著者
大森 馨子 厳島 行雄 五十嵐 由夏 和気 洋美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.483, pp.27-31, 2013-03-13

痴漢被害の報告は,視覚的情報や聴覚的情報によるものは少なく,触覚による事例が大半である。このような公共交通機関における痴漢事件や冤罪に関わる問題を原点とし,痴漢被害最多発部位である臀部に提示された手や鞄がどのように知覚されるのか,また手や鞄の動きの有無によって違いが生じるのか,さらには触判断に対する確信度について検討を行った。その結果,臀部における触判断が正答する確率は,もっとも高い条件下でも40%であり,臀部に触れた手や鞄を触覚情報のみによって正しく判断することは困難であることが明らかとなった。また,誤った回答であるにもかかわらず,チャンスレベルを有意に超えて選択される刺激条件もみられた。さらに,正答率と確信度ともに動きの有無による違いは認められなかった。これらの結果から,臀部においては提示刺激以外で触られたという判断が頻繁に生じることが示唆された。
著者
齋藤 馨子 和氣 洋美 厳島 行雄 五十嵐 由夏
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

痴漢被害に関する質問紙調査では、女性の約37%、男性の約5%が痴漢被害を経験しており、痴漢被害部位の多くは臀部であることが示された。痴漢被害遭遇時は目視による犯人確認が困難であることも明らかとなった。また、痴漢と判断される行動が混雑した公共交通機関内で容易に生じることも確認された。身体接触に関する調査では、身体接触を基本的に不快と感じることが示された。触判断に関する実験的検討では、視聴覚情報が遮断された状態で背後の他者の立ち位置を感じることはできず、刺激の動きの有無や連続提示にかかわらず、臀部では触覚情報のみによって対象を正しく判断することは困難であることが明らかとなった。
著者
厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-28, 2014

飯塚事件におけるT氏の目撃供述の正確さの心理学的鑑定を行った。飯塚事件とは、小学生2女児が自宅から小学校に登校中に行方不明になり、翌日死体で発見された事件である。T氏の供述とは、この二人の所有物が遺棄されていた場所を事件当日のお昼前に、国道332号の山の中のワインディングロードを軽自動車で走行中(25KM)に、左に急に曲がる下りの坂道で目撃したというものである。目撃から12日後には事件担当の刑事を現場に案内し、その場所を迷いながらも特定し、目撃した人物と車の詳細について供述した。問題となるのは、その人物および停車中の供述内容が極めて詳細であり、そのような詳細な出来事の記憶が果たして本人の経験した目撃に由来するのかという点である。この問題を解決するために、目撃されたとされる場所を利用して、30名の実験参加者によるフィールド実験を行った。実験ではT氏の視認状況を再現することを試みた。その結果、T氏のような詳細を報告できる者は一人もいなかった。この目撃供述は、T氏の面接以前に犯人のものとされる車を調べた警察官によって作成されたことが、本鑑定書の作成後にわかった。このことはその捜査官によって車の詳細に関する誘導が行われた可能性を推察させる。
著者
五十嵐 由夏 大森 馨子 和氣 洋美 厳島 行雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.283, pp.91-96, 2013-11-09

近年,都市部の交通機関を利用する者にとって"痴漢"は避けられない問題となっており,多くの人が痴漢被害や冤罪被害に巻き込まれる不安を抱えているという.そこで本研究では,都内近郊の大学に通う男女137名を対象に質問紙調査を実施し,混雑した交通機関内で生じうる様々な身体接触状況に対する不快感と,各状況が痴漢行為だと思うかどうかについて尋ねた.その結果,身体接触そのものが全般的に不快であり,痴漢だと判断されやすい行為は概ね不快な行為でもあることが確認された.一方で,痴漢であると判断されやすい状況に,混雑した車内で偶発的に生じうるものが数多くあることも明らかとなり,冤罪被害が発生する可能性の高さも示唆された.
著者
笠原 洋子 厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.71-84, 2007-07

Earwitness研究は、声の再認に関する研究と声から人物識別判断を行う研究の2つに大別される。本研究は後者の研究領域に位置づけられるものであり、その中でも声の様態変化が年齢判断に与える影響について検討することを目的とした。実験1では、声の偽装手段として実際の犯罪場面でしばしば用いられる、「ささやき」の影響について検討した。その結果、ささやくことにより、通常の発話よりも年齢が高く推定されることが示された。刺激として用いた音声を分析した結果、ささやくことにより声が全体的に高くなり、音圧レベルは全体的に小さく変化していた。そこで実験2で声の高さ、実験3では声の大きさを操作した。その結果、実験2では男性発話者は一音下げた条件において年齢が高く推定されることが見出されたが、実験3では条件間に差はみられなかった。これら一連の研究から、声からの年齢判断においては声の高さの変化が大きく影響し、声の大きさの変化は判断に影響を与えない可能性が示された。
著者
田中 未央 厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.85-94, 2007-07

