著者
厳島 行雄 和田 万紀 末永 俊郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.70-79, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
24

自己生成効果とは, 被験者によって生成された項目が実験者から与えられた項目よりも再生において優れているという現象をいう (Greenwald & Banaji, 1989)。この現象を説明するために厳島・和田・末永 (1992) は記憶のネットワーク理論0による説明を試みた。この理論によれば, 自己生成条件では生成した概念ノードを形成することが可能で, それを既存のノードと強く結合できると仮定される。さらにこのネットワークの活性化は十分に拡散されるような水準にまで高められていると仮定される。しかしながら実験者から項目を与えられる条件ではこの情報ノードを産出できない可能性があり, また活性化の水準も低いとされる。以上の仮説を検討するために, 実験1では生成および非生成条件で文章作成課題における目的語に修飾語を付与させ, さらに実験2では主語および目的語にも修飾語を付与させて, それらの文章に使用された単語の自由再生・手がかり再生を行なった。結果は, 両実験における生成条件で, 新しく付与された修飾語の再生が非生成条件よりも多く再生されるというものであった。この結果は, 生成条件における文章作成が当該ノードの形成を促進し, その後の検索における活性化の水準を高めたためと解釈された。考察では, 自己と記憶の関係についても討論が行われた。