いで10歳台16.6%, 30歳台16.5%と続き, さらに50歳台, 40歳台, 60歳台の順で二峰性を示した。罹患側は片側が85.8%, 両側が14.2%であった。初発症状や主訴は単独症状のことが多く, その症状は疼痛が最も多かった。発症から初診までの期間は57.2%が6カ月未満であった。当科受診前に他科を受診している患者は51.4%であった。初診時症状は複数の症例が多く, 顎関節部痛が70%, 顎関節雑音46.2%, 開口障害42.5%などであった。治療法は薬物療法, スプリント療法, 咬合調整, 抜歯などの歯科的治療法であった。薬物療法とスプリント療法の併用が60%を占めていた。治療成績では, 治癒または軽快が45.1%に見られた他, 治療中止例が53.6%に見られた。
著者
遠藤 有美 小松 賢一 福井 朗 小林 恒 中山 勝憲 中野 靖子 木村 博人
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.313-318, 1996-12-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
3 1

他臓器の悪性腫瘍が顎・口腔領域に転移することは比較的まれである。顎骨への転移性腫瘍の原発臓器は, 乳房, 肺, 副腎の順に多く, 口腔領域に初発症状を呈する転移性肝細胞癌はきわめてまれである。今回, 著者らは, 下唇の知覚麻痺を初発症状とする下顎骨への転移性肝細胞癌の一例を経験したので臨床経過ならびに文献的考察を報告する。患者は59歳, 男性で, 歯科, 麻酔科, 耳鼻科, 神経内科を経て, 当科を紹介された。X線所見で4に近接する骨に, びまん性の骨吸収像を認めた。下顎骨より採取した生検標本の病理組織学的所見で下顎骨の転移性肝細胞癌の診断を得た。肝癌が口腔領域に転移した場合の初発症状として, 腫脹, 出血が多いとされていたが, 1957年から1996年における下顎骨に転移した肝細胞癌の報告では27症例中5症例に, 三叉神経の知覚麻痺を認めた。さらに50歳代の男性に多く, 発生部位としては下顎骨体部と下顎枝に多いことが明らかとなった。
著者
梅原 一浩 小林 恒 山崎 尚之 夏堀 礼二 田中 純一 佐藤 雄大 佐々木 智美 木村 博人
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.49-55, 2018

<p>若年者に対するインプラント治療の適応や埋入方法は,個々の成長と発育に左右されるため,慎重な診断と成長予測に基づいた治療計画が必須となる.今回,16歳女性の上顎前歯部にインプラント治療を行い,20年以上の長期に渡って機能的・審美的に満足な結果が得られたので報告する.</p><p>本症例では,20年の間にインプラント上部構造と隣在する中切歯切端との間に約2.1mmの差が生じた.このような垂直的位置変化には,顎骨の成長,第三大臼歯の萌出,永久歯列の経年的変化など種々の要因が影響するものと思われた.確かに,成長が終了するのを待ってからインプラント治療を行う方が望ましいと思われるが,先天性欠損や外傷による少数歯欠損などの理由から若年者にインプラント治療を求められることもある.そのような場合は,各々の患者の成長曲線,骨年齢,第三大臼歯の萌出力などによる影響やセファログラムによる矯正的分析を考慮しなければならない.また,隣在歯の位置を確認した後,インプラント体を口蓋側寄りとし,深くなりすぎないよう慎重に埋入することも重要である.</p>