不正確な目撃証言による記憶の変容は、証言者の意図が伴わずに生じる現象であり、その原因として事後情報効果などの様々な要因が明らかにされてきた。一方で、事件の加害者や容疑者が意図的に語った不正確な供述、つまり嘘の供述が後の記憶に及ぼす影響についての検討は、あまり行われていない。そこで、本研究では出来事を想起する際に嘘をついた場合、記憶がどのように変化するかを検討するために2つの実験を行った。実験1では、同じ出来事について嘘をついた後の記憶と嘘をつかなかった後の記憶を比較し、出来事を想起する際に嘘をついた場合でも出来事に関する正確な記憶が維持されること、また、嘘をつく際には2つの方略が用いられる傾向があることが示された。実験2では、嘘をつく際に採用される方略を統制し、後の記憶を比較したところ、嘘をつく際に知らないふりをする方略を用いた場合に正確な記憶が抑制されることが示された。実験1・実験2の結果から、出来事を想起する際の嘘の有無ではなく、採用される嘘の方略が正確な記憶を抑制する要因であると考えられる。また、知らないふりをすることでオリジナル(原現象)の想起が抑制されるので、オリジナル記憶のリハーサルが妨害され、正確な出来事を想起することが困難になると考えられる。
著者
厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-28, 2014 (Released:2017-06-02)

飯塚事件におけるT氏の目撃供述の正確さの心理学的鑑定を行った。飯塚事件とは、小学生2女児が自宅から小学校に登校中に行方不明になり、翌日死体で発見された事件である。T氏の供述とは、この二人の所有物が遺棄されていた場所を事件当日のお昼前に、国道332号の山の中のワインディングロードを軽自動車で走行中(25KM)に、左に急に曲がる下りの坂道で目撃したというものである。目撃から12日後には事件担当の刑事を現場に案内し、その場所を迷いながらも特定し、目撃した人物と車の詳細について供述した。問題となるのは、その人物および停車中の供述内容が極めて詳細であり、そのような詳細な出来事の記憶が果たして本人の経験した目撃に由来するのかという点である。この問題を解決するために、目撃されたとされる場所を利用して、30名の実験参加者によるフィールド実験を行った。実験ではT氏の視認状況を再現することを試みた。その結果、T氏のような詳細を報告できる者は一人もいなかった。この目撃供述は、T氏の面接以前に犯人のものとされる車を調べた警察官によって作成されたことが、本鑑定書の作成後にわかった。このことはその捜査官によって車の詳細に関する誘導が行われた可能性を推察させる。
著者
丸山 昌一 西 真理子 厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.117-127, 2005 (Released:2017-06-02)

本報告では、事後情報が提示される媒体の違いが目撃者の記憶に及ぼす影響について検討した。参加者は、16枚からなるオリジナルスライドを提示された後に、事後情報として他の参加者による感想をVTRによる音声付き動画、または同一の内容を逐語化し紙面に印字したものによって提示された。ターゲット刺激3点の再認成績について各個に検討を行った結果、刺激項目の種類によっては、「ビデオ」による事後情報の提示が「紙面」による提示よりも強い誤情報効果をもたらすことが示唆された。これは「テレビなどによる視覚情報の方が事後情報として強い影響力を持つ」という仮説を支持する傾向ではあるが、本実験において用いたビデオ刺激が映像的に派手な演出を抑えたものであったことからも、紙面提示条件の誤情報検出力が上がったことによる影響も考えられた。このことは、参加者が個々のぺースで事後情報に触れることができたことによって、差異検出原理(Principle of Discrepancy Detection)が働いたものであると解釈することができる。なお提示モードにかかわらず事後情報効果を受けやすかった対象は、ある種の文脈における特定の動作を描写した項目であり、スクリプトの影響がその理由として考えられた。
著者
川平 杏子 厳島 行雄
出版者
日本認知心理学会
巻号頁・発行日
pp.197, 2007 (Released:2007-10-01)

感覚刺激を手がかりとした自伝的記憶の無意図的想起は,非日常的な出来事だけなく,日常的な出来事も想起されやすいことや,想起時の気分に関係なく手がかりとなる刺激に触れるたびにその出来事が想起されるという特徴が示唆された (川平,2005;2006)。そこで,本研究では,これらの特徴が感覚刺激を手がかりとした無意図的想起に固有のものであるのかを検討するために,実験において,感覚刺激を手がかりとして意図的に想起した記憶との比較を行なった。実験参加者は,女子大生,大学院生21名 (平均年齢 20.88歳,SD=1.52) であった。音楽刺激を聞いて想起することのできる過去の出来事を回答するよう求めた。実験で得られた32事例を意図的想起群として,川平 (2006) で得られた日誌法のデータのうち年齢の範囲が同じで,聴覚刺激を手がかりとした34事例と比較検討した。
著者
大森 馨子 五十嵐 由夏 和氣 洋美 厳島 行雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.432, pp.7-10, 2012-02-02
参考文献数
6

痴漢場面で触られることの多い身体背面部に提示された触覚情報の判断とその回答に対する確信度について,手のひらに提示された場合との比較検討を行った。さらに,触覚情報の動きの有無によって触判断や確信度が異なるのか検討した。その結果,手のひらで触判断を行う場合にくらべ,身体背面部における触判断の正確性および確信度は低下することが明らかとなり,触覚情報のみで判別することは難しい可能性が示唆された。また,動きの有無によって正答率に差は見られないが,確信度については動きがある場合に高まることから,動けばそれが何であるか分るはずだといった思い込みによって,誤認が増加している可能性が示唆された。
著者
渋井 進 山田 寛 厳島 行雄 佐藤 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎
巻号頁・発行日
vol.97, no.506, pp.1-8, 1998-01-22
参考文献数
11
被引用文献数
3

顔面表情のカテゴリー化に関して、同じカテゴリーに分類される表情の中の最も典型的な表情 (プロトタイプ) からの距離によって分類されるというモデルと、カテゴリーの一般的あるいは抽象的概念そのものからの距離によって分類されるという2つの仮説を立てた。表情刺激にはコンピュータグラフィックスの手法により合成された21の平均顔を用いた。実験1ではこれらの刺激および6つの情動概念 (喜び、悲しみ、驚き、怒り、嫌悪、恐れ) をSD法で評定させた。その結果両者は快・不快、活動性の2次元で構成される同一の空間で認知されることが示された。実験2では表情刺激をカテゴリー判断させた。分析の結果プロトタイプモデルの概念モデルに対する優位を示す傾向が見られた。
著者
田中 未央 厳島 行雄 高島 翠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.177-177, 2007

過去の出来事を想起する際に嘘をつくと,オリジナルの出来事に関する記憶が抑制されることが示されている(Christianson & Bylin, 1999)。先行研究では,語り手は嘘をつく際に2つの方略を併用していることが示されており,田中(2005)では,語り手が使用する嘘の方略を統制した実験を行い,嘘をつく際に「知らないふり」をすることによってオリジナル記憶のリハーサルが妨害されると,後の記憶が抑制される可能性を示した。目撃証言に関する先行研究では,想起の対象によって記憶の正確さが異なることを示している(Yuille & Cutshal, 1986)ことから,嘘の対象が異なる場合にも後の記憶の正確さに違いがみられると考えられる。よって,本研究では嘘の対象を統制した実験を行い,嘘の対象が異なる場合の記憶を比較する。
著者
厳島 行雄
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

耳撃証(ear-witness)の記憶の正確さを検討するために、情動的覚醒が伴う事件等を考慮して、感情的には中立の刺激提示中における耳撃と恐怖の感情を喚起するような刺激干渉中の耳撃の正確さを比較検討した。相手の声を一週間後に6名のラインナップ(犯人が存在する)から識別するということを行った結果、恐怖という情動を喚起する操作を行った条件では、行わない条件に比較して半分以下の正識別であった。
著者
田中 未央 厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.85-94, 2007-07

不正確な目撃証言による記憶の変容は、証言者の意図が伴わずに生じる現象であり、その原因として事後情報効果などの様々な要因が明らかにされてきた。一方で、事件の加害者や容疑者が意図的に語った不正確な供述、つまり嘘の供述が後の記憶に及ぼす影響についての検討は、あまり行われていない。そこで、本研究では出来事を想起する際に嘘をついた場合、記憶がどのように変化するかを検討するために2つの実験を行った。実験1では、同じ出来事について嘘をついた後の記憶と嘘をつかなかった後の記憶を比較し、出来事を想起する際に嘘をついた場合でも出来事に関する正確な記憶が維持されること、また、嘘をつく際には2つの方略が用いられる傾向があることが示された。実験2では、嘘をつく際に採用される方略を統制し、後の記憶を比較したところ、嘘をつく際に知らないふりをする方略を用いた場合に正確な記憶が抑制されることが示された。実験1・実験2の結果から、出来事を想起する際の嘘の有無ではなく、採用される嘘の方略が正確な記憶を抑制する要因であると考えられる。また、知らないふりをすることでオリジナル(原現象)の想起が抑制されるので、オリジナル記憶のリハーサルが妨害され、正確な出来事を想起することが困難になると考えられる。