- 著者
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末木 孝典
- 出版者
- 日本選挙学会
- 雑誌
- 選挙研究 (ISSN:09123512)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.120-130, 2011 (Released:2017-06-12)
第2回衆議院議員選挙において,第一次松方内閣は選挙干渉を行った。本稿は,選挙干渉の有効性を分析するため,①選挙の結果,政府支持派を拡大できたか,②選挙後の第三議会において,政府の方針に従う議員を増加できたかという2点について検討した。 その結果,まず,内務省の名簿により,選挙では幅広い勢力を取り込み,政府支持派を大幅に増加させたことがわかった。選挙後,政府は自由党や独立倶楽部などに対して多数派工作を行ったが,政府支持派と見ていた独立倶楽部が分裂するなど,成功したとはいえない。そして,第三議会における各議員の議案賛否をパターン分析した結果,基礎票で民党と吏党の差はほとんどなく,方針通りに投票した議員が民党側約90%,吏党側約75%と差 がついたことがわかった。以上のことから,選挙干渉は議会運営の円滑化には有効な結果をもたらさなかったといえる。