著者
山根 健 蓮尾 高志 末光 厚夫 森田 昌彦
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.933-944, 2007-03-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

シンボルグラウンディング問題やフレーム問題に起因する古典的人工知能の限界を超えるには,もともとパターンで表現される外界の情報をパターンのまま処理するパターンベースの推論が有効だと考えられるが,シンボルやそれに類するものを全く用いる必要のない推論エンジンはこれまでなかった.本論文では,非単調神経回路網が構成する大自由度力学系のダイナミックスを利用して,完全なパターンベースの推論を行うモデルを提案する.このモデルでは,情報はすべてパターンとして分散的に表現され,適切な推論結果を表すパターンへの状態遷移が生じるよう,力学系のある部分空間に軌道アトラクタを形成することが知識の学習に相当する.簡単な推論システムを構築したところ,全く未知の問いに対しても類推によって適切に答え,非単調推論も自然な形で実現できるなど,従来の推論方式にはない特徴が示された.まだ研究の初歩的段階ではあるが,本モデルは推論方式や性質が脳に似ており,大きな可能性をもつと考えられる.
著者
森田 昌彦 村田 和彦 諸上 茂光 末光 厚夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.733, pp.103-108, 2004-03-11
参考文献数
2

伝統的な多層パーセプトロンは,入出力関係が文脈に強く依存する場合や2つの独立な入力情報を統合する必要がある場合,学習・汎化能力が著しく低下する.別の言い方をすれば,2変数の関数の近似能力は極めて乏しく,学習サンプルとほぼ同数の中間層素子が必要である上に,サンプル数をいくら増やしても汎化誤差はほとんと減らない.このことを数値実験で示すと共に,その本質的原因を論じる.また,このような多層パーセプトロンの限界が,入力素子の選択的不感化という簡単な手法によって乗り越えられることを示す.