- 著者
-
木村 竜一朗
- 出版者
- 公益社団法人 日本アロマ環境協会
- 雑誌
- アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.15-24, 2015-10-08 (Released:2015-10-08)
- 参考文献数
- 21
成人T細胞白血病(ATL)は,ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)感染を原因とするリンパ性悪性腫瘍である。ATLの発症には,転写因子NF-κBが重要な役割を果たすことが知られており,特異性の高いNF-κB阻害剤の開発が悪性度の高いATLの治療に有効と考えられている。本研究でわれわれは,精油の抗ATL効果とNF-κB阻害効果について,ヒトHTLV-I感染T細胞株を用いた解析から明らかにした。試行した30種の精油のうち,ゼラニウム,イランイラン,ジュニパー,ジャスミンの4種については,顕著に細胞増殖を抑制することがわかった。さらにゼラニウムは,HTLV-I感染T細胞株の恒常的なNF-κB活性化を抑制し,その結果,カスパーゼ依存的なアポトーシス細胞死を特異的に誘導することが明らかとなった。以上の結果から,ゼラニウムは強力なNF-κB阻害効果と抗ATL効果を有することが示された。これらの知見は,ゼラニウム精油,および精油の構成成分は,NF-κBが活性化している多くの腫瘍,および種々の炎症性疾患に対する分子標的治療と緩和ケアに効果を発揮する可能性を示唆するものである